電子たばこ感覚で吸った「ゾンビたばこ」が薬物運転に 台湾で摘発を難しくする検査の壁とは

2026-06-20 15:07
台湾では現在、路上検問の大半が飲酒運転の取り締まりに向けられている。(写真/柯承恵撮影)
台湾では現在、路上検問の大半が飲酒運転の取り締まりに向けられている。(写真/柯承恵撮影)

「薬物使用者には、できる限り起訴猶予の機会を与え、依存症治療につなげる。しかし、薬物を使用して運転し、他人の命を危険にさらす行為は許されない」

台湾・台北地方検察署の林達検察官は、薬物運転の危険性についてそう強調する。

林氏によれば、薬物運転は以前から存在していた。米国、カナダ、オーストラリアの路上検問では、飲酒運転と薬物運転がほぼ半数ずつを占めるという。一方、台湾ではこれまで、取り締まりの大半が飲酒運転に向けられてきた。薬物運転への取り締まりや「薬物運転ゼロ容認」の周知は十分とはいえず、近年、薬物運転による死亡事故が相次いだことで、ようやく台湾社会の関心が高まりつつある。

林氏は「薬物運転は今になって突然現れたものではない」と指摘する。かつてはケタミンを混ぜたたばこ、いわゆる「Kたばこ」が中心だったが、現在はエトミデート(Etomidate)を含む電子たばこ用カートリッジ、いわゆる「ゾンビたばこ」が広がり、新たな問題になっているという。

自分が吸っているものを知らないまま運転へ

​今回の薬物運転の広がりは、バーやナイトクラブに出入りする若者らの間で、電子たばこを互いに勧め合ったり、共有したりする中で起きている。

初めは多くの人が、電子たばこの中身を正確に把握していない。ただ「吸うと気分が良くなる」と感じるだけで、それがエトミデートや大麻、アンフェタミンなどを含む混合薬物であることに気づかないまま、吸引後に車やバイクを運転して帰宅する。こうして薬物運転が少しずつ広がっていった。

ただ、薬物運転の取り締まりは飲酒運転ほど単純ではない。これまで台湾には、エトミデートを路上で迅速に検知できる有効な検査手段がなかった。尿検査は路上検問には向かず、その場で実施することは現実的ではない。違法性を示す客観的なデータがなければ、薬物運転による死傷事故が発生していない段階で、警察がその場で身柄を確保することは難しかった。

さらに、エトミデートは代謝が速い薬物でもある。効率的で精度の高い路上検査ツールがなければ、薬物反応は短時間で陰性に変わってしまうおそれがある。

20190222-立法院「悲劇不該繼續發生,酒駕防制應立即檢討」公聽會,圖為台北地方檢察署檢察官林達。(蔡親傑攝)
台北地方検察署の林達検察官は、台湾ではこれまで薬物運転の取り締まりが十分に行われず、政府による「薬物運転ゼロ容認」の啓発も不足していたと指摘する。(写真/蔡親傑撮影)

偽陰性の問題 警察は「明らかな陽性者」を選ばざるを得ず

​こうした状況を受け、台湾の内政部警政署は昨年末、海外から「8 in 1」と呼ばれる唾液による薬物迅速検査キットを導入した。これにより、警察はようやく薬物運転を路上で取り締まるための道具を手にした。

しかし、エトミデートは新興薬物であり、海外で開発された唾液検査キットでは偽陰性が出やすいという課題がある。そのため現場の警察官は、意識が明らかに混濁している、筋肉が不随意にけいれんしているなど、一見して薬物の影響が強く出ていると分かる運転者を中心に検査せざるを得ないのが実情だ。
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林氏は、それでも警察が路上検問で使える検査ツールを手にしたこと自体は大きな前進だとみている。国家科学及技術委員会と中央研究院は、台湾大学生物機電工程学系の周呈霙教授に委託し、台湾製の唾液薬物迅速検査キットを開発している。2026年後半には量産・市販される見通しで、導入が進めば、警察が薬物運転を疑いながらも証拠を得られず見逃すケースを減らせると期待されている。

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