日本記者クラブは2026年6月10日、認知症などで判断能力が低下した人の暮らしを支える成年後見制度の見直しに向けたシリーズ企画「どうなる成年後見」の第2回講演会を開催した。
愛知県内の瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進市、長久手市、東郷町の6市町が共同で設立した中核機関「尾張東部権利擁護支援センター」(通称あすライツ)の住田敦子センター長が登壇し、現場のリアルな実情と課題、そして今後の法改正に対する期待について詳細に語った。
地域で支える成年後見 「あすライツ」の取り組み
住田氏はケアマネージャーや障害者相談支援センター職員を経て、2013年から同センター長を務めている。あすライツは2011年の設立当初はわずかな人員でスタートしたが、現在は社会福祉士などの専門相談員を含む12名体制へと拡充され、権利擁護に特化した相談対応やコーディネート業務を担っている。
10年前から市民後見人の推進事業に取り組み、現在は法人として147名類型の後見業務を受任し、法的課題が落ち着いた後に市民後見人へ交代するリレー方式など、全国のモデルケースとなる取り組みを進めている。
本人不在で進む後見申立て、関係構築に課題
講演の中で住田氏は、成年後見制度を利用する入り口における課題として、支援者側の過剰な期待と本人への説明不足を指摘した。
身寄りがない高齢者や引きこもりの子を持つ親などに対し、支援者が将来への不安から早急に制度利用を促すケースが多いが、本来は制度利用の前に地域での支援体制構築を優先すべきであると述べた。
また、首長申立ての際、支援者が本人の保護や安全を重視するあまり、本人への丁寧な説明を省略して包括的な権限を持つ後見類型で申し立てを進めてしまい、結果的に本人が納得しないまま後見人が就任し、その後の関係構築に苦慮する実態を明らかにした。
終身制と財産保全への偏り、現行制度の課題が浮き彫りに
現行制度の運用上の大きな問題点として、ひとたび後見人が就くと本人が死亡するまで辞められない終身制と、広範な代理権による意思決定支援に乏しい実態が挙げられた。
実例として、虐待対応で後見人が選任された高齢女性が、本人の思いや長年関わった支援者の提案を無視した後見人の独断により、面会も困難な遠方の施設へ入所させられ孤立したケースが報告された。
また、労災認定後に多額の給付金を得た男性が家族との温泉旅行を希望したにもかかわらず、専門職後見人が医療証明を求めて支出を拒絶し、7年間一度も本人に面会に来なかった事例も紹介され、財産保全に偏重した現在の運用の弊害が強く訴えられた。
これらの課題に対し、あすライツでは利用しやすい制度にするための独自の工夫を重ねてきた。2014年には専門職協力者名簿登録制度を創設し、現在は弁護士27名、司法書士47名の計74名の法律家が登録している。 (関連記事: 終わることができる成年後見への転換、地域福祉の受け皿整備が喫緊の課題に | 関連記事をもっと読む )
誰が後見人になるか分からない本人の不安を解消するため、申立て前に候補者と本人が無償で顔合わせを行う事前マッチングを希望者全員に実施し、家庭裁判所とも密に連携している。さらに、社会福祉協議会との定例会議を通じて、日常生活自立支援事業と後見制度の移行のタイミングを計る「そろそろシート」を共同開発し、地域のネットワーク構築に尽力している。

















































