認知症などで判断能力が低下した人を支える「成年後見制度」の見直しと、それに伴う社会福祉体制のあり方をテーマにした日本記者クラブのシリーズ企画「どうなる成年後見」の第1回が2026年5月29日に開催された。同志社大学の永田祐教授が登壇し、国会で審議中の民法改正案の背景にある「終わることができる後見」への転換と、制度終了後の受け皿となる地域福祉の整備の重要性について見解を述べた。
終身制から「必要な時だけの支援」へ、本人の意思尊重を軸に再編
永田教授は、今回の成年後見制度見直しの最大の背景として、日本が批准している障害者権利条約との整合性を挙げた。従来の制度は能力を制限して包括的な代理権を付与する終身制が中心であったが、今後は本人の意思を尊重し、必要な時期に必要な限りの権限を付与する補助を軸とした再編へと移行する。これにより、遺産分割協議などの特定の必要性が消滅した段階で後見を終了することが可能となる。
しかし、永田教授は制度が終了しても支援の必要性自体がなくなるわけではないと指摘し、司法の枠組みから外れた後の保護を社会福祉が担うことの不可欠さを強調した。
「終わる後見」を支える地域福祉、司法との連携が焦点に
受け皿となる社会福祉体制の整備について、永田教授は主に二つの法改正のポイントを解説した。一つ目は、家庭裁判所が後見の終了を判断する際の相談窓口として「地域権利擁護相談支援センター」を法定化し、司法と福祉の連携の要となる中核機関を明確に位置づける点である。二つ目は、従来の「福祉サービス利用援助事業」を拡充し、精神上の理由で判断能力が不十分な人だけでなく、身寄りのない高齢者らも対象に含め、入院時の医療同意や死後事務などを支援する仕組みへと拡大する方針である。
一方で、永田教授はこの拡充される福祉サービス事業の実施体制に対して強い懸念を呈した。法律上は事業内容や対象の拡大が示されたものの、財源や具体的な運用基準、多様な参入事業者をどのように監督・管理するかといった詳細が未決定であるためだ。現場を担う社会福祉協議会などが大きな不安を抱えている現状に触れ、運用段階で十分な手当てがなされなければ、居住する地域によって後見を終了できるかどうかの格差が生じる恐れがあると警鐘を鳴らした。
身寄りのない人をどう支えるか、制度と地域の互助が課題
さらに、社会問題化する身寄りのない方の支援について、市場による民間サポート事業者への規制強化の必要性に触れつつ、制度的な支援や地域コミュニティにおける互助の重要性を説いた。家族への依存を前提としてきた日本の福祉体制が限界を迎える中、多様な機関が連携して支え合う体制の構築が求められている。
永田教授は最後に「猫は籠で飼えない」という言葉を引用し、成年後見制度や社会福祉が人を管理する籠になるのではなく、本人の自由と尊厳を守り、意思決定を支援するものであるべきだと締めくくった。
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編集:小田菜々香












































