住友生命とJMDCが「健康増進白書」を公表 1日プラス1000歩が健診数値を改善し3大疾病の入院リスクと医療費を大幅に軽減
1日プラス1000歩の歩行は、主要な健診数値を改善するだけでなく、3大疾病による入院リスクと医療費を4割以上削減する顕著な効果がある。(写真/VitalityPR事務局提供)
住友生命保険相互会社と国内最大級の医療ビッグデータを保有する株式会社JMDCは2026年5月29日、「健康増進白書」を共同で公表した。本報告書は、JMDCが保有するレセプトデータと健康管理アプリ「Pep Up」経由で取得した客観的な歩数データを紐付け、生活習慣病の増加や医療費の高騰という社会的課題に対し、「1日プラス1000歩」という具体的な行動変容が健康状態や入院リスク、医療費に与える影響を検証したものである。
新型コロナウイルス感染症の影響を排除するため、主に2023年度以降のデータを対象とし、健診数値の分析には約18万人、入院リスクおよび医療費の分析には約8万人の現役世代データを使用している。健診受診前後の1年間を比較し、1日あたりの平均歩数が1000歩以上増加した「歩数増加群」(全体の約20%)と「歩数非増加群」に分け、性別や年齢の影響を調整した上で詳細な比較分析を行った。
1日1000歩の増加で健診数値に改善傾向
健診数値の変化を見ると、加齢や生活習慣の変化に伴い、全体として主要な健診項目は1年後に悪化する傾向にある。しかし、歩数増加群では多くの指標で改善、あるいは悪化の顕著な抑制が見られた。
BMIについては、非増加群が平均0.136上昇したのに対し、増加群は0.035低下し、改善者割合も46%(非増加群38%)に達した。血圧に関しても、非増加群の収縮期・拡張期血圧がそれぞれ0.247、0.158上昇した一方、増加群はそれぞれ0.020、0.045低下した。脂質指標についても同様の逆転現象が確認され、非増加群では悪玉コレステロール(LDL)が0.383、中性脂肪が1.361上昇したのに対し、増加群ではそれぞれ0.708、2.119低下し、善玉コレステロール(HDL)は増加群で1.006上昇した。肝機能指標(GOT、GPT、γ-GTP)でも非増加群が悪化したのに対し、増加群では改善が確認されている。
3大疾病の入院リスクが大幅減、歩行習慣の予防効果を確認
入院リスクの評価では、歩数増加群において平均入院回数が全体的に低い傾向が示された。特に医療資源への負担が大きく生活習慣病に密接に関連する「3大疾病」(がん・心筋梗塞・脳卒中)に焦点を当てると、その差は極めて顕著である。全体の新規平均入院回数において、非増加群の0.056回に対し、増加群は0.051回(7.3%減)であったが、3大疾病に限定すると、非増加群の0.009回に対し、増加群は0.005回となり、43.2%もの大幅な減少が確認された。この結果は、日常的な歩数の増加が心血管疾患の減少などに寄与するとする複数の国際的な先行研究と一致しており、歩数増加が重大疾患の重症化予防において極めて重要な役割を果たすことを裏付けている。
医療費抑制の鍵は、入院そのものを減らすこと
医療費への影響について、入院1回あたりの平均医療費(10割負担ベース)は、3大疾病の場合、非増加群が126万0000円、増加群が127万3000円と同水準であった。これは重大疾患の治療が標準化されており、臨床パスが設定されているためである。しかし、入院しなかった者も含む全対象者の平均医療費で比較すると、歩数増加群の入院医療費は全体で約11.3%(3万9000円に対し3万4000円)、3大疾病においては42.6%(1万1000円に対し7000円)の大幅な低減が見られた。
すなわち、歩数増加による医療費削減効果は、単回の治療費の減少ではなく、入院発生頻度そのものの大幅な減少によってもたらされている。さらに、日常の平均歩数と年間総医療費(外来・入院・調剤含む)の関係においても、歩数が多い層ほど医療費が低い傾向が確認され、5000歩未満の層が約19万6000円であったのに対し、9000から9999歩の層では約15万8000円まで低下しており、歩行習慣が医療費全体の抑制に寄与することが示された。
熱中症の重症化予防にも効果、暑熱順化との関連を分析
生活習慣病に留まらず、本白書は歩行習慣が夏季特有の「熱中症」の重症化予防にも有効であることをリアルワールドデータから実証している。2023年から2025年の約1350万人を対象とした分析によると、1日1時間以上の歩行または同等の身体活動習慣がある層は、屋外での活動時間が長いため熱中症の診断や点滴治療を受ける軽症リスクは若干高まるものの、入院を要するような重症化リスクは約17%低下した。これは、日常的な運動による「暑熱順化」が働き、発汗機能や体温調節能力が向上することで、夏の暑さに対する耐性が強化されたためと考えられる。
デジタルツールと官民連携で、歩く習慣の定着を提言
国民に歩行習慣の定着を促す仕組みとして、白書はデジタルツールとインセンティブの活用が有効であると指摘している。住友生命の「Vitality」とJMDCの「Pep Up」を活用した共同ウォーキングラリーの事例では、ポイント付与などの経済的インセンティブを取り入れることで、イベント参加前に1日8000歩未満だった非活動層の平均歩数を約1200歩増加させることに成功している。
これらの分析結果を踏まえ、住友生命とJMDCは本白書にて3つの政策提言を行っている。第一に、すでに発症している層よりも費用対効果が高い、生活習慣病の「患者予備群」(全体の約3割)に対する早期の重点的な介入。第二に、重症化抑制効果が顕著な3大疾病の高リスク層への優先的な働きかけ。第三に、1日8000歩を達成している者が全体の約35%に留まる現状を打破するため、官民が連携し、歩数増加を健康経営やデータヘルス計画の共通指標としてさらに普及させることである。社会インフラとしての健康づくりを推進することが、個人のQOL向上と社会保障制度の持続可能性の確保につながると結んでいる。
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