【張瀞文コラム】ファーウェイが半導体の新法則発表、ムーアの法則から脱却へ TSMC元幹部の予想が現実に

2026-05-29 16:35
ファーウェイの半導体事業責任者、何庭波氏。(資料写真/人民日報より)
ファーウェイの半導体事業責任者、何庭波氏。(資料写真/人民日報より)

5月25日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の半導体事業責任者、何庭波(か・ていは)氏は、上海で開催された国際学会「2026 IEEE ISCAS」において、「タウ(τ)スケーリング法則」と呼ばれる新たな原理を正式に発表した。「何の法則(Her's Law)」とも称されるこの法則は、従来の「ムーアの法則」が提唱してきた「トランジスタの継続的な微細化」の代わりに、信号伝達の遅延時間(τ)を新たな最適化目標と位置づけ、「ロジック・フォールディング」などの革新的なアーキテクチャを通じて論理回路を再配列し、内部配線経路を大幅に短縮することで、トランジスタ密度の向上と遅延の低減を同時に実現するものだ。

ファーウェイによると、今秋に発表予定のフラッグシップ・スマートフォン向けチップ「麒麟(Kirin)」シリーズに新たな技術を全面的に導入する予定で、今後、人工知能(AI)演算チップなどへの展開も計画している。同社はさらに、2031年までに世界の半導体トップ企業が手掛ける1.4ナノメートル(nm)プロセスと同等の性能を達成できると予告した。台湾積体電路製造(TSMC)や米インテル(Intel)は、同プロセスでの量産を2029年に予定しており、ファーウェイの遅延は2年程度に縮まる見込みだ。

なおファーウェイは過去6年間にわたり、消費者向け電子製品、ネットワーク、コンピューティング向けなど381種のチップ設計において、程度の差こそあれ、すでにこの新手法を採用しているという。それは、この新手法が単なる机上の空論ではなく、実戦で検証された体系的なイノベーションだということを示している。

半導体の性能を「信号時間」で再定義

この一連の動きは、米国の厳格な輸出規制により、ファーウェイが最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を調達できない状況下で生じた。中国の先端プロセス技術を封じ込めることを目的とした制裁が、皮肉にも設計分野における別のアプローチによるブレークスルーを誘発した。それは、プロセスの微細化で正面から勝負するのではなく、「信号時間」という次元から半導体の性能を再定義するという手法である。

この展開は、TSMCの研究開発副総経理で、「液浸露光技術の父」として知られる林本堅(りん・ほんけん)氏が2025年3月末に示していた懸念とほぼ完全に一致している。

林氏は昨年3月、メディアとのインタビューで、半導体製造プロセス技術はすでに限界に達しており、世代ごとの微細化は極めて困難でコストも高騰していると指摘。さらに、中国企業はTSMCや韓国サムスン電子(Samsung Electronics)、米インテル(Intel)がしのぎを削る7nm、5nm、3nmといった従来の競争軸にただ追従するのではなく、「別のアプローチ」から突破口を見出す可能性があると警告していた。 (関連記事: ジェンスン・フアン氏、ワシントンでAI版「一帯一路」と国家安全保障を語る ファーウェイは評価しつつも、米国は迅速に競争で勝つべきとの見解 関連記事をもっと読む

同氏は当時、「中国は必ずしも7nmや5nmのプロセスで競い合うとは限らず、別のアプローチから立ち向かってくる可能性がある。(中略)いつの日か、中国は新しい手法を見つけ出し、3nmや2nmに移行する苦労を完全に回避するかもしれない」と語った。

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