「高市現象」とは何か 宇野重規氏が日本政治の変化を分析

宇野重規東大教授が高市政権を保守ではなく右派的と指摘し、現代の戦間期的な危機の中でファンダムを原動力とする政治の不安定さと対話による政治回復の必要性を説いた。(写真/日本記者クラブ提供)
宇野重規東大教授が高市政権を保守ではなく右派的と指摘し、現代の戦間期的な危機の中でファンダムを原動力とする政治の不安定さと対話による政治回復の必要性を説いた。(写真/日本記者クラブ提供)

日本記者クラブが主催するシリーズ企画「高市現象と日本の政治」の第9回研究会が開催され、東京大学社会科学研究所教授の宇野重規氏が登壇した。日本経済新聞コメンテーターの奥村茂三郎氏が司会を務める中、宇野氏は政治思想史および政治哲学の専門家としての立場から、高市首相を支持する動きや現在の政治状況について、保守主義、現代は戦間期なのか、高市首相を支えるファンダム現象という三つの歴史的な座標軸を用いて詳細な分析を示した。

「保守」とは何か、自民党と右派勢力の変容を分析

第一の座標軸である保守主義について、宇野氏はそもそも日本に保守主義が存在するのかという根源的な問いを投げかけた。保守主義の祖とされるエドマンド・バークの定義に従えば、保守とは現行の政治体制を尊重し漸進的な改革を行う立場を指す。

しかし、日本の戦後保守である自民党は自主憲法の制定を掲げており、現行体制の打破を志向する点で本来の保守主義とは矛盾していると指摘した。戦後の日本の保守は反共と経済成長を旗印に緩やかにまとまっていたが、冷戦終結に伴いそのアイデンティティは空洞化した。

21世紀に入ると憲法改正や歴史修正主義、左派への敵意を特徴とする岩盤保守が台頭し、さらに参政党のように本来は左派が扱うような争点まで取り込んだ勢力が拡大した。宇野氏はこの流れの中で誕生した高市政権について、党内基盤が弱い中で右派勢力を支持基盤に組み込んだ結果であり、保守というよりも右派政権としての側面が強いとの見解を示した。

現代は「戦間期」か、国際秩序の変化と高市政権の外交戦略

第二の座標軸として挙げられたのは、政治と危機、すなわち現代が戦間期に当たるのではないかという視点である。E・H・カーの著書で描かれた第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期のように、現在は冷戦後のリベラルな国際秩序が崩壊し、大国が自らの利害に基づいて争う19世紀的な世界に回帰しつつあると宇野氏は警鐘を鳴らした。特に最大の大国であるアメリカ自身が現状維持ではなく現状変更の立場に回っている点が、過去の戦間期と大きく異なる危機的な状況であると分析した。

このような国際秩序の再編期において、高市首相は日米同盟を重視し、オーストラリアや韓国との関係を強化しつつ中国に対抗するという極めて戦略的な外交・安全保障政策を展開しており、現代を戦間期と捉えた対応を行っていると評価した。 (関連記事: 高市首相支持の新グループ「国力研究会」発足へ、麻生副総裁ら実力者が発起人 関連記事をもっと読む

支持を動かす「ファンダム」、個人政党化の可能性と危うさ

第三の座標軸であるファンダム現象について、宇野氏は今後の社会や政治を動かす新たな組織原理として着目した。現代では組織に対する忠誠心や利益よりも、好きという共感に基づくファンダムが人々を動員する大きな力になっているという。政党組織が空洞化し、党首の個人のイメージと有権者が直結する個人政党化が進む中、高市首相は自らのカリスマ性とファンダムの原理を最大限に活用して権力を獲得した数少ない政治家であると指摘した。

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