近年、異常気象が頻発し、台風による被害も軽視できない。
多くの外国人経営者や人事担当者にとって、台風の進路予想が出るたびに、「従業員を休ませた場合、給与はどう計算するのか」「欠勤した場合、会社が一方的に有給休暇として処理できるのか」といった悩ましい問題が生じる。
こうした実務上のジレンマに対し、社会保険労務士(労務の専門家)の立場から、企業が理解しておくべき法的リスクと実務上取るべき対策を解説する。
出勤できない場合、無給扱いは合法か
台風が接近し、電車が完全に運転を見合わせ、従業員が外出できない場合、多くの経営者は「労務が提供されていないのに、給与を支払う必要があるのか」「会社がやむを得ず休業した場合、休業手当を支払う義務があるのか」と疑問に思うだろう。
日本の労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合、会社は休業手当を支払う義務があると定めている。
しかし、この法律は今回のようなケースには適用されない。日本の行政通達では、台風などの天災は「不可抗力」であり、使用者の過失、すなわち責任には当たらないと明確に解釈されているためだ。
つまり、台風によって物理的に出勤や営業が不可能な場合、企業に休業手当を支払う義務はない。
「ノーワーク・ノーペイ(No work, no pay)」の法理に基づき、台風で出勤しなかった日は無給扱いとなる。
無理に出社させる? レピュテーションリスクと「ブラック企業」化の恐れ
出勤しなければ無給で済むのであれば、経営者は従業員に「雨風をしのいで出社せよ」と要求できるのだろうか。
社会保険労務士として、法律と企業経営の観点から言えば、それは全く勧められない。
日本の労働契約法第5条では、企業は従業員に対する「安全配慮義務」を負うと定められている。
暴風雨の中で無理に出社を命じ、万が一、従業員が通勤途中で転倒して重傷を負った場合、労災と認定されるのはもちろんのこと、最悪の場合、会社は巨額の損害賠償を請求される可能性がある。
さらに見過ごせないのが、現代のネット社会の影響力だ。
従業員がSNSで「台風なのに、うちの会社は無理やり出社しろと言ってきた」と不満を書き込み、それが拡散されれば、会社は即座に「ブラック企業」のレッテルを貼られかねない。
こうした「レピュテーションリスク」が企業イメージに与える打撃は、1日の売上損失よりもはるかに深刻だ。
したがって、従業員の安全を最優先することが、現代の企業経営における最適解となる。
有給休暇を会社が一方的に消化? 労使トラブルの火種に
「台風の日は出社しなくてよいが、その日の給与は発生しない」となると、多くの企業は従業員の減給への不満を避けるため、気を利かせたつもりで「本日欠勤した者は、一律で有給休暇を1日消化したものとして処理する」と通知しがちだ。
しかし、一見親切に見えるこの対応は、実は違法である。 (関連記事: 【寄稿】「残業代を払えば合法」は誤解 経営者が知るべき「36協定」の落とし穴 | 関連記事をもっと読む )
有給休暇は労働者の法定権利であり、有給を使用するかどうかについては、必ず従業員本人の同意を得る必要がある。













































