「小さな部品一つでも中国由来は不可」 台湾・和大工業、米顧客が求める「非レッド」供給網に対応 格斯科技(GUSテクノロジー)の沈国栄董事長は、一部の米国顧客が「非レッド(非中国系)サプライチェーン」を求めており、中国由来の制限は最終的な組み立て場所だけでなく、原材料や小さな部品にまで及んでいると説明した。(顔麟宇撮影)
関税負担を背景に、米国の顧客がサプライヤーに現地生産を急ぐよう求める動きが出ている。ただ、実際に生産拠点を設けるとなれば、建設にかかる時間や納期への対応、原材料の調達先など、さまざまな課題に直面する。
自動車部品メーカーの和大工業(ホータ・インダストリアル)グループ総裁で、格斯科技(GUSテクノロジー)董事長を務める沈国栄氏は、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』のインタビューに応じ、米ニューヨーク州バッファローで既存工場を活用することを選んだのは、拠点整備にかかる時間を短縮するためだと説明した。
一方、一部の米国顧客が求める「非レッド(非中国系)サプライチェーン」の条件は、原材料や小さな部品にまで及んでいるという。
企業にとってもう一つの難しさは、投資計画を進めた後になって、顧客側の緊急度が変わる可能性があることだ。沈氏は、以前は顧客から米国進出を強く急ぐよう求められていたものの、最近では関税をめぐる状況の変化を受け、「それほど急ぐ必要はない」と言われた経験を振り返った。
既存工場を活用、米国生産の立ち上げ期間を短縮 沈氏によると、米国の顧客は関税負担に直面するなか、サプライヤーに対し、より近い場所での生産を求めているという。
企業側が土地の取得から始め、環境アセスメントや電力、水道などのインフラ整備を進める場合、長い時間を要する。さらに工場の建設にも数年かかるため、顧客の需要にすぐ応えることは難しい。
そのため、沈氏はバッファローにある既存工場を活用して拠点整備を進めることを選んだ。ゼロから工場を立ち上げる場合に比べ、すでに整備された施設を利用することで、初期工事や行政手続きにかかる時間を短縮し、設備導入や生産準備をより早く進めることができる。
2023年には、当時ニューメキシコ州知事だったミシェル・ルーハン・グリシャム氏が、和大工業の沈国栄董事長とともに記者会見に臨んだ。(資料写真、簡恒宇撮影) 公開されている会社情報によると、和大工業は今年3月、董事会(取締役会)が孫会社のHota Manufacturing (NY) Inc.に対し、関連企業からニューヨーク州バッファローの工場を生産・運営目的で賃借することを承認したと発表している。グループとしての拠点整備と、孫会社による工場の賃借は、それぞれ異なる企業レベルでの取引となる。
既存工場の賃借によって時間を短縮できる一方、投資の過程に不確実性がないわけではない。
沈氏によると、最近米国を訪れて顧客と意見交換した際、顧客側は和大工業の対応の速さを評価しながらも、当時の関税条件では、以前ほど切迫感はなくなったと説明したという。
この経験は、顧客の需要や政策をめぐる情報が絶えず変化するなかでも、サプライヤー側は設備、生産能力、資金をどのように配分するか判断しなければならない現実を示している。
小さな部品にも「中国由来不可」 広がる「非レッド」供給網の要求 関税以上に沈氏が注視しているのが、顧客による調達先への要求だ。
沈氏によると、一部の米国顧客は「非レッド(非中国系)サプライチェーン」を求めており、中国由来の製品や部材に対する制限は、最終的な組み立て場所だけでなく、原材料や小さな部品にまで及んでいる。
「 小さな部品一つでも、中国由来であってはならない 」
沈氏は、一部顧客からこうした要求を受けていると説明した。
サプライヤーにとって、最終工程だけを別の国に移したとしても、このような調達条件を満たせるとは限らない。上流の原材料や部品の供給元まで見直す必要があるためだ。
格斯科技(GUSテクノロジー)は、自社開発した高性能のパウチ型リチウムイオン電池セルを通じ、ドローンに求められる高エネルギー密度、急速充放電、環境適応性などの性能要求への対応に注力している。(資料写真、GUS Technology公式Facebookより) 沈氏は、格斯科技が電池セルの材料や生産技術を自社で研究開発できる体制を持っており、こうした需要に対応するうえで強みになるとみている。
同氏は、この電池分野の能力を、既存の電気自動車(EV)、ロボット、無人ビークル向けの顧客対応経験と結びつけ、供給能力をさらに充実させたいとの考えを示した。
米国市場全体の共通ルールではない ただし、沈氏が言及したのは、あくまで顧客との取引で直面した調達やサプライチェーン上の条件だ。
製品や取引形態によって適用される規制や契約は異なり、個別に判断する必要がある。こうした条件を米国市場全体に共通するルールだと一概にみなすことはできない。
バッファローの既存工場活用から、原材料や部品の調達先に至るまで、沈氏の米国進出をめぐる判断には複数の要素が絡んでいる。
関税が投資の加速を促す一方、その後の顧客の反応によって緊急性が変わる可能性もある。企業は生産拠点、設備、調達先、納期への対応を総合的に判断し、海外展開を実際の供給能力につなげる必要がある。
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