ノーベル文学賞にアン・カーソン氏 「風を聴いていた」古典との対話で新たな文学形式を切り開く

2026年のノーベル文学賞を受賞したアン・カーソン氏。(ノーベル賞公式Xより)
2026年のノーベル文学賞を受賞したアン・カーソン氏。(ノーベル賞公式Xより)

2026年のノーベル文学賞受賞者が8日に発表され、カナダの詩人で古典学者、翻訳家でもあるアン・カーソン氏が受賞した。選考を担うスウェーデン・アカデミーは、カーソン氏について「大胆で創意に富む作品群であり、古典的伝統との遊び心に満ちた対話を通じて、現代文学に新たな形式を生み出した」と評価した。

スウェーデン・アカデミーが今年のノーベル文学賞受賞者を発表する前、英紙『ガーディアン』は、カナダの詩人アン・カーソン氏と、中国の実験派作家、残雪(ツァンシュエ、本名・鄧小華)氏(73)を最有力候補に挙げていた。両者は同年代だが、最終的にカーソン氏(76)が受賞した。

同紙によると、カーソン氏は詩と散文を融合させ、現代の物語と古代の神話を組み合わせた独自のスタイルで知られる。代表作の一つである1998年刊行の『Autobiography of Red(赤の自伝)』は、古代ギリシャの詩人ステシコロスの残篇をもとにした、クィアの成長をテーマとする詩体小説だ。ヘラクレスに殺された赤い翼の怪物ゲリュオンを、失恋と欲望に向き合う現代の少年として描き直し、ギリシャ神話を再解釈した。

ノーベル文学賞受賞者アン・カーソン氏の代表作の一つ『Red Doc>』。(AP通信)
ノーベル文学賞受賞者アン・カーソン氏の代表作の一つ『Red Doc>』。(資料写真、AP)

1950年にトロントで生まれたカーソン氏は、トロント大学で学士、修士、古典学の博士号を取得した。1981年の博士論文『Odi et Amo Ergo Sum(我憎みかつ愛す、故に我あり)』では、古代ギリシャの女性詩人サッフォーを研究対象とし、エロス(愛欲)の修辞と哲学的意義に焦点を当てた。この論文を基礎として1986年に刊行された『Eros the Bittersweet』は、カーソン氏初の本格的な評論書となった。

一方、1979年に大学で教え始め、その後、カナダのマギル大学や米国のミシガン大学、ニューヨーク大学、プリンストン大学など多くの大学で、古典文学、比較文学、クリエイティブ・ライティングを教えてきた。

2026年ノーベル文学賞を受賞したカナダの詩人・作家のアン・カーソン氏。(AP通信)
2026年のノーベル文学賞を受賞したカナダの詩人・作家、アン・カーソン氏。(資料写真、AP)

カーソン氏はこれまで20冊以上の著作や翻訳書を出版し、グッゲンハイム・フェロー、マッカーサー・フェローに選ばれたほか、ラナン文学賞、2度のグリフィン詩賞、アストゥリアス王女賞(文学部門)、カナダ総督文学賞(英語詩部門)、PEN/ナボコフ国際文学功労賞などを受賞。2005年にはカナダ文学への貢献が認められ、カナダ勲章のメンバー(Member of the Order of Canada)に任命された。

『ガーディアン』は、ジャンルの境界を越えるカーソン氏の作風を紹介し、『Autobiography of Red』に加え、2001年には『The Beauty of the Husband』で女性として初めてT・S・エリオット賞を受賞したことにも触れている。 (関連記事: 2025年ノーベル文学賞》村上春樹氏はまたも受賞逃す、ハンガリーの小説家ラースロー・クラスナホルカイ氏が栄冠に 反ユートピアと憂鬱な世界 | 関連記事をもっと読む )

2023年のノルウェーの作家ヨン・フォッセ氏、2024年の韓国の作家ハン・ガン氏、2025年のハンガリーの作家クラスナホルカイ・ラースロー氏に続き、今年は欧州以外の女性作家が選ばれるのではないかとの見方も事前に出ていた。英ブックメーカーのラドブロークスが示したオッズでも、カーソン氏と残雪氏が10対1で首位に並んでいた。

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