「ウクライナは、次の戦争形態が生み出されつつある実験室だ」
――米誌「ナショナル・ディフェンス」(National Defense Magazine)
ウクライナのゼレンスキー大統領(Volodymyr Zelensky)は昨年2月、ホワイトハウスでトランプ大統領(Donald Trump)とバンス副大統領(JD Vance)から公然と厳しい批判を浴びた。トランプ氏はゼレンスキー氏に「あなたにはカードがない」と言い放ち、バンス氏はウクライナが米国に「感謝していない」と批判した。この異様な光景に世界は騒然となり、ウクライナの命運は尽きたのではないかと危ぶむ声も多く上がった。当時、米国はウクライナにとって最大の単独軍事支援国であり、ワシントンが支援を大幅に削れば、ウクライナが戦場で持ちこたえるのは難しいとみられていたからだ。
それから1年半。米国のキーウへの支援は確かに大きく減り、欧州諸国が支援を増やして穴の一部を埋めようとしてきた。だがウクライナは前線でロシア軍と対峙し続けているばかりか、敵の後方への攻撃を繰り返し、ロシア領内深くのエネルギー施設や兵站・補給拠点、さらにはEC事業者の物流倉庫まで攻撃し、併合されたクリミア半島の孤立化も図っている。ロシアでは全国的な燃料不足が起き、クリミアも停電と燃料不足に陥って非常事態が宣言された。

ドローンを軸とした非対称戦
トランプ政権が全面的な後ろ盾でなくなった今、ウクライナはなぜ戦局を支え、反撃まで繰り返せるのか。米軍の退役大将で米中央情報局(CIA)長官も務めたデビッド・ペトレイアス氏(David Petraeus)は、ウクライナは革新的な技術と低コストのドローンを駆使した非対称戦で前線を守り続け、規模と火力で勝る相手に戦略的な圧力をかけ、多大な代償を払わせていると指摘する。ペトレイアス氏は、この手法でロシアの戦争マシンを真に破壊するのは難しいと認めつつも、相手を弱らせ、かき乱し続ければ、キーウが戦略的な局面を転換させる可能性は十分にあるとの見方を示した。
軍事専門家の間では、ウクライナのさまざまな非対称戦法の中でも、迅速に改良を重ね、大量生産される低コストのドローンが最も重要な要素だとの見方が広く共有されている。2026年に入ると、無人システムはロシア軍に多くの死傷者をもたらす主力兵器となった。ドローンのソフトウエアは毎週更新でき、ハードウエアも数週間ごとに改良される。この速度には、西側の防衛調達システムでさえ到底及ばない。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
ウクライナがドローンで戦果を挙げる一方、ロシアも相手の出方に応じて手を打ち、同じくドローンに大きく依存して反撃している。ワシントンの米シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」(CNAS)のステイシー・ペティジョン氏(Stacie Pettyjohn)は、双方がドローンを大規模に投入していることから、この紛争は「史上初の全面的なドローン戦争」(first full-scale drone war)とも見なされていると指摘する。


ウクライナの独立系シンクタンク「サーペンス国際安全保障センター」(Serpens Center for International Security)によると、開戦前のウクライナのドローンメーカーは10社に満たず、2022年の生産数は1万機を下回っていた。ロシアによる侵攻が始まった当初、ドローンが担っていたのも主に情報・監視・偵察(ISR)を中心とする支援任務にすぎなかった。
戦争が長引くにつれ、ドローンはウクライナの戦場で、戦術的な運用から戦略的な縦深打撃までを担う「汎用プラットフォーム」へと進化した。ウクライナの国家安全保障・国防会議(NSDC)によると、2026年時点で国内産業は年間800万機を超えるFPVドローンの生産能力を持っており、ドローンはウクライナの防衛の紛れもない主力となっている。
米戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員ケイト・ボンダー氏(Kate Bondar)は、ドローンは今や、米国製兵器が不足する中でウクライナが生き残るための解決策になっていると指摘する。巨大な防衛産業基盤を必要とする従来型のミサイルと異なり、ドローンは世界市場で手に入る民生用部品を使って素早く組み立てられる。この「大量生産しやすい」という特性が、ドローンをロシア軍に対抗する非対称戦の切り札とし、相手を過酷な高速改良競争の戦場へと引きずり込んだという。
一方でボンダー氏は、ロシア軍の革新力と適応力も高く評価している。ロシア側もドローンの新たな戦術や攻撃手法を次々と編み出しており、双方のドローン戦は膠着状態に陥っているからだ。とりわけ、一般に動きが鈍く保守的とみられてきたロシアの軍産複合体が、今回はウクライナの非対称戦術の進化に追随し続けている。世界の関心がウクライナのドローン・エコシステムに集まる中、ロシアにも優れた生産能力と改良の仕組みがあることは見落とされがちだ。両国とも、民間の技術者がこのドローン戦争に積極的に関わっているという。
ボンダー氏は今年9月に公表した報告書「シャヘドからゲランへ:ロシアは一方向攻撃型ドローンをいかに改革し続けているか」(From Shahed to Geran: How Russia Continues to Reinvent the One-Way Attack Drone)で、ロシアの「ゲラン」(Geran)を例に挙げ、真に注目すべきは技術そのものではなく、戦場からのフィードバックを軸とした迅速なイノベーションの仕組みだと強調した。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
ロシアは2022年にイランの「シャヘド」(Shahed)を入手して以降、ロシア版シャヘドであるゲランの航法、通信、弾頭、動力、戦術に絶えず手を加えてきた。急ごしらえの改造品もそのまま戦場に送って試し、有効な設計はすぐに標準化して量産に移し、失敗した案は即座に切り捨てる。これにより兵器の進化の速度は、従来の軍需産業の「年」単位から「週」単位にまで縮まったという。
CSISは、ゲランが示しているのは現代の軍事技術競争のルールそのものの変化だとみる。開発段階で最先端の性能を持つ兵器を作り上げた側が、戦場で優位を保てるとは限らない。重要なのは、兵器を戦場に投入した後に、いかに最速で学習し、改良し、量産し続けられるかだ。
言い換えれば、ロシアとウクライナのドローン戦争は「適応力」をめぐるスピード競争でもある。ただ、CNASのペティジョン氏は、ドローンは民生技術や軍民両用(デュアルユース)技術への依存度が高いため、先行して得た優位は相手に模倣されたり、リバースエンジニアリングされたりしやすく、ロシアとウクライナのどちらも決定的な技術的独占を得るのは難しいと指摘している。
ロシア・ウクライナのドローン戦争の特徴
2022年2月にプーチン大統領が「特別軍事作戦」を命じてウクライナへの全面侵攻を始めて以降、ドローンの攻防をめぐる両国の高速な改良競争は、各国のシンクタンクや軍の重要な観察対象となってきた。
CNASの報告書「Evolution Not Revolution: Drone Warfare in Russia’s 2022 Invasion of Ukraine」(革命ではなく進化――ロシアの2022年ウクライナ侵攻におけるドローン戦。実際の記録は2023年9月まで)と、オーストラリア陸軍研究センター(Australian Army Research Centre、AARC)の報告書「Drones in Modern Warfare (2024-2026): Lessons Learnt from the War in Ukraine」(現代戦におけるドローン――ウクライナ戦争からの教訓)は、双方のドローンの進化とその影響を詳しく分析している。
両報告書によると、5年目に入ったロシア・ウクライナ紛争は、現代戦史上最大規模で、技術の改良が最も激しいドローンの実戦試験場の様相を呈している。データによれば、戦術無人航空機は現在、ウクライナ軍の指揮官が得る目標情報の86%を担い、ロシア軍の装備損耗の60~70%をもたらし、ロシア軍の前線での戦闘死傷者の約80%に関与している。総合的な殺傷効果と情報収集面の価値は、他の通常兵器の合計の2倍に達するという。
ドローンが至る所に存在することで、双方とも大部隊を集結させ、従来型の大規模な機械化総攻撃を仕掛けることが難しくなった。

ウクライナの軍需産業は、戦時下で驚異的な変貌を遂げた。2022年にはドローンメーカーはわずか7社で、年間生産数は数千機にとどまっていたが、2025年には500社余りに急増し、FPVドローン生産能力が約450万機にまで拡大した。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
ウクライナ政府は、支援資金が確保され、国際的なパートナーの協力が得られれば、2026年のドローン生産数は2000万機も視野に入ると主張している。前線でのウクライナのドローン損耗数も、2023年の月1万機から、2025年には月20万機以上に急増した。
ロシア・ウクライナの戦場では、ドローンの数が大幅に増えただけではない。電子戦による妨害に対抗するため、FPVドローンの操縦・映像リンクも多様化が進んだ。従来のアナログ信号に加え、デジタル伝送や周波数ホッピングなどの耐妨害技術が広く使われている。
両軍は光ファイバーで操縦するFPVも相次いで配備した。光ファイバー式は従来の無線周波数や衛星測位への妨害を回避できるうえ、従来の無線リンクが届きにくい建物や掩体、地形の死角にも入り込める。地上での作戦距離も50キロ以上に延びた。
一方、ドローンは戦場で多くの課題にも直面している。冬の低温でバッテリーの寿命が大きく縮み、航続時間や作戦半径に影響が出る。ドローンはさまざまな任務をこなせるが、歩兵に代わって陣地を占領・確保することは依然としてできない。
ウクライナは中国製部品への依存から抜け出せず、モーターやレアアース(希土類)磁石などの基幹部品では、中国のサプライチェーンによる独占に直面したままだ。ドローンの操縦士は最優先で狙われる標的となり、地上管制ステーションやアンテナが発する電磁波によって、操縦士の位置が正確に特定され、反撃の砲火を浴びやすくなっている。

戦争の局面ごとに変わるドローンの役割
第1段階:電撃戦・斬首作戦への抵抗(2022年2~3月)
CNASの報告書によると、開戦当初のロシア軍は、味方への誤射を避けるため、防空部隊と電子戦部隊の運用がまだ十分に連携しておらず、ウクライナ軍のTB2軍用ドローン(トルコ製の攻撃ドローン「バイラクタルTB2」)や改造した民生用ドローンに絶好の行動空間を与えた。
ウクライナ軍はこれを生かし、ロシア軍装甲部隊の進撃を食い止めることに成功した。だがロシア軍が野戦防空と電子戦による妨害を始め、軍用偵察ドローン(オルラン10、ZALA)を体系的に使って砲撃を誘導するようになると、信号の特徴が目立つTB2は次々と撃墜され、次第に脇役へと退いた。
第2段階:ドンバスの消耗戦(2022年4~8月)
両軍の戦いが砲撃戦による消耗戦に移ると、ドローンは砲兵の目標特定に欠かせない道具となった。ロシア軍はドンバス地方に電子戦システムを高密度で配備し、ウクライナ軍のドローンに深刻な脅威を与えた。
ロシア軍は一時、前線約20キロごとに約10基の電子戦システムを配置し、ウクライナ軍のドローンは壊滅的な損耗を被った。民生用ドローンは平均でわずか3回、軍用偵察ドローンも6回しか飛行できなかった。ウクライナ軍は通信、航法、運用方法の修正を絶えず迫られ、ドローンは大量に消費される戦場の消耗品となった。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
第3段階:ウクライナとロシアが相次ぎ攻勢(2022年9月~2023年9月)
ウクライナ軍はドローン部隊を使って敵の高価値目標の精密なリストを作り、米国製の高機動ロケット砲システム「ハイマース(HIMARS)」による精密攻撃と組み合わせた。一方、ロシア軍はオルラン10の生産が追いつかず、民生用ドローンを大量に使い始めた。このため、ウクライナが初期に持っていた数の優位(約3対1)は事実上消滅した。

米国製の「スイッチブレード300」は電子戦の妨害に弱く、期待された性能を発揮できなかった。このためウクライナは民生用FPVを大量に改造し始めた。コストは1機1000ドル(約15万8000円、1ドル=158.3円で換算)かそれ以下で、装甲車両の防御が薄い部分に正確に体当たりさせた。
一方ロシアは、ウクライナ軍のFPV戦術をまねて量産化に成功し、徘徊型弾薬「ランセット3」による対砲兵戦や防空制圧と組み合わせ、ウクライナ軍の2023年の機械化攻勢を挫折させた。
第4段階:2024年以降の展開(2024年~現在)
ドローン部隊の独立軍種化
ウクライナの「無人システム軍」(Unmanned Systems Forces、USF)は2024年6月に正式に発足した。空中・地上・海上の無人システムの運用を専門とする世界初の独立した軍種で、ロシアも2025年11月に追随し、ドローン作戦の専門部隊を創設した。
USFの規模は現在、ウクライナ軍全体の2.2%(約2万人)に達し、5%への拡大を計画している。ウクライナは2025年7月、無人地上車両(UGV)の大隊を世界で初めて創設したほか、USF傘下には女性がドローン操縦士を務める部隊「ハーピーズ(Harpies)」も設けられた。
ロシア軍による高強度のドローン空爆
ロシア軍は、ウクライナの都市に対する長距離の一方向攻撃型ドローン(いわゆる「自爆型ドローン」)による攻撃を強めている。群れを成して飛来するゲラン2(ロシア版シャヘド136)は、ウクライナの防空システムやエネルギー・民生インフラに甚大な消耗と破壊をもたらした。
1回の攻撃に投入されるドローンの規模は、2024年にはまだ100機前後だったが、2025年には1回400機前後に急増した。2026年3月23日夜から24日にかけて、ロシア軍はウクライナ各地に1000機近いドローンと数十発のミサイルを投入する大規模な飽和攻撃を行った。
注目すべきは、ゲランが元々ロシアが独自に開発した兵器ではなく、イラン製のシャヘド136とシャヘド131の模倣品だという点だ。ロシアはイランからシャヘドの設計を入手した後、段階的に国内生産体制を築いた。
イジェフスクとタタルスタン共和国のアラブガ経済特区(Alabuga SEZ)でそれぞれ異なる生産・改良の路線が形成され、次第にロシア独自の特色を持つ軍用ドローンへと変わっていった。とりわけアラブガの工場は、粗削りでも素早い戦地改造を積極的に取り入れ、「まず戦場で実戦投入し、有効と確認できてから標準化する」という開発モデルを生み出した。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
こうした高速の改良は、電子戦の分野で特に顕著だ。ウクライナ軍による衛星測位信号の妨害や欺瞞(スプーフィング)に対抗するため、ゲランが使う耐妨害衛星測位アンテナは受信素子を増やし続け、ウクライナが次々と繰り出す電子戦能力に食らいつき、目まぐるしい攻防のサイクルが生まれている。
ゲランのもう一つの大きな変化は、単純な「撃ちっ放し」の一方向攻撃型ドローンから、操縦士との交信を保てる打撃プラットフォームへと徐々に変わったことだ。通信リンクとカメラの統合に伴い、一部のゲランは映像を後方に送信でき、操縦士が飛行中に目標を指定し直せるようになった。偵察をこなし、リアルタイムの誘導を受けられる打撃プラットフォームとなったのである。

ゲランの任務は、もはや地上目標への体当たりにとどまらない。CSISによると、ロシア軍はPTM-3対戦車地雷を投下できるゲランや、R-60空対空ミサイル、携帯式防空ミサイル「ベルバ」を搭載したゲランを試験してきた。ゲランがFPVドローン2機を搭載し、作戦地域に到達してから放出した例もある。
ロシア軍は中国製のターボジェットエンジン「テレフライJT80」(Telefly JT80)を採用したゲラン3も開発した。速度は時速約480キロと、ゲラン2の約2倍に達する。ゲラン5に至っては、シャヘド本来の三角翼の形状を捨て、外見は巡航ミサイルに近くなっている。
ロシアは2025年末から新旧のゲランを組み合わせてウクライナを攻撃し始め、今年7月以降は新型ゲランの出撃数が急増して長距離攻撃の主力となった。ロシア側は今年8月にはゲラン3の生産を停止し、ゲラン4やゲラン5などの新型ジェット推進ドローンの生産拡大に切り替えた。
ロシア軍の空爆も、夜間中心から昼夜を問わない形に変わった。ロシア軍はジェットエンジン版のゲランを安価な巡航ミサイルとして使っている。飛行速度が上がったことで、ロイター通信は9月末の報道で、新型の高速ジェット推進ドローンに対するウクライナの迎撃率は57%に低下し、従来のプロペラ式ドローンに対する約9割の迎撃成功率を大きく下回っていると伝えた。

ウクライナ軍による敵後方への攻撃
2024年12月、ウクライナ軍は歩兵が一切参加しない史上初の「空陸ロボット統合攻撃」を実施し、数十台のUGVとFPVを連携させてロシア軍の陣地を破壊した。
ウクライナのドローン生産数は2025年に220万機から倍増して450万機となり、ウクライナ軍はロシア領内の石油施設や弾薬庫、軍事基地、交通の要衝をドローンで攻撃する頻度を高めた。中でも最も象徴的な作戦が、ウクライナ保安庁(SBU)が2025年6月1日に実行した「クモの巣作戦」(Pavutyna)だ。

この作戦の準備は2023年11月に始まった。SBUの工作員はまず、117機のFPVドローンと組み立て式の木造小屋をロシアに密輸し、ロシア国内に設立した偽の物流会社を隠れみのにトラック5台を購入して、事情を知らないロシア人運転手を雇った。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
FPVドローンは木造小屋の中に隠され、ロシア国内のあらかじめ定めた発射地点に着くと、小屋の屋根が開いてドローンが飛び立ち、ロシア国内の戦略航空基地4カ所を奇襲した。ウクライナ側は、ロシア空軍の軍用機41機(A-50早期警戒管制機のほか、Tu-95、Tu-22M3、Tu-160などの戦略爆撃機を含む)に大きな損害を与えたと主張している。
国際エネルギー機関(IEA)によると、2026年8月末時点で、ロシアの主要製油所32カ所のうち、ウクライナのドローン攻撃を受けていないのは5カ所にとどまった。
ゼレンスキー大統領も、ウクライナが一時、ロシアの石油精製能力の4割(日量約214万バレル)をまひさせたと主張しており、南部クラスノダール地方などで燃料不足が起き、ロシアの軍事兵站と輸出収入に大きな打撃を与えた。
ウクライナ軍は長距離ドローンを使い、ロシア軍後方の弾薬庫や訓練キャンプ、輸送拠点を常態的に破壊しているほか、EC事業者の物流倉庫まで攻撃対象とし、ロシア軍の補給を断とうとしている。
無人艇の運用拡大
戦争初期のウクライナは大型の軍艦を欠いていたため、主に無人艇(水上ドローン)で「神風」(kamikaze)式の自爆攻撃を行い、黒海のロシア軍艦を襲った。
2024年12月には、ウクライナ海軍が、無人艇を母艦としてFPVを搭載する非対称戦術を披露し、ロシア軍が占拠する黒海の石油掘削プラットフォームを攻撃した。各無人艇は爆薬を積んだFPVドローンを少なくとも4機搭載し、海上で放出してプラットフォーム上のロシア軍の監視・レーダー探知設備を破壊し、駐留するロシア兵を排除した。その後、ヘルソン州沿岸では、ロシア軍の短距離防空システム「パンツィリS1」と「オサ」も撃破した。

2024年12月末、防空兵器を搭載したウクライナの無人艇が黒海でロシア軍のヘリコプターを撃墜し、世界初の事例となった。2025年5月には、AIM-9「サイドワインダー」ミサイルを搭載した無人艇「マグラV7」が黒海でロシア軍のSu-30戦闘機を撃墜し、海軍の無人艇が超音速戦闘機を撃ち落とした世界初の例となった。
2025年12月には、ウクライナ保安庁(SBU)が海軍と共同で、人類史上初となる「自爆型無人潜水機(UUV)」による実戦での奇襲を行ったと発表した。ウクライナ軍の水中ドローン「サブ・シー・ベイビー」(Sub Sea Baby)が、ノボロシースク港でロシア軍の改キロ級ディーゼル電気推進攻撃潜水艦を爆破し、推進システムを損傷させて航行不能にしたとしている。一方、ロシア側は潜水艦が損傷したとの主張を否定している。
2026年4月19日には、USFの第412「ネメシス」旅団(Nemesis Brigade)が、黒海上の無人水上艇(USV)から迎撃ドローンを発射してロシア軍のドローン1機を撃墜し、世界初の事例を打ち立てたと発表した。これにより、ウクライナ側の都市防空の負担を軽減できたという。
高速改良のスピード競争
FPVや無人艇からロシアのゲランの進化に至るまで、ロシア・ウクライナ戦争が示したのは「ドローンが戦争を変えつつある」ことだけではない。兵器の研究開発から実戦投入、改良、退役に至るまでの時間軸そのものが、根本から圧縮されつつあるのだ。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
CSISは、ゲランの4年間の進化から三つの特徴を導き出した。第一に、新技術は多くの場合、本格的な軍事研究開発計画から始まるのではなく、民生規格の部品や3Dプリンター、急ごしらえの改造で素早く試作品を作り、そのまま戦場に送って検証する。成功すれば即座に量産し、失敗すればすぐに切り捨てる。
第二に、兵器の改良は事前に定めた性能要求に基づくのではなく、敵の対抗措置に直接応える形で進む。ウクライナ軍が衛星測位への妨害を強めれば、ロシア軍は耐妨害アンテナを改良する。ウクライナ軍が迎撃ドローンを大量に使えば、ロシア軍はより高速なジェット推進式ゲランで迎撃の機会を狭める。
最も重要なのは、前線の要求が後方の技術者に届き、量産品へと形を変えるまでのサイクルが、すでに「週」単位にまで縮まっていることだ。
CSISによると、2025年10月15日にウクライナ軍が撃墜したゲランは、衛星受信機に記された取り付け日が10月8日だった。部品の取り付けから実戦投入まで、長くても1週間程度しかかかっていなかったことになる。
このため、現代の軍備競争は「誰が最高性能の兵器を持っているか」から、「誰が最も速く問題を見つけ、設計を改め、量産に移し、再び戦場に送り込めるか」へと移りつつある。
ゲランは技術的に精緻な最先端兵器とはとても言えない。真に警戒すべきは、ロシアがその背後に築いた生産とイノベーションの仕組みである。そしてドローンは、この変革を最も鮮明に体現する兵器プラットフォームなのだ。
ロシア・ウクライナのドローン戦争の教訓
ウクライナとロシアではこの数年、軍用ドローンの開発と戦術運用が急速に進化してきた。ウクライナ東部の前線だけでなく、後方のキーウやモスクワでもドローンによる攻防が繰り広げられており、「ロシア・ウクライナ戦争は今やドローン戦争そのものだ」と言っても過言ではない。
ただ、「週」単位で高速の改良が進む激烈な戦場は、他の国が現時点で再現できる環境ではない。平時においていかに交戦中のロシアとウクライナから学ぶかは、ドローン開発を進める各国の軍にとって重要な課題となっている。
オーストラリア陸軍研究センター(AARC)とCNASによるウクライナの戦場の観察を総合すると、次のような検討すべき方向性が浮かび上がる。
一、時代遅れの調達発想を捨てる
西側の平時の防衛調達には数年から数十年かかることが多く、刻々と変わる戦場を前にして事実上まひしている。報告書は、西側の軍も、平時に重視されてきた精密な在庫管理とコスト効率を優先する調達モデルを見直し、消耗の激しい戦場に備えて、より大きな在庫と補充能力を確保すべきだと訴える。
一部の低コストのFPVや一方向攻撃型ドローンについては、調達制度も大量に消耗するという本質を考慮すべきで、高価で寿命の長い装備の管理方式をそのまま当てはめるべきではないという。
二、交戦権限を現場に委ねる
電子戦による激しい妨害で前線の通信がいつ途絶えてもおかしくない環境では、何事も指揮所に段階的に報告して承認を仰ぐ官僚的な階層構造は破滅を招くだけだ。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )
部隊は階層ごとに装備を割り当てるべきで、歩兵分隊には基本的な偵察ドローンを、歩兵小隊には短距離の爆弾投下型ドローンを配備し、歩兵中隊がFPV自爆型ドローンを集中運用する。軍は任務指揮(ミッション・コマンド)を徹底し、通信が妨げられたり、一刻を争ったりする状況では、末端の指揮官により大きな臨機の判断の余地を与えなければならない。

三、指揮・統制・通信は最悪の事態を想定する
同盟国軍の指揮・統制・通信(C3)の構造は、「主要な通信リンクは開戦から数時間以内に必ず敵に切断される」という最悪の想定の上に築かなければならない。
部隊は平時から、メッシュネットワークや民間通信、物理的な光ファイバーなどの予備の仕組みを統合しておくべきだ。さらに、リアルタイムの情報と分散型の砲兵射撃統制を緊密に結びつけ、目標の発見から制圧までの意思決定の流れを30秒~3分以内に短縮する必要がある。
指揮官は「任務指揮」を徹底し、作戦意図に基づいて前線の兵士が自律的に対応できるようにしなければならない。
四、ドローン部隊を常設化・専門化する
工業力による消耗戦という現実を前に、軍は高価な少数の主力プラットフォームに依存するだけでは不十分で、安価で大きな損耗に耐えられる数万機規模のドローン群を配備し、規模によって戦場のカバー率を確保しなければならない。
ドローンの基本操作能力は末端の部隊まで普及させるべきだが、複雑な攻撃、偵察、電子戦、整備の任務には、引き続き専従の要員と、明確なキャリアパス・訓練制度が必要だ。

五、防空のコスト交換比を逆転させる
敵が1機数万ドル級の「シャヘド136」(Shahed-136)などの自爆型ドローンで安価な飽和攻撃を仕掛けてくるのに対し、1発数百万ドルの防空ミサイルで迎撃し続ければ、軍事経済と工業生産能力の面で緩やかな自殺に等しい。
戦略的な要路には安価なドローンを大量に配置した「ドローン防御壁」を築き、低コストで拒否的抑止を確立すべきだ。同時に、アクティブ・パッシブ両方式のレーダー、戦術電子妨害、低コストの迎撃ドローン、さらには高出力レーザーによるハードキル・システムを組み合わせて重層的な防空網を構築し、コスト交換比を防空システムの設計と調達の重要な判断材料に据えるべきだという。
六、「ドローン万能論」の神話を打ち破る
無人システムの物理的な制約はペイロード(搭載量)にあり、従来型火砲による大規模な斉射がもたらす火力に取って代わることはできない。
ドローンは本質的に「戦力倍増装置(フォース・マルチプライヤー)」であり、歩兵、機甲、通常砲兵による「諸兵科連合の枠組み」から切り離されれば、高密度の電子妨害や防空網に遭遇した際、戦力は急速に枯渇する。
現代戦の本質は依然として、意志をすり減らし合う過酷な対決だ。ロボットは陣地を破壊できても、泥濘とがれきの中で陣地を奪い、守り抜けるのは歩兵だけである。
ドローンやアルゴリズムがいかに進化しようとも、将来の戦場で勝敗を最終的に分けるのは、生存を脅かされた人間の精神的な強靱さと意思決定の知恵なのである。
台湾ニュースをもっと深く⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp
編集:梅木奈実
(関連記事:
【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか
|
関連記事をもっと読む
)
中国語関連記事













































