台湾では、行政院が6年間で約21万機の軍用ドローンを調達する構想を打ち出したが、戦力を真に左右するのは、倉庫に何機あるかだけではない。目標の偵察・情報収集、共通作戦状況図、指揮・通信、武器の割り当てから、訓練・整備、迅速な改良に至るまで、台湾のドローンを即戦力とするには、なお一連のシステム面の課題を埋める必要がある。
21万機という衝撃的な数 カギは「どう戦うか」 21万機のドローンは、人々に安心感を抱かせるに足る数字である。行政院は6月、2026年8月から2031年末までを対象とする2100億台湾ドル(約1兆428億円、1台湾ドル=4.9657円で換算)規模の特別条例案を提出し、軍用ドローン約21万機の調達を計画した。
立法院(国会に相当)はその後、国民党など野党側の修正を反映した別の制度を可決し、6年間で総額2400億台湾ドル(約1兆1918億円)、原則として年400億台湾ドルを年度予算の手続きで計上する仕組みとした。与野党は予算の形式や執行機関、監督の方法をめぐって意見を異にするものの、ドローン能力を強化する必要性そのものについては大きな異論はない。
しかし、調達数が大きくなればなるほど、一見単純だが実は最も難しい問いに先に答える必要がある。この21万機は、どのような状況で使うつもりなのか。海峡の監視か、海岸線の偵察か、上陸船団への打撃か、上陸した部隊への攻撃か、それとも第一線の中隊・小隊にリアルタイムの「空の目」を提供するのか。任務が違えば、求められる航続距離、搭載量(ペイロード)、センサー、通信方式、対妨害能力はまったく異なる。任務の定義が先に固まっていなければ、数量は「どれだけ買ったか」を示すにすぎず、「どれだけの戦力を形成したか」を示すことはできない。
行政院案では、軍用ドローン約21万機の調達を計画。立法院は8月27日、国防自主強化・無人システム調達に関する特別条例を三読会で可決した。(資料写真、顔麟宇撮影)
ドローンは目新しい装備ではない 急がれる戦争体系への組み込み 実のところ、ドローンが戦争に投入されてきた歴史はすでに数十年に及ぶ。ベトナム戦争期の偵察任務、1970年代の中東戦争でのおとり・情報収集から、湾岸戦争や対テロ戦争での長時間監視・精密打撃に至るまで、ドローンはとうに目新しい装備ではなくなっている。2020年のアゼルバイジャンとアルメニアの戦争(ナゴルノ・カラバフ紛争)では、ドローンが砲兵や精密誘導兵器と組み合わされ、機甲部隊や防空システムに大きな損害を与える様子を世界に印象づけた。
齊氏は、台湾は長年、米軍の装備や米国の戦争経験を重視する一方、他地域で起きていた戦術の変化を十分に研究してこなかったと指摘する。2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻に踏み切り、大量の低コストのドローンが連日、戦場の映像に登場するようになって、政府や台湾国防部、世論もようやくその変化を強く意識するようになった。ドローンが戦場に加わったことで「非対称戦」の構図はすでに形づくられており、将来の戦争は、より先進的なプラットフォームを持つかどうかだけでなく、補充の速さ、改良の速さ、そして損耗に耐えられるかどうかを競うものになる――という認識が広がったのである。
こうした「後手」の代償として、台湾はいま巨額の予算で短期間のうちに追いつこうとしているが、部隊の編制、教範、操作要員、兵站制度はまだ十分に整っていない。齊氏が公開された調達・部隊データをもとに試算したところ、未納入分や試験用にとどまる数量を除くと、台湾が現時点で直ちに運用できる軍用・民生用ドローンは、21万機とはなお大きな開きがある。この差はハードウェアだけの問題ではなく、十分な数の操作員、情報要員、整備要員を同時に育成できるかどうかにも及ぶ。
ドローンは、ロシア・ウクライナ戦争における「非対称戦」のカギを握る兵器となっている。(資料写真、AP)
ドローンのキルチェーン 誰が判断し、誰が命じ、誰が撃つのか 偵察ドローンが海上で所属不明の船舶を発見しても、それは作戦プロセス全体の第一歩にすぎない。映像はリアルタイムで送り返され、レーダー、衛星、ソナー、電子偵察、他部隊のデータと照合されなければならない。指揮センターは敵味方を判別し、目標の価値を確認したうえで、沿岸配備型ミサイル、火砲、有人機、巡航ミサイル、あるいは別の攻撃型ドローンのいずれに任務を担わせるかを決める。発見、位置特定、識別、意思決定から目標の破壊に至るこの経路が、いわゆる「キルチェーン」である。
このため、自律航法、対妨害通信、エッジコンピューティング、目標識別の重要性は、機体を数千機上積みすることよりも高い可能性がある。ここでいう「自律」とは、射撃の判断を完全に人工知能(AI)に委ねることではない。通信が制限された状況でも、ドローンが地形を識別し、編隊を維持し、所定の区域に戻り、最も重要な情報を送り返せることを指す。こうした能力は一度きりの調達では実現できず、ソフトウェア、データ、アルゴリズム、演習・訓練を繰り返し積み重ねる必要がある。
台湾軍の「共通作戦状況図」は、ドローンのキルチェーンを機能させるうえで重要な前提となる。(資料写真、顔麟宇撮影)
数の陰に隠れた三つの制度的欠落 整備・訓練・交戦規定 齊氏は、台湾のドローン政策には、数量の陰に隠れがちな欠落が少なくとも三つあるとみる。第一は整備だ。ドローンは、従来の弾薬のように長期間保管しておくだけでは即応性を維持しにくく、大量のドローンは、大量の電池の劣化、モーターの消耗、プロペラの破損、センサーの狂い、そしてソフトウェアの更新を意味する。21万機が集中して納入されれば、整備・保守、試験飛行、較正、運用要員の確保には、長期にわたって巨額の費用が必要になる。しかも機種ごとに部品や地上局、整備手順が別々であれば、21万機は規模の経済をもたらすどころか、兵站上の巨大な悪夢になりかねない。
第二は訓練である。民生用のクアッドコプターを飛ばせるからといって、強風や夜間、電磁妨害、敵の砲火の脅威の下で軍事任務を遂行できるわけではない。操作員のほかにも、任務計画、周波数管理、画像判読、目標確認、現場整備を担う要員が必要だ。部隊が演習前に集中的に数回飛ばすだけでは、本当の意味での戦場での習熟度を築くことは難しい。
第三は交戦規定だ。大量のドローンが戦場に散らばったとき、誰が目標を確認する権限を持つのか。民間船舶や友軍、民間施設を誤認した場合、誰が責任を負うのか。通信が途絶した後、システムはどこまで自律的に動いてよいのか。これらの問題は、軍事的な効率、法的責任、政治的リスクに同時に関わる。ハードウェアは発注して調達できるが、権限、責任、指揮の制度は平時のうちに演練し、明確にしておかなければならない。
台湾のドローン政策をめぐり、齊立平氏は、膨大な数量の陰に隠れがちな三つの課題を指摘した。(蔡親傑撮影)
防御はミサイル頼みでは成り立たない 「対ドローン」は不可欠 ジャミングガン(妨害銃)にも対応できる周波数帯には限界があり、軍用ドローンは周波数ホッピングや周波数の切り替え、自律航法、画像認識によって妨害の効果を弱めることができる。広範囲の電磁的な制圧は、味方の通信にも同時に影響を及ぼしかねない。小型で低空を飛ぶ目標は従来型のレーダーでは捉えにくく、ドローンでドローンを追撃する手法も、速度やセンサー、持続的な追尾能力の制約を受ける。齊氏は、台湾には低コストの迎撃手段、電子妨害、指向性エネルギー兵器、近距離火力、さらに重要な軍事・民生施設の受動的防護を整備する必要があり、対処の責任をすべて高価なミサイルに委ねれば、戦時に長く持ちこたえるのは難しいとの見方を示した。
数カ月ごとに更新されるドローン 政府の調達・納入は追いつけるか 従来の軍備調達は安定性、信頼性、長期運用を追求し、一つの装備が8〜10年にわたって運用されることも珍しくない。だが、ロシア・ウクライナの戦場では、ドローンとその対抗技術がわずか数カ月で攻防の一巡を終えることもある。通信周波数が妨害されれば周波数ホッピングや光ファイバーに切り替え、衛星測位が無効化されれば視覚航法を加え、装甲車両に防護ネットが取り付けられれば、攻撃方法もすぐに変わる。
台湾がなおも従来の大型兵器と同じ方式でドローンを調達し、要求書の作成、入札、試験評価、落札から納入までに3〜5年を要するなら、落札時点では先進的だった製品も、部隊に届く頃には時代遅れになっているかもしれない。齊氏は、政府は小ロット・複数回に分けた調達・継続的な試験を軸とする調達方式を採用し、部隊からのフィードバックをそのままメーカーに戻して、ソフト・ハード両面の迅速なアップグレードを認めると同時に、中核部品の共通規格を維持すべきだと主張する。
ウクライナの経験は、量産と改良が同時に存在しなければならないことを如実に示している。ロイター通信の報道によると、ウクライナは2024年に150万機を超えるFPV(一人称視点)ドローンを調達し、その96%が国内の供給業者によるものだった。2025年の調達目標はさらに約450万機に引き上げられた。台湾が真に学ぶべきは数量だけではない。前線のニーズ、民間のエンジニア、迅速な調達、分散型の製造を一つの循環としてつなげる仕組みである。
ウクライナは2024年、150万機を超えるFPVドローンを調達し、その大半を国内の供給業者から調達した。写真はウクライナ東部ハルキウ州のFPVドローン保管場所。(資料写真、AP)
「台湾海峡はウクライナではない」 21万機はまず作戦想定に組み込め 台湾はウクライナに学ぶことはできても、ウクライナを模倣することはできない。齊氏によれば、ウクライナは主に広大な陸上の戦場であり、低コストのFPVドローンは前線近くから飛び立って、塹壕や車両、兵士個人を攻撃できる。一方、台湾が直面するのは幅100キロを超える海峡であり、季節風、降雨、塩霧、海面クラッター(海面の反射によって生じるレーダー上の不要なノイズ)といった条件がある。さらに、遠距離での通信や航法が妨害される中で、高速で移動する海上目標を識別しなければならない。
このことは、台湾に階層化された体系が必要であることを示している。大量の安価な小型ドローンが沿岸・地上の任務を担い、より大型で航続距離の長いシステムが海上監視、通信中継、遠距離打撃を受け持つ。中高高度・長時間滞空型のプラットフォームは、持続的な情報・監視・偵察(ISR)を提供する。各層が共通作戦状況図と火力ネットワークに接続されて初めて、単体の装備を全体の戦力に変えることができる。
21万機のドローンは、台湾の国防の転換の出発点となり得る一方、数字を追いかけるだけの新たな調達競争に終わる可能性もある。両者を分ける基準は、予算をいくら計上したかだけではない。より重要なのは、政府が任務の分類、納入のペース、訓練の能力、稼働率、ソフトウェアの更新、軍種横断の統合について、公に説明できるかどうかだ。
ドローンが本当に埋めるべきは、敵軍が台湾に接近してから上陸作戦に至るまでの偵察と火力の空白である。完全な情報チェーン、キルチェーン、作戦体系がなければ、21万機という数字も、それだけでは戦力にはならない。