一基の街灯から考える都市へ スマートポールが切り拓く都市ガバナンスと新たなビジネスの可能性

2026-10-09 09:00
台中の次の一歩――スマートポールの整備を都市運営の力へ。(写真提供/台中市政府デジタル発展局)
台中の次の一歩――スマートポールの整備を都市運営の力へ。(写真提供/台中市政府デジタル発展局)

街灯は、都市で最も身近な公共設備の一つである。そのポールにカメラ、環境センサー、通信機器、人工知能(AI)が段階的に組み込まれることで、新たな役割を担い始めている。街路の異常検知、環境変化の監視、公共情報の発信に加え、都市がリスクを予測し、サービスを手配するための現場の情報拠点にもなりつつある。

しかし、設備の機能が増えれば、都市のガバナンス能力も自然に高まるわけではない。データを適切に理解できるか、異なるシステムが連携できるか、事象が発生した後に誰が対応するのか、そして市民がデータの利用方法を信頼できるか。これらがスマートポールの実際の価値を左右する。

10月2日に開催された「智慧台中・杆動未來」フォーラムでは、フランスのシャントルー=アン=ブリー市長オリヴィエ・コレソー(Olivier Colaisseau)氏、和碩聯合科技(Pegatron)の上級副総経理兼最高技術責任者(CTO)である黄中于氏、遠傳電信(Far EasTone Telecommunications)の総経理である井琪氏、華碩雲端(ASUS Cloud)および台智雲(Taiwan AI Cloud)の総経理である呉漢章氏が登壇した。公共政策、システム構築、サービス運営、AIガバナンスという各視点から、都市が解決すべき課題を明確にし、連携可能なインフラを整え、長期運用を通じてデータを蓄積したうえで、明確な権限と責任の下でAIを都市運営に活用するという道筋が示された。

コレソー市長が示すスマートシティの出発点は公共課題の捉え直し

オリヴィエ・コレソー市長は、新しい技術によって、すでに有効性を失った公共政策を延命させてはならないと指摘した。設備を導入する前に、意思決定者は課題と公共政策の目標を明確にする必要がある。既存の業務を速めるだけで、市民生活の改善につながらない事態を避けるためだ。同市長は水供給とエネルギーの関係を例に、都市の各システムは相互に影響し合っており、部門の垣根を越えた運営が必要だと説明した。

紹介された都市農業の事例は、スマートシティと生態系のつながりも示している。作物の生育は花粉を運ぶ昆虫に支えられる一方、夜間照明は生物の活動に影響する。そのため、照明管理では日照、交通、作物の生育周期を総合的に考慮する必要がある。発表資料によると、シャントルー=アン=ブリーはフランスで比較的早く夜間消灯に取り組んだ自治体の一つであり、照明政策を省エネルギーと生態系保全の両立に役立ててきた。

同市では、ミツバチが運ぶ花粉を2年連続で採取し、DNA解析によって植物の種類を特定した。昆虫の食物資源の不足を把握し、その結果に基づいて公共空間の年間植栽計画を調整することで、受粉と都市農業を支えている。データ収集には、都市の政策を見直すための明確な目的が与えられていた。 (関連記事: 台湾・台中市で「2026スマートポールフォーラム」 5G・AIoT・AI活用でスマートシティ高度化へ | 関連記事をもっと読む )

台中にとっての示唆は、スマートポールの配置や機能を、それぞれの場所のニーズに合わせることである。交通量の多い交差点、公園、住宅地では、必要なセンシングや照明のあり方が異なり、成果は安全、生態系、生活の質によって評価すべきだ。整備前に課題を定め、整備後も評価を続けることで、技術は設備の展示にとどまらず、政策を調整する根拠となり得る。都市のスマートさも、課題を解決する力によって検証されるべきである。

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