【ペットと祈る台湾④】おみくじはAI、線香も爆竹もなし 台北の「ペット最優先」な無人廟 ほとんどの日が無人となる寵佑宮を訪れたカップルとビション・フリーゼ。左側に並ぶ小さな引き出しには、おみくじの籤詩が刻まれた版が収められている。(張瑜萍撮影)
午前9時、台北・迪化街かいわいにある建物の鉄製シャッターがひとりでに上がる。エアコンが動き出し、ロボット掃除機が床を走り始める。開けに来た人は誰もいないし、ほとんどの日はスタッフが開けに来ることもない。台北のペットのための廟、寵佑宮 (ちょうゆうぐう)は、ほぼ無人で運営されている。
入り口の上の額には「籌備処(準備事務所)」とある。台湾で寺廟を正式に登記するには8〜10年かかるため、法的にも現在はまだ準備段階にある。だが、それ以外は完成している。20台を超える監視カメラが建物を見守る。自動販売機では、お守りの購入や光明灯の申し込みができる。台湾の多くの廟では係員が台帳で管理する光明灯の登録も、ここではデジタル化されている。電話番号を入力すると、自分の光明灯が点灯し、棚のどこにあるのかすぐに分かる。おみくじの詩にはQRコードが付いていて、現代語のAI解説が表示される。
「自動化できるものは、すべて自動化します」と、寵佑宮を創設したボズ・ル氏は言う。取材の約束をする前に一人で訪れた記者は、最初に、この建物全体がもともと無人を前提に設計されているのではないかと思ったという。その通りだった。
本殿の祭壇の前に座る参拝者のボーダーコリー。ほとんどの日、受付カウンターの向こうに人の姿はない。(張瑜萍撮影)
誰もがすぐに中へ入るわけではない。ある日の午後、大型犬を連れた中年の女性が友人と外に立ち、しばらく入り口を眺めてから、ようやく近づいた。名前は明かさなかったが、好奇心から来たという。犬を祝福する廟が実際どんなものか見てみたかったのだ。中に入っての感想は「とても現代的。とても新しい」。
女性はインスタグラムで廟を知った。ビション・フリーゼを連れたカップルも、フェイスブックで見つけたという。どちらも知り合いから聞いたわけではなかった。
3人目の参拝者は近所に住む男性で、2匹のボーダーコリーを河川敷で散歩させた後に連れてくる。長く通っているので、変化に気づいている。最近は人が増えた。有名になってきたんだろう、と話した。
機械にできない唯一のこと、それは「支払い」 自動化が止まるのはお金のところで、外国人の参拝者がつまずくのもそこだ。お守りは参拝者の良心に任せる形で並べられ、定価を設けず、寄付という形で頒布される品物の横には賽銭(さいせん)箱がある。支払う相手が見つからず、何も持ち帰らない人も多い。
廟の掲示はすべて中国語だが、内容が丁寧なため、外国人の参拝者のほとんどは写真を撮って翻訳アプリにかけるだけで済む。ただ、アプリではまったく歯が立たない言い回しもある。寄付額を定めない品物に使われている言葉は、おおよそ「金額はお気持ちで」という意味だが、機械翻訳では使い物になる訳が出てこない。博物館のような多言語のQR音声ガイドを導入する予定だ。
盗難への、昔ながらの答え 無人の廟で盗難はないのかと尋ねると、ル氏は「ある」と答えた。そして、その対処法は、この建物の中で最もハイテクとは縁遠いものだった。
「本当に経済的に困っている人が持ち帰って、自分の動物のために祈るのなら、それでいいと思います。転売するために持っていくのなら、それはその人と神様の間の問題です。法律の手が届かなくても、その責任は自分で背負っていくことになります。神様の目の前でやったことですから」
監視カメラシステムには、次に顔認証が加わる予定だ。
線香ではなく、動物のための設計 動物を中心に作られているのは自動化だけではない。廟は、トカゲ、カメ、オウム、ウサギ、ハムスター、ヘビ、ハリネズミも祝福するという。祭神がかつて虎と竜を治したことが根拠だ。
廟は、行わないことを三つ掲げている。そのいずれも、にぎわう台湾の廟ではごく当たり前に行われていることだ。線香を手に持たない、紙銭(金紙)を焼かない、爆竹を鳴らさない。この三つは、怖がりな動物にとって廟を耐えがたい場所にしかねないものでもある。参拝者は代わりに手を合わせる。
本殿の祭壇の前には香炉が置かれており、廟はSNSで、その使い方と理由を説明している。お守りを持って行き、香炉の上で時計回りに3回まわす。時計回りは、天に逆らわず天とともに動くことを意味するという。3回は「天・地・人」を表す。道教の宇宙観を構成する三つの要素であり、そのすべてから祝福を受けるという意味だ。
リードは必須ではないが、廟は使用を呼びかけている。オンラインでの祈祷サービスは年内に、まず台湾国内で始まる予定だ。光明灯はすでに海外からも点灯を申し込める。
午後9時、シャッターは再び自動で下りる。そこにも、人の手は必要ない。
本記事は、人々がペットを連れて訪れる台湾の廟を通して、台湾の民間信仰を紹介する『風傳媒(ストームメディア)』の連載「ペットと祈る台湾(Taiwan at Prayer)」の一環として、寵佑宮を取材した全4回のリポートのうちの1本です。
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