日本外国特派員協会(FCCJ)でこのほど、作家を招いたブックブレイクイベントが開催され、英字紙「ジャパンタイムズ」のシニアライター、アレックス・K・T・マーティン氏が登壇した。
同氏は自著『Phantom Wolves of Japan: In Search of a Lost Mountain Guardian』に基づき、1905年に絶滅したとされるニホンオオカミをめぐる各地の目撃記録や生態的特徴、山岳信仰との結びつきについて、取材成果を語った。
ニホンオオカミとは 世界最小級、最後の公式標本は1905年
マーティン氏によると、ニホンオオカミ(学名:Canis lupus hodophilax)は本州、四国、九州に生息していた世界最小のオオカミの一種で、肩高は50~60センチメートル程度。島嶼化の影響によって小型化したと考えられている。
1905年1月、米国の動物学者マルコム・プレイフェア・アンダーソンが奈良県東吉野村の鷲家口で地元住民から購入した雄の個体が、科学的に確認された最後の公式標本とされている。
当時、小学校教員の初任給に相当する金額で買い取られたその毛皮と頭骨は、現在、ロンドン自然史博物館に保管されている。
現在、世界に残る剥製標本は、東京大学農学部や和歌山大学などを含めても、わずか5、6体にとどまる。
また、約200年前にシーボルトが持ち帰った標本をめぐる分類上の混乱や、近年のDNA研究によって明らかになりつつある日本犬との遺伝的関連性についても解説した。
秩父での目撃情報をきっかけに取材開始
同氏がニホンオオカミに関心を持ったきっかけは、埼玉県秩父地域の旧荒川村に母親が建てた家をめぐる出来事だった。
2018年冬、近隣住民から「自宅前の森でオオカミのような動物を見た」との知らせを受けたことを機に、取材を開始した。
その後、1969年に苗場山で謎の遠吠えを聞いて以来、半世紀以上にわたりオオカミを探し続けている「ニホンオオカミを探す会」代表の八木博氏と出会った。
八木氏は秩父の山中に50~80台のトレイルカメラを設置し、毎週データの回収を続けている。
絶滅後も相次ぐ目撃談 「秩父野犬」はニホンオオカミか
講演では、公式な絶滅宣言後も日本各地で相次いだ目撃や捕獲の事例が紹介された。
1910年に福井城跡で捕獲され写真が残る個体をはじめ、1964年に秩父の両神山で林業従事者の山内健二氏らが遭遇した事例、1990年に埼玉県警山岳救助隊を結成した茂木晃氏らが訓練中の和名倉山で至近距離から目撃した事例、2000年に大分県と宮崎県の境にある祖母山山麓で写真が撮影された事例などが挙げられた。 (関連記事: 日本の10代、死因1位は自殺 遺族と映画監督が訴える「ただ隣に寄り添う」支援 | 関連記事をもっと読む )
特に1996年10月、八木氏が秩父の林道で撮影した19枚の「秩父野犬」の写真については、動物学者の今泉忠明氏がシーボルト標本と比較検証し、ニホンオオカミの形態的特徴を極めて強く残していると評価した経緯が説明された。













































