「イランに勝てない米軍は中国にも勝てない」 米研究者、台湾有事への直接介入排除を提言

2026年9月25日、米ワシントンの国立公文書館博物館に到着したトランプ米大統領とメラニア夫人、中国の習近平国家主席と彭麗媛夫人。(資料写真、AP)
2026年9月25日、米ワシントンの国立公文書館博物館に到着したトランプ米大統領とメラニア夫人、中国の習近平国家主席と彭麗媛夫人。(資料写真、AP)

軍事介入の抑制を重視する米ワシントンのシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」(Defense Priorities)の上級研究員兼軍事分析部門ディレクター、ジェニファー・カバナー氏(Jennifer Kavanagh)は7日、米国の台湾に対する安全保障上の関与が最大の戦略的負担になっていると指摘した。

カバナー氏は、台湾をめぐって米中が衝突すれば、中国が台湾を直接支配する場合よりもはるかに大きな打撃を米国の利益に与えると警告。米政府は台湾防衛のために米軍が直接介入する選択肢を明確に排除し、沖縄やルソン島など台湾に近い脆弱な拠点から米軍を再配置するとともに、戦略の重心を半導体生産の国内回帰の加速に移すべきだと訴えた。

台湾海峡の軍事バランスの崩れと消耗

カバナー氏はディフェンス・プライオリティーズの上級研究員兼軍事分析部門ディレクターを務め、米ブラウン大学の「戦争のコスト」(Costs of War)プロジェクトの執筆者でもある。米ランド研究所に勤務した経歴を持ち、ミシガン大学で政治学・公共政策の博士号を取得した。

同氏は米外交誌『Statecraft & Strategy』への寄稿で、この10年で米国の政策決定者の間では中国が武力で台湾を奪うことへの懸念が急速に高まり、米国で最も強硬な台湾支持派は台湾を「いかなる代償を払っても」守らなければならない「重要な結節点」(critical node)とみなし、中台関係の現状のいかなる変化も容認できない脅威だと考えるようになったと指摘した。

しかしカバナー氏は、米政府の現在の対台湾政策は誤っていると考える。米国の利益にとって最大の脅威は、中国が台湾の奪取に成功することではなく、台湾をめぐって米中が戦争に突入することだという。中国の海岸からわずか90マイル(約145キロ)の場所で、同格の軍事大国と交戦する衝突の結果は、米政府には到底耐えられない。したがって米国の対台湾政策は、こうした戦争のリスクを根本から断ち、中国と対立した際に米軍が直接介入して台湾を防衛する可能性を排除すべきだと主張する。

カバナー氏は、台湾海峡の軍事バランスは決定的に北京優位に傾いたと分析する。中国は過去10年で核兵器、海軍の規模、ミサイル能力を全面的に拡大し、米国に残る水中と宇宙の領域での優位を徐々に奪いつつあるうえ、台湾を包囲し、遠方に海軍力を投射する能力も示している。

これに対し米軍の高性能精密誘導弾薬や防空システムの在庫は、大規模な軍事支援やイランでの軍事作戦で大きく消耗した。防衛産業の生産能力不足に制約されて迅速な補充も難しく、これは米国が軍艦や潜水艦、戦闘機を増産できないのと同じボトルネックだという。 (関連記事: 【ドローン神話①】台湾はドローンだけで中国軍を食い止められるのか 米軍の「ヘルスケープ」、なぜ無人機は「主役」ではなくなったのか | 関連記事をもっと読む )

カバナー氏は、中国が台湾を包囲する能力をすでに示していると指摘する。写真は2025年12月29日、中国人民解放軍東部戦区が台湾周辺で実施した軍事演習「正義使命2025」(中国軍号)
カバナー氏は、中国が台湾を包囲する能力をすでに示していると指摘する。写真は2025年12月29日、中国人民解放軍東部戦区が台湾周辺で実施した軍事演習「正義使命2025」。(中国軍公式メディア「中国軍号」より)

カバナー氏によると、イランは「エピック・フューリー作戦」(Operation Epic Fury)の開始から数週間で、中東の米軍防空網に深刻な打撃を与えることができた。強力なミサイル能力を持つ中国を相手にすれば、アジアの米軍施設も同様に、あるいはそれ以上に脆弱になる。

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