台湾の多くの廟は、参拝者がどの神が何を担当しているかを知っている前提で成り立っている。台北・迪化街かいわいの寵佑宮(ちょうゆうぐう)は違う。2025年12月から動物たちのための祈りの場となり、入り口の額には今も「籌備処(準備事務所)」と記されているこの廟は、各神仏の役割を壁に明記している。祭られている11尊の神仏の横には、それぞれ平易な言葉で「担当業務」が掲げられ、通して読むと、神仏の顔ぶれというより動物病院のケアプランのように見える。
雷におびえて眠れない動物には観音。ここでは「安心を授ける観音さま」と呼ばれている。慢性疾患や長期の介護には薬師如来がいて、日中は日光菩薩が元気を、夜間は月光菩薩が休息と回復を受け持つ。亡くなった動物には地蔵菩薩がいる。ここでは「安らかな旅立ちの仏」と名付けられている。
そして、知恵をつかさどる文殊菩薩。廟では「知恵を開く仏」と位置付けている。寵佑宮を創設したボズ・ル氏によると、実際、とりわけ多いのが、あるタイプの参拝者だという。愛犬が自分より賢いと気づき、ついていけるよう助けを求めに来るボーダーコリーの飼い主たちだ。

廟文化になじみのない人にも分かりやすく
ル氏自身は、廟の文化の中で育ったわけではない。廟を建てる前は、多くの台湾人と同じようにお参りしていたという。商売が振るわなければ財神を祭る廟へ、身の安全を願うなら土地公(土地神)へ。そして、たいてい何をすればよいのか分からなかった。
「グーグルで調べるしかないのですが、検索するとそれぞれ違う説明が出てくるんです」とル氏。そこで廟では、参拝の順序、各神仏の役割、そして正式な名前になじみのない人向けの愛称を書き出している。
畜生道を救う馬頭明王
ここで最も目を引く神仏は、台湾の廟ではほとんど祭られていない存在だ。馬頭明王(ハヤグリーヴァ)は観音菩薩の忿怒(ふんぬ)の姿で、慈悲を象徴する観音が見せる例外的な忿怒相だ。その救済の対象は、仏教で説く輪廻(りんね)の六つの世界「六道」の一つ、畜生道とされる。そこに落ちた魂を救うと伝えられている。
馬頭明王はチベットで広く知られ、日本では「馬頭観音」の名で親しまれてきた。ル氏によると、日本では古くから、家畜の健康や、食料となった動物の供養のために祈られてきたという。寵佑宮で掲げられている役割はもっと率直だ。「邪を破り、正義を守り、ペットの権利を守る」。
ここには、馬頭にまつわる二尊の神仏が、対照的な姿で祭られている。違いは一目で分かる。
一体目は「正義の馬頭爺」と題された忿怒の姿で、三つの目、むき出しの牙、甲冑、そして冠と胸当てには髑髏(どくろ)が施されている。二体目は、廟で「馬頭仏祖」と呼ばれ、「母」の名を与えられた像で、まったく対照的だ。目を伏せ、豪華な冠をいただき、掲げた片手に印を持つ。守護神ではなく菩薩のたたずまいである。
一方は男性神への敬称である「爺」、もう一方は「母」と呼ばれる。廟の公益活動を担うのは馬頭仏祖の方で、廟は里親探しの譲渡会を開いており、ペットの行動に関する講座も計画している。
二体について紹介した寵佑宮の公式投稿:
ル氏によれば、祭る神仏は自分で選んだものではない。当初は、中国の民間伝承で清廉な裁きの象徴とされる宋代の役人、包青天(包拯)を迎えるつもりだった。ところが、祭る神仏は夢やポエ(筊杯)による神託を通じて決まっていったという。馬頭明王を招いたのは観音自身だった、とル氏は話す。
開廟に必要な2体ではなく、11体すべての神像を彫らせたことは、当時は高くついた失敗のように感じられた。だが、開廟の日を過ぎると、そうは思わなくなった。
ル氏の想像を最も上回ったのは、亡くなった動物のために祈りたいという人々の思いだった。だからこそ、3階には今、亡くなった動物を安らかな旅立ちへ導く神仏が祭られている。
本記事は、人々がペットを連れて訪れる台湾の廟を通して、台湾の民間信仰を紹介する『風傳媒(ストームメディア)』の連載「ペットと祈る台湾(Taiwan at Prayer)」の一環として、寵佑宮を取材した全4回のリポートのうちの1本です。
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編集:梅木奈実 (関連記事: 【ペットと祈る台湾①】台北・迪化街に「ペット専用の廟」 神の足元ではなく隣に猫と犬 | 関連記事をもっと読む )













































