台湾人監督として唯一カンヌ国際広告賞の金獅子賞を受賞した経歴を持つ台湾CM界の巨匠、ワン・チャイシアン(王財祥)監督の長編デビュー作であり唯一の長編作品『逃亡者狂騒曲 デジタル・リマスター版』が、2026年10月10日(土)より東京・渋谷のユーロスペースほかにて全国順次公開される。
公開を目前に控え、主演を務めたダンサーのチェン・ホンレン(陳訇任)によるメッセージ動画や初日来日舞台挨拶の登壇決定をはじめ、ワン監督のコメント、1997年当時の貴重なメイキング写真、記念コラボ企画の全貌が解禁された。
本作は1997年、Y2K前夜の空気を予感させる世紀末の台北を舞台に製作され、同年のベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された。実験的な映像美と大胆な映像言語が注目を集めたものの、当時の台湾における劇場公開はわずか数日で打ち切られた。
「この映画が理解されるのは20年後かもしれない」という言葉とともに長らく封印されてきた幻の作品が、デジタル・リマスター版となって約30年の歳月を経て日本で世界初の劇場公開を迎える。
約30年の時を経てよみがえる幻の台湾映画
物語は、ニューヨークに憧れながら夜はナイトクラブで働き、昼は恋人と過ごす青年が主人公。祭りの夜に偶然殺人事件をビデオカメラで撮影したことから謎の殺し屋に追われる逃亡者となり、混沌とした台北の街を彷徨う中で現実と白昼夢の境界が曖昧になっていく様を描く。
公開初日となる10月10日には、劇中で名を持たない「X」を演じた主演のチェン・ホンレンがユーロスペースでの14時40分の回上映後に行われる舞台挨拶に登壇する。
チェンは1990年代に著名な舞踏団「無垢舞蹈劇場」の主要ダンサーとして世界各国の公演に参加し、ハリウッド映画『沈黙―サイレンス―』にも出演した経歴を持つ。
チェンは公開に向けたメッセージ動画で「この映画は独特で強烈な映像スタイルを持ち、内容にも爆発力のある革新的な作品。1997年に全身全霊で作った本作の魅力に、29年が経った今でも惹きつけられるはず」と語っている。
ワン監督も「これは1997年に作られた、とても台湾らしい台湾映画。直接的でありながら暗示的でもあります。もしびっくりさせてしまったらごめんなさい」と言葉を寄せた。
ベルリン出品当時を知る関係者が語る作品の魅力
当時の劇場公開や映画祭で本作を目撃した関係者からもコメントが寄せられた。
ぴあフィルムフェスティバル(PFF)ディレクターの荒木啓子は「1997年にベルリン国際映画祭で観たとき、それまで紹介してきた台湾ニューシネマとは全く違う印象を持った。すべての思いを具体的に映画にし、ひとつひとつのショットが鮮烈。すべてを自分でコントロールして作る夢のような完全自主映画」と評した。 (関連記事: 幻の台湾映画『逃亡者狂騒曲』が約30年を経て復活 デジタル・リマスター版、10月10日全国公開 | 関連記事をもっと読む )
華語圏映画史を研究する日本大学教員の三澤真美恵は「第四原発建設をめぐる対立、政治家暗殺、セクシャル・マイノリティ、爆竹祭り、ハイヒールなどが散りばめられ、約30年を経てこの作品がダンサーの身体を媒介にした叛逆のブリコラージュだったのだとわかった」と振り返っている。


















































