2026年10月1日、スパイラルホールで第39回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が開催された。
今年の映画祭は10月26日から11月4日までの10日間、日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区で開催される。オープニングのレッドカーペットは日比谷仲通りで実施される。
併設のビジネスコンテンツマーケット「TIFFCOM 2026」は、東京都立産業貿易センター浜松町館で10月28日から30日までの3日間開催される。
新たにフェスティバル・ディレクターに就任した久松猛朗氏は、多様な映画の魅力を紹介するとともに、日本やアジア、女性の映画人が世界へ羽ばたくためのプラットフォームを構築し、来年の第40回記念開催に向けて弾みをつけたいと意欲を示した。
第39回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が行われ、中島健人氏のフェスティバル・ナビゲーター就任とともに、台湾との共同製作を含むコンペティション部門の全15作品や各種企画が発表された。(黃信維撮影)
オープニングは「映画 SUKIYAKI 上を向いて歩こう」 中島健人がナビゲーターに 今年のオープニング作品は、全米No.1を記録した名曲の誕生を描く瀬々敬久監督の「映画 SUKIYAKI 上を向いて歩こう」に決定した。
センターピース作品には、アカデミー賞視覚効果賞を受賞した山崎貴監督の「ゴジラ-0.0」、クロージング作品にはヨン・サンホ監督の「コロニー/群体」が選ばれた。
フェスティバル・ナビゲーターに就任した中島健人氏は、映画祭を東京と世界がつながる場所と表現。自身がアカデミー賞や海外俳優との交流を通じて日本映画の尊さをあらためて実感した経験に触れ、「映画は自分の人生を拡張してくれるもの」と語り、今年も最高の作品がそろっていると意気込みを示した。
第39回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が行われ、中島健人氏のフェスティバル・ナビゲーター就任とともに、台湾との共同製作を含むコンペティション部門の全15作品や各種企画が発表された。(黃信維撮影)
コンペティション15作品発表 台湾・日本合作「妖怪、化物をひろう」も選出 市山尚三プログラミング・ディレクターからは、世界から1892本の応募が寄せられたコンペティション部門の全15作品が紹介された。
今年の傾向について市山氏は、世界が分断に向かう中、過去の出来事を通して現代の世界を読み解く歴史的な作品が多いと指摘した。
選出されたのは、台湾と日本の合作で金門島を舞台にした池田暁監督の「妖怪、化物をひろう」、バングラデシュの因習とホラーを融合させたルバイヤット・ホセイン監督の「問題だらけの花嫁」、リサンドロ・アロンソ監督の「ふたつの自由」、第二次世界大戦のパルチザンを描くサムエレ・ロッシ監督の「地獄が来たとしても」、台湾俳優リー・カンションらが出演し、中国の食と歴史を描くチウ・ジョンジョン監督の「腹喜(フーシー) 四つの饗宴奇譚」。
このほか、インドネシア独立後の混乱を描くガリン・ヌグロホ監督の「夜明け前の赤」、社会風刺を盛り込んだミルチョ・マンチェフスキ監督の「妹兄とマンホールの蓋」、バフマン・ゴバディ監督による異例のホラー「木々は見ている」、女性と複数の男性を描く三島有紀子監督の「男ともだち」、セルビアの学生運動を題材にしたイェレナ・マクシモヴィッチ監督の「今日が終わるまで」が名を連ねた。
第39回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が行われ、中島健人氏のフェスティバル・ナビゲーター就任とともに、台湾との共同製作を含むコンペティション部門の全15作品や各種企画が発表された。(黃信維撮影)
「アジアの未来」10作品、「Nippon Cinema Now」は今年からコンペ化 「アジアの未来」部門では、フィリピン現代史を描く「エジョク」、イランの「私の特別じゃない」、インドネシアの「12月のジャニー」、中国出身監督が高知を舞台にした「ミラクルス・サマー」、韓国の「ひときところより」、インドの「紙の花」、日本の「サラバ」、トルコの「シェリペ」、カザフスタンの「鶴草」、イランの「シルバー」の10作品が選出された。いずれも家族や自らの足元を見つめ直す作品となっている。
今年からコンペティション化された「Nippon Cinema Now」部門では、松野泉監督らの8作品が賞を競う。
「CROSSCUT ASIA+」部門では、日本とインドネシアのプログラマーが共同で作品を選定し、東南アジア映画を「サイドバイサイド」をテーマに特集する。
第39回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が行われ、中島健人氏のフェスティバル・ナビゲーター就任とともに、台湾との共同製作を含むコンペティション部門の全15作品や各種企画が発表された。(黃信維撮影)
台湾映画特集、新作はすべて女性監督 台湾語映画70周年の復元版も上映 ワールドフォーカス部門では、ユニクロが支援するディスプレイスメント・フィルム・ファンドによる難民女性監督5人の作品が披露されるほか、ユーセフ・シャヒーン監督の生誕100年特集も上映される。
さらに、台湾文化センターとの共催による台湾特集では、新作がすべて女性監督の作品であることが発表された。
台湾語映画誕生70周年を記念したオープニング上映では、初期の代表作の復元版が上映されるなど、台湾映画が大きな存在感を示す。
日本映画クラシックス部門では、成瀬巳喜男や増村保造作品の復元版、日活ロマンポルノ55周年特集、溝口健二監督の「滝の白糸」デジタル復元版が上映される。
アニメーション、女性映画人、ユース企画も充実 アニメーション部門では、川尻将由、西村培、夏目真悟、門脇康平各監督の国内作品や海外作品、実写ドキュメンタリー「ウォーキング・イズ・アニメーターズ」が上映される。
吉村愛、渡邉こと乃、永岡智佳ら女性アニメーション監督に焦点を当てたシンポジウムも実施される。
ウィメンズ・エンパワーメント部門では、台湾の撮影監督ユー・ジンピン氏を招いたトークイベントを開催。ユース部門では、TIFFティーンズ映画教室の10周年特別企画が実施される。
黒澤明賞に呉美保監督とモハマド・ラスロフ監督 黒澤明賞には、社会の片隅に生きる人々を描いてきた日本の呉美保監督と、イランのモハマド・ラスロフ監督が選出された。
エシカル・フィルム賞の審査委員長には磯村勇斗氏が就任し、新設された川喜多かしこ映画文化賞には映画評論家の秦早穂子氏が選ばれた。
台湾・金門島で撮影 池田暁監督「スタッフの9割以上が台湾人」 会見後半では、中島健人氏と日本映画の監督陣による質疑応答が行われた。
映画祭期間中にしたいことについて中島氏は、キャスティングプロデューサーや監督との談義を通じ、映画祭の魅力を発信したいと語った。
作品の舞台裏について池田監督は、金門島での撮影は飛行機での移動が必要だったものの、ロケ自体はスムーズだったと説明。スタッフの9割以上が台湾人で、その優秀さから多くを学び、国際共同製作の広がりを感じたと、台湾との強い連携について語った。
三島監督は、コロナ禍を経て歴史や社会をあらためて見つめ直した、作家性の強い作品が増えたと指摘。日本の技術スタッフが長年にわたり積み重ねてきたものに、日本映画の底力を感じると述べた。
中島氏も、祖父が出演した映画「風の又三郎」に触れ、日本映画の繊細な描写は海外からもリスペクトされていると称賛した。
山本監督は、韓国と日本を舞台に、きれいな景色だけでなく、日常の道や橋など生活に近い部分を切り取ることが作品の強さにつながると語った。
中島健人らが語る「映画祭での作品の選び方」 映画祭での作品の選び方について、池田監督は「はしごできる時間で適当に選んで意外な出会いを楽しむ」、三島監督は「役者の顔写真や直感を信じる」、中島氏は「味わえなかった青春を求めてラブストーリーを選ぶ」、山本監督は「評判を知らない作品を2本以上観て、合わさった時に生まれる感覚を楽しむ」と、それぞれのアドバイスを送った。