日本政府が巨額の支援を続ける国策半導体メーカー、ラピダス(Rapidus)をめぐり、2ナノメートル半導体の量産開始を前に、早くも海外展開の構想が浮上している。
自民党半導体戦略推進議員連盟の山際大志郎会長は、ロイター通信のインタビューで、ラピダスは「現時点では奇跡的に計画通り進んでいる」と述べた。2ナノの量産に成功すれば、将来の米国での株式上場や、米国での生産も選択肢になり得るとの考えを示した。
米国は、台湾積体電路製造(TSMC)が大規模な投資を進める市場でもある。TSMCの米アリゾナ州への投資は当初の120億ドルから段階的に積み増され、今年7月には2ナノ以下の工場4棟を増設する1000億ドルの追加投資を表明し、総額は2650億ドルに達した。ラピダスが将来、本格的に米国へ進出すれば、世界の最先端半導体の生産能力が米国に集中する流れは一段と鮮明になる。
ラピダスの計画総額は7兆円超
ラピダスは2022年に設立された。現在は北海道千歳市の工場「IIM-1」で試作を進めており、2027年度後半に2ナノの最先端ロジック半導体の量産開始を目指している。
日本政府は今年の追加支援を経て、ラピダスへの研究開発委託費が累計で約2兆3500億円に上るほか、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)を通じて2500億円を出資した。
ラピダスが経済産業省に提出した事業計画によると、これらは必要資金の一部にすぎない。2ナノ世代の研究開発から量産までには4兆円超、1.4ナノなど後続世代にはさらに3兆円以上の投資が必要とされ、残りの資金は民間からの出資や銀行融資で賄う必要がある。
今年の重点は、量産技術の開発と歩留まりの向上、そしてPDK(プロセス・デザイン・キット)の正式リリースだ。PDKは、顧客がラピダスの製造プロセスに合わせて半導体を設計する際に必要となる設計ルールや設計情報をまとめたもの。
ラピダスは2025年度に先行顧客へ評価版のPDKを提供しており、今年の正式リリースは、顧客側の設計・検証も量産段階に向けて動き始めたことを意味する。
試練はすでに「2ナノを作れるか」から、「安定的に、大量に、低コストで生産できるか」へと移っている。
2ナノ量産ではTSMCが約2年先行
TSMCの2ナノプロセス「N2」は2025年10~12月期に量産が始まり、今年4~6月期にはウエハー売上高の3%を占めた。
改良版の「N2P」は今年後半に量産予定で、「A16」は今年後半に量産準備を整える。今年4月に公表された最新の技術ロードマップでは、A16の量産時期は2027年とされている。
ラピダスの2ナノ量産目標は2027年度後半で、量産開始の時期だけを見れば、TSMCが約2年先行する。
米国展開での差はさらに大きい。TSMCのアリゾナ第1工場は2024年10~12月期に4ナノ半導体の量産を始め、その後も工場の増設を続けている。一方、ラピダスにとって米国展開は、2ナノの量産に成功した後に検討される選択肢の一つという段階にとどまる。
1980年代の「敗戦」から再挑戦する日本
日本は1980年代、世界の半導体市場の約半分を占め、とりわけDRAMで強さを誇った。
その後、日米半導体摩擦や、産業の主戦場がロジック半導体に移ったこと、半導体の設計と受託生産(ファウンドリー)を分ける水平分業モデルの台頭などを背景に、世界シェアは低下を続けた。
山際氏はこの歴史を日本半導体の「敗戦」と位置づける。だからこそ今回は当初から米国企業と連携し、ラピダスの2ナノ技術も米IBMと共同で開発している。
山際氏はまた、政府は今回、産業が軌道に乗る前に途中で支援を打ち切ることはせず、最後まで取り組むと強調した。
インタビューで山際氏がラピダスに示した期限は具体的だ。来年の今ごろまでに量産体制を築き、半導体が実際に量産されている姿を市場に示すことだという。
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編集:梅木奈実 (関連記事: マスク氏の「テラファブ」構想、TSMCへの挑戦となるか テスラが台湾で半導体人材の採用強化 | 関連記事をもっと読む )












































