【インタビュー】なぜ熊本で地震が相次ぐのか TSMC熊本工場の立地と台北「300年断層」を地質学者が分析

2026-08-11 15:46
台湾大学地質科学系の名誉教授、陳文山氏。(写真/張瀞文撮影)
台湾大学地質科学系の名誉教授、陳文山氏。(写真/張瀞文撮影)

台湾大学(台大)地質科学系の名誉教授、陳文山氏の研究室を訪ねると、台湾の地層構造について語るその表情には、科学に対する情熱と厳密さが今も感じられた。

1981年に台大で教鞭を執り始め、2022年に退職するまで、40年以上にわたって研究を続けてきた。台湾各地の山や谷を歩き、自ら岩石試料を採取するとともに、断層の活動履歴を分析するため、放射性炭素年代測定(炭素14年代測定法)を先駆的に導入した。

学界では台湾の断層研究における「年代測定の父」とも呼ばれる。陳氏自身はユーモアを交えながら、「台湾の断層は、ほぼすべてこの手で触ってきた」と笑う。

最近、熊本で再び地震が発生し、台湾と日本の双方で関心が高まっている。同じ地域でなぜ相次いで地震が起きるのか。台湾で「護国神山」と呼ばれる台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に工場を設けたことは、リスク管理の面で地質学的にどのような意味を持つのか。

さらに台湾に目を戻せば、台北盆地の地下には長期間活動しておらず、地震の発生周期が明らかになっていない断層が存在する。こうしたリスクに台湾社会は科学的にどう向き合い、根本的な防災策を講じるべきなのか。台湾メディア『新新聞』は陳氏にインタビューし、地震と断層を巡る疑問について話を聞いた。

熊本地震を「場所」だけで見てはいけない 地質学者が見るのは断層

​熊本で地震が起きると、「熊本では数年前にも大きな地震が起きたのに、なぜまた地震が起きるのか」と疑問に思う人も少なくない。これについて陳氏は、地震は特定の「断層」と結びついており、単一の「行政区域」と結びついているわけではないと説明する。

「人々は都市名で地震を見ることに慣れているが、地質学者が見るのは断層線だ」

陳氏によると、台湾の陸上には30~40本を超える活断層があり、日本ではさらに複雑で100本以上に上る。それぞれの断層は独立して応力を蓄積している。

ある断層で大地震が発生すれば、その断層に長期間蓄積されてきたエネルギーが一度に放出される。一方、同じ地域の地下に複数の断層が存在すれば、別の断層がずれ動くことで、「同じ場所で頻繁に地震が起きている」ように見えるという。

TSMCは24日、日本の熊本県にて過半数株式を保有する製造子会社Japan Advanced Semiconductor Manufacturing, Inc.(JASM)の開所式を開催した。(TSMC提供)
台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に工場を設けたことから、台湾では熊本地震への関心が一段と高まっている。(資料写真/TSMC提供)

陳氏は、地震で放出されるエネルギーを理解する上で重要となる「マグニチュード」についても説明した。

マグニチュードが1違えば、例えばM6とM7では、放出されるエネルギーに約33倍の差が生じる。2違うM5とM7では、33の2乗となり、その差は1000倍を超える。

「普段からM5程度の小さな地震が多く起きれば『エネルギーを放出』して、大地震を防げると考える人も多いが、これは科学的には全く成り立たない」

陳氏によると、小規模な地震が放出するエネルギーはM7以上の大地震と比べて極めて小さく、大地震を防ぐための予防的なエネルギー放出にはならないという。
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台湾はプレートの「衝突」、日本では「沈み込み」

日本と台湾はいずれもプレートが収束する地域に位置するが、台湾では主にプレート同士の「衝突」が起きているのに対し、日本では南海トラフなどプレートの「沈み込み」が多くみられる。地殻が圧縮されることで、陸地には多くの断層が形成される。

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