中国による台湾への軍事的圧力が強まるなか、日本の国会では台湾との関係強化を目指す議員の連携が活発化している。中国出身で、現在は連立与党の日本維新の会に所属する石平参院議員はこのほど、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の単独インタビューに応じた。
石平 氏は、超党派の国会議員らと日本版「台湾関係法」の起草を進めており、すでに初稿が完成したと明らかにした。今後、各党の議員から意見を聴いて修正を重ね、遅くとも来年の通常国会で正式提出することを目指しているという。
日本の安全保障をめぐっては、参院外交防衛委員会での質疑で自ら先陣を切り、長年の安全保障政策の柱である「非核三原則」の見直しを提起する意向も表明した。周辺の核保有国による脅威を直視すべきだと訴えている。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影)
中国の制裁は「勲章」 石平氏「全く無意味な笑い話」 昨年9月、中国外務省から制裁対象に指定され、中国国内の資産凍結や入国禁止措置を受けたことについて、石平氏は「全く無意味な笑い話だ」と一蹴した。
過去には、米国のマルコ・ルビオ国務長官(当時は上院議員)や古屋圭司衆院議員らも中国から同様の制裁を受けたが、そもそも中国国内に資産を持っていないと指摘。ルビオ氏についても、その後トランプ大統領に随行して中国を訪れた際、中国側は阻止できなかったと述べた。
「私自身、中国に資産があるはずもない。仮にあったとしても、中国政府による資産凍結は財産権を侵害する違法行為にすぎず、むしろ横暴を極めるならず者政権の本質を浮き彫りにしている」と批判した。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影) 石平氏にとって、中国からの制裁はむしろ「勲章」のようなもので、日本政界での知名度や存在感を高める結果になったという。
今年9月に台湾を訪れた際には、同じく中国から制裁対象とされている呉釗燮・国家安全会議(NSC)秘書長と面会し、「制裁を受けた者同士でクラブを作ろう」と冗談を交わしたと明かした。
日本の同僚議員にも「対中批判をもっと頑張れ」と発破をかけているといい、「今や日本で中国に対抗することは幅広い民意の支持を得ており、主流となっている。中国から制裁を受ければ、次の選挙は心配無用だ」と笑顔を見せた。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影)
「スパイ防止法がないのは異常」 国家情報局設立は「始まりにすぎない」 国内の法整備をめぐって、石平氏は、日本にいまだ「スパイ防止法」が存在しないのは極めて異常だと指摘した。
高市政権下で国家情報局が設立されたことについても、「あくまで始まりにすぎない」との認識を示した。
スパイ防止法を円滑に推進するには、中国政府による日本国内での秘密警察やスパイ活動の実態が日本国民の目に触れることが、かえって法案成立への追い風になるとの考えも示した。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影) 石平氏は、国家安全保障の観点から、この法案に国会内で反対する議員はそれほど多くないとの見方を示し、今後数年で必ず実現すべき課題だと位置づけている。
日本版「台湾関係法」の初稿完成 来年通常国会への提出目指す 石平氏は日台関係の実質的な進展について、今年行った2度の訪台を振り返った。
今年1月には、中国から制裁を受けた直後に単独で台湾を訪問。「中華人民共和国には入国できなくても、中華民国には入国できる」ことを行動で示したとし、これは台湾と中国が互いに隷属していないことを示す「動かぬ証拠」だと説明した。頼清徳総統も当時、この行動を高く評価したという。
9月初旬には、6月に設立された4党派の議員で構成する超党派議員連盟「台湾海峡の平和と安定を考える会」の訪台団の一員として台湾を訪れた。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影) 石平氏によると、4日間の滞在中、頼総統をはじめ、顧立雄国防部長(国防相)、呉釗燮秘書長を表敬訪問したほか、外交部や立法院(国会)も訪れ、王定宇・立法院外交及び国防委員会召集委員らと踏み込んだ意見交換を行った。
一連の会談を通じ、防衛、国際政治、そして「台湾有事」への対応をめぐり、日台は従来のタブーを乗り越え、より緊密に連携する必要があると痛感したという 。
米国には台湾との断交後も正常な交流を支える法的基盤として「台湾関係法」がある一方、同じ法治国家である日本には同様の法律がなく、それが日台交流の障壁になっているとも指摘した。
日本維新の会の石平参院議員。中国軍の大規模な粛清を踏まえ、台湾侵攻をめぐる弱点を分析するとともに、超党派で進める日本版「台湾関係法」の初稿完成と通常国会への提出方針を明らかにした。(黄信維撮影) このため訪台団は、米国の台湾関係法に相当する日本版「台湾関係法(日台関係法)」の制定を国会で推進する方針を打ち出した。
石平氏は今回、「我々の法案の初稿はすでに出来上がっている」と最新の進捗を初めて明らかにした。
詳細については現時点では公表できないとしつつ、今後は初稿をもとに各党派の国会議員へ法案の意義を説明し、意見聴取と修正を重ねながら、最大公約数となる支持を取り付けたい考えだ。
10月開会の臨時国会への提出は時間的に間に合わない可能性があるため、遅くとも来年1月に召集される通常国会での正式提出を目指すとしている。
在台邦人約2万人 平時から日台の協力メカニズムを 石平氏は、台湾に暮らす約2万人の邦人の保護や災害時の協力、台湾海峡の安定のためには、日台間で日常的かつ恒常的な協議・協力のメカニズムをあらかじめ構築しておく必要があると強調した。
その制度を担保する日本側の法律を早急に整える必要があるという。
連立与党の一員として、日本の防衛力強化にも強い使命感を抱いていると語った。
「非核三原則」見直しを提起へ 中国・北朝鮮・ロシアの核脅威を指摘 党の公式方針ではないものの、石平氏は参院外交防衛委員会での質疑で自ら先陣を切り、「非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)」の見直しを正式に提起する考えを明らかにした。
石平氏は、中国、北朝鮮、ロシアという核保有国に囲まれた日本の安全保障環境を挙げ、「ならず者国家に囲まれている」と強い表現で危機感を示した。
「核兵器の役割は抑止にある。自らが持たなければ、他国から核で恫喝され、いじめられるだけだ」と述べた。
対中政策についても、中国は共産党独裁の「ならず者国家」であり、国内で意図的に反日感情をあおって国民を洗脳し、日本への軍事的脅威となっている現実を直視すべきだと主張した。
自民党の対中姿勢を批判 維新は「しがらみなく中国に譲歩しない」 自民党内にある伝統的な「政経分離」や中国への配慮を重視する路線に対し、連立政権の一翼を担う維新の会の参院議員として、政府の対中抑止政策をどのようにより強固なものへと導くのか。
本紙の質問に対し、石平氏は「自民党の多くの議員は企業・団体献金を受けている手前、財界の意向を気にして中国に妥協しがちだ。いわば『金をもらえば頭が上がらない』状態だ」と厳しく指摘した。
これに対し、維新の会は結党当初から企業・団体献金を全面禁止しているとして、「我々にはいかなるしがらみもない。中国の圧力に屈して譲歩することは絶対にない」と強調した。
石平氏はまた、1980年代には80%の日本人が中国に好感を持っていた一方、現在では状況が逆転し、80%が反感を抱いているとの認識を示した。
「今や日本の政界で堂々と親中を公言できる者はいない。日本国民はすでに覚醒しており、今こそ声を大にして防衛力の強化と中国の脅威への対抗を求めるべき時だ」と語った。
台湾侵攻は容易ではない 「台湾人に守る決意があれば大丈夫」 中国の内情に詳しい石平氏は、中国による台湾侵攻の可能性についても自身の見方を示した。
台湾に対して常に警戒を怠らず、防衛力を高め続けるよう促す一方、「過度に心配する必要はない」と語った。
ロシアによるウクライナ侵攻を例に挙げ、「核大国のロシアでさえ、天然の要害がない平原での戦いで4、5年たってもウクライナを落とせていない」と指摘した。
そのうえで、台湾と中国大陸の間には幅100キロ以上の台湾海峡という天然の障壁があり、軍事力も開戦前のウクライナより強力だと強調した。
石平氏はさらに、中国人民解放軍の内部には「致命的な弱点」があるとの見方を示した。習近平政権下で進められた軍の大規模な粛清によって、実戦経験や能力のある高級将校の多くが投獄されたと指摘した。
こうした状況を踏まえ、石平氏は「空母から戦闘機、戦車、潜水艦に至るまで、調達時の汚職や腐敗により深刻な品質問題を抱えている可能性が高い」と分析した。
「台湾人に自国を守り抜く固い決意さえあれば、台湾は大丈夫だと思う」と力を込めた。
TSMCは台湾の「護国神山」 封鎖なら「世界が許さない」 石平氏はまた、台湾には「護国神山(国を守る神の山=台湾経済の柱)」と呼ばれる台湾積体電路製造(TSMC)があると指摘した。
仮に習近平国家主席が台湾を封鎖し、半導体が出荷できなくなれば、米国のハイテク産業や軍需産業が真っ先に強く反発し、「世界中が許さないだろう」との見方を示した。
さらに毛沢東の言葉として知られる「戦術的には敵を重視し、戦略的には敵を軽視せよ」を引き合いに出し、十分な備えを進めながらも、中国共産党にひるむべきではないと台湾にエールを送った。
「台湾有事は日本有事」 邦人退避や民間防衛にも法的枠組みを 最後に本紙は、「台湾有事は日本有事」という現実を踏まえ、自衛隊出動の事態認定や民間防衛の仕組み、在台邦人や台湾住民の避難計画などの観点から、現行の日本法制における最大の盲点と、早急に修正すべき点について尋ねた。
石平氏は、日本の憲法や能力上の制約から、日本単独で軍隊を派遣して台湾を防衛することは法的に不可能だと率直に認めた。
最も可能性が高いのは米国との共同防衛だとし、米軍が出動すれば「存立危機事態」と日米同盟に基づき、日本も動かざるを得なくなるとの見方を示した。
将来、中国が武力行使に踏み切った場合でも、「米国が台湾を支援しないことはあり得ない」と断言した。
台湾が中国共産党に掌握されれば、米国の世界における大国としての地位とアジアの防衛線が完全に崩壊するからだという。
そのうえで、中国の習近平国家主席にとって「米国が動くかどうかわからない」という不確実性そのものが大きな圧力となり、軽率な行動を抑止していると分析した。
予期せぬ突発事態や沖縄の避難計画、在台邦人の退避に対応するためにも、石平氏は「だからこそ、我々は最初から協力メカニズムを構築し、日本版『台湾関係法』を早急に推し進めなければならないのだ」と、その必要性を改めて強調した。
石平氏プロフィール 石平(せき・へい)氏は1962年、中国四川省成都市生まれ。1984年に北京大学哲学部を卒業し、1988年に日本へ留学した。
1991年に神戸大学大学院教育学研究科で修士号を取得後、同大学院文化学研究科博士課程を単位取得退学。2007年に日本国籍を取得した。
政界入りする以前は、国際問題評論家や作家として日本の言論界で長く活動し、中国の政治体制や外交政策、日中関係を分析した著書を多数出版している。
2014年には『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』で第23回山本七平賞を受賞した。
保守的な政治姿勢をとり、長年にわたって中国共産党体制を批判するとともに、日台交流の深化と日本の安全保障・防衛力の強化を主張してきた。
2025年7月の第27回参議院議員通常選挙に日本維新の会公認で比例代表から出馬し、初当選。現在は参議院議員を務めている。