台湾CM界の巨匠として知られるワン・チャイシアン(王財祥)監督の唯一の長編作品『逃亡者狂騒曲 デジタル・リマスター版』が10月10日、東京・渋谷のユーロスペースで公開初日を迎え、主演を務めたダンサーのチェン・ホンレン(陳訇任)と、配給を手がけた映画監督のリム・カーワイが上映後の舞台挨拶に登壇した。
本作は1997年のベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された後、台湾での劇場公開がわずか数日で打ち切られ、長らく封印されてきた作品。四半世紀以上の時を経て、日本で世界初の劇場公開が実現した。
ワン・チャイシアン監督唯一の長編作品 1997年ベルリン国際映画祭に出品
本作は、台湾人監督として唯一、カンヌ国際広告賞の金獅子賞を受賞したワン監督の長編デビュー作である。
劇中では、ニューヨークに憧れを抱きながらナイトクラブで働き、殺し屋に追われる主人公のダンサーをチェンが演じている。当時の台湾社会における狂騒や世紀末の空気を、実験的かつ大胆な映像言語で描き出した。
主演チェン・ホンレン「30年前の自分」 世界初公開で来日
舞台挨拶に登壇したチェンは、「スクリーンの中にいるのは30年前の自分なので、皆さんの前に出てきていいのか迷ったが、デジタル・リマスター版の世界初劇場公開にあたり、直接会いたくて駆けつけた」と挨拶した。
続けて、「当時の台湾はどこか熱に浮かされたような狂騒の中にあった。劇場に来ることが叶わなかったワン監督の台湾の現状に対する思いが、映像を通して感じられる」と述べ、不在の監督の思いを代弁した。
200万発超のロケット花火、高速道路を封鎖 過酷な撮影現場を回想
撮影現場についてチェンは、200万発を超えるロケット花火が飛び交う実際の祭りでの撮影や、高速道路を封鎖したカーチェイスなど、危険と隣り合わせだったエピソードを披露した。
「脚本はあったが、ワン監督は即興演出を行う人だった。塗りたてのセメントに飛び込むよう指示されたり、バイクで追われるシーンでは乗り捨てて全力疾走させられたりした」と苦笑しつつ、「挑戦することが好きだったし、芸術のためならどんな犠牲も厭わないという情熱が自分にもスタッフにもあった」と振り返った。
ダンサーとしての直感を演技に 戒厳令解除後の台湾社会も映し出す
現役ダンサーとしても活動を続けるチェンは、「コンテンポラリーダンスを主軸にしていたため、監督の即興演出にも直感で応えることができた。劇中で狂暴な蟻を手にのせるシーンの恐怖感など、その場で直感的に表現したものを監督がカメラですくい取ってくれた」と語った。
また、1997年当時の台湾情勢について会場から問われると、「戒厳令解除後の急速な経済成長の一方で政治的に不安定であり、多くの人が未来を見通せずにいた。街のゴミや大渋滞など、映画の描写には社会への不満や抗議、監督の怒りが込められていたと思う」と分析した。
『逃亡者狂騒曲』全国で順次公開 大阪、京都、名古屋でも上映
最後にチェンは、「僕が観てきた台湾映画とはまったく違う、変わった映画。30年近く経ったいま、日本で多くの方に観てほしい」と呼びかけ、軽やかなポーズをとってフォトセッションに応じた。
映画『逃亡者狂騒曲 デジタル・リマスター版』は、ユーロスペースを皮切りに、11月21日から大阪のシネ・ヌーヴォ、11月28日からヌーヴォXで上映されるほか、京都の出町座、名古屋のシネマスコーレなど、全国で順次公開される。
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編集:梅木奈実













































