【インタビュー】「米国AIも突然使えなくなる」台湾IT研究機関トップが警鐘 金融・医療・半導体は他国任せにできない

2026-10-13 18:57
自律的にタスクを実行するAIエージェントについて、情報工業策進会(資策会)の范俊逸執行長は「最小権限の原則」が譲れない一線だと強調した。(顏麟宇撮影)
自律的にタスクを実行するAIエージェントについて、情報工業策進会(資策会)の范俊逸執行長は「最小権限の原則」が譲れない一線だと強調した。(顏麟宇撮影)

世界的な人工知能(AI)技術の急速な進化や地政学的な情勢変化を背景に、台湾の情報技術研究機関、情報工業策進会(資策会)の執行長(CEO)・范俊逸氏は、台湾が自主的な主導権を持つ「主権AI」を積極的に構築し、独自のAIモデル、計算能力、データ主権を完全に掌握する必要があると指摘している。中でも、金融分野における主権AIは大きな成長可能性を秘めているという。

范氏は、過去の業界では、中国に依存しないサプライチェーンに属し、米国系の先進AIモデルを採用していれば十分だという認識が一般的だったと指摘する。

しかし、最先端モデルの能力が強大すぎるとして、海外ユーザーに対する利用制限が一時的に設けられた事例もある。この出来事は、地政学的な衝突や国際情勢の変化が生じた際、たとえ友好国であってもオンラインサービスを突如として停止する可能性があるという強い警告となった。台湾が自主的なAI能力を構築しなければ、サービスや業務が停止するリスクに直面すると同氏は警鐘を鳴らす。

主権AIの中核能力はモデル、計算能力、データ主権から構成

范氏の分析によれば、主権AIの中核能力はモデル、計算能力、データ主権を網羅しており、これら三者は一体的に連動する枠組みである。

超大規模な汎用型大規模言語モデル(LLM)の構築には、極めて膨大なパラメータ規模と計算資源が要求される。台湾全体の資源が限られている現状を考慮すると、最も現実的かつ競争力のある発展ルートは、特定の産業・専門分野からアプローチすることだという。

すなわち、オープンソースの基盤モデルと台湾独自の専門データを組み合わせることで、特定の産業に特化した国産の自主的な専門モデルを学習させ、自主化という戦略目標の達成を目指すのである。

金融産業を例に挙げると、資策会は最近、デジタル発展省(数発部)および金融監督管理委員会(金管会)の支援を受け、国内の複数の大手銀行や地場のITサービス事業者と連携している。

オープンソースモデルを基盤とし、台湾の金融法規、台湾金融研訓院の教材、詐欺防止対策といった現地化された専門データを組み込むことで、台湾共通の「金融大規模言語モデル」の開発を進めている。

このモデルが完成すれば、金融従事者に精度の高い専門的なガイドラインを直接提供し、研修コストを削減できる。さらに、各金融機関がモデルを導入し、自社の特性に合わせてファインチューニング(微調整)を行うことで、信頼性が高く情報自主性を備えた独自のエコシステムを構築することが可能となる。

情報工業策進会(資策会)の執行長・范俊逸氏(中央)は21日、紡織産業総合研究所の協理・陳宏恩氏(左1)、生物技術開発センターの執行長・李財坤氏(左2)、中華経済研究院の院長・連賢明氏(右2)、食品工業発展研究所の所長・廖啓成氏(右1)と協力覚書(MOU)に署名し、法人シンクタンクAIナレッジプラットフォームを立ち上げた。(資策会提供)
情報工業策進会(資策会)の范俊逸執行長(中央)は、紡織産業総合研究所の陳宏恩協理(左端)、生物技術開発中心の李財坤執行長(左から2人目)、中華経済研究院の連賢明院長(右から2人目)、食品工業発展研究所の廖啓成所長(右端)とMOUを締結し、法人シンクタンク向けAI知識プラットフォームを立ち上げた。(資策会提供)

長期的な発展戦略を巡り、范氏は台湾が国家の「重要インフラ(CI)」分野、すなわち半導体、金融、製造、医療、交通などの重要拠点において、主権AIの配備を優先的に進めるべきだと提言している。 (関連記事: 【コラム】GPUの次は「光」が主戦場に 台湾サプライチェーンが挑むAI「光速戦争」 | 関連記事をもっと読む )

国内の学術研究機関が汎用型大規模言語モデルの開発を同時並行で進めている一方で、混乱が許されない重要な垂直領域に政府と産業界が優先して資源を集中させることが求められる。

最新ニュース
MAPPA15周年展が東京・有楽町で開催 「呪術廻戦」「進撃の巨人」など23作品、のんが魅力語る
ふるさと納税の「地場産品基準」改正、自治体の9割が影響を実感 さとふる調査で判明
米軍採用の「ロボット犬」、台湾で生産へ 台湾食品大手・義美などの合弁会社が海外ライセンス、中科院と銃塔も開発
台湾・林佳龍外相が4度目のポーランド訪問 「TEEMA科技園区」年末MOUへ、ワルシャワで講演
過去最多24酒蔵が集結 虎ノ門ヒルズでスパークリング日本酒の祭典「awa酒 week」開催へ
「AI特区は松山空港移転を待つ必要ない」民進党の高雄市長候補、アジア新湾区への誘致訴え
中国、台湾と国交維持のパラグアイ・ベリーズ閣僚を制裁 国交樹立国の高官では初
【台湾世論調査】20代の約6割「米国だけに頼れない」 中国との主体的交渉も支持
トランプ氏「ロシア・ウクライナ、エネルギー停戦で合意」 ゼレンスキー氏「初耳」、ロシア軍は攻撃継続
清水エスパルス、岡崎慎司氏の引退試合を2027年1月に開催 OB集結の「大同窓会」に
TSMCだけではない台湾の半導体力 フランスが研究開発から連携、「台湾抜きでは成り立たない」
【寄稿】外国人材を「安い労働力」とみなす経営からの脱却 国籍を問わず選ばれる企業へ
「小さな部品一つでも中国由来は不可」 台湾・和大工業、米顧客が求める「非レッド」供給網に対応
「中国の台湾侵攻は可能性低い」米シンクタンクで広がる見方 浮上する米軍「第2列島線」後退論
横浜市観光協会、市内12事業者と記念日需要を開拓 初のファミリー向け企画など新プランを14日より予約販売開始
YOASOBI、NHK朝ドラ主題歌「咲き誇れ」を10月14日に配信リリース決定 ジャケット写真も公開
【全文】台湾国慶節で韓国瑜立法院長が異例の原稿外発言 大リコール批判、「偽りの民主主義、真の独裁と見られてはならない」
【独自】NY発Merci Dema、創業者Melly氏と湊大知氏が原宿で語る創作哲学 台湾進出に意欲
【北京観察】ロシアの抗ペスト研究所職員が「原因不明の肺炎」で死亡 1カ月前には中ロが越境感染症演習
「日台は今こそ防衛産業協力を」 岩田清文・元陸上幕僚長、ドローン連携で世界市場開拓を提言
台湾で数日で上映終了、幻の映画『逃亡者狂騒曲』が約30年越しに日本で世界初公開
中国人の6割が台湾問題の平和解決を支持 「武力統一反対」37%、米調査で浮かぶ対台湾世論
蒋万安・台北市長が松山空港移転を提唱 空軍基地も併設、台湾国防相は慎重姿勢
王美花・台湾前経済相、TSMC・ソニー協業に「大きな意義」 日台半導体は「奪い合いでなく補完」
公明・西田幹事長「台湾の中国返還を認めた」 保守派「歴史の歪曲」と反発
【独占インタビュー】櫻井よしこ氏「日台は協力しなければ共に生き残れない」 POWERR Asiaで中国レアアース依存脱却へ
フェデラー氏、16歳の錦織圭に「将来のスーパースターになると確信」 引退イベントで才能を絶賛
錦織圭、引退イベントでフェデラー氏らと夢の競演 「コートを共有できて本当に幸せ」
錦織圭、引退後初の合同会見 フェデラー氏が絶賛「存在しなかった天井を突き破った」
錦織圭、引退会見で現役生活を「50点」 GS未制覇に悔い「優勝トロフィーを見せたかった」
高市政権「実質GDP1.8%」は実現可能か カッツ氏が成長戦略を「幻想」と批判
幻のニホンオオカミを追う 1905年の絶滅後も続く目撃談、秩父に残る「山の守護神」信仰
日本の10代、死因1位は自殺 遺族と映画監督が訴える「ただ隣に寄り添う」支援
【単独インタビュー】石平参院議員「中国の制裁は勲章」 日本版「台湾関係法」初稿完成、来年通常国会提出へ
【ドローン神話⑦】「台湾には世界最高のサプライヤーがいる」 米防衛テック企業が続々進出する理由
【ペットと祈る台湾④】おみくじ解説はAI、線香も爆竹もなし 台北の「ペット最優先」無人廟
【ドローン神話⑥】台湾ドローンは「中国依存」を減らせるか 電池・モーターは造れてもレアアースが壁
【ペットと祈る台湾③】愛犬と一緒におみくじを 台北・寵佑宮で体験する台湾式参拝、世界中から願い集まる
台北市、東京で新観光キャンペーン発表 福士蒼汰がナビゲーター「迷子もデートになる」
第77回NHK紅白歌合戦、司会は芦田愛菜・堺雅人・二宮和也・鈴木奈穂子アナ 芦田は初、二宮は9年ぶり
【コラム】GPUの次は「光」が主戦場に 台湾サプライチェーンが挑むAI「光速戦争」
万博で22万食超「ワンハンドBENTO」が復活 閉幕1周年イベントで実演販売
ミャクミャク×セレッソ大阪が再コラボ ピンク×白の限定グッズ第2弾を発売
【ドローン神話⑤】なぜ米国は台湾のドローン産業に注目するのか 「護国神山」への道を阻む3つの供給網リスク
【ペットと祈る台湾②】台北のペット廟、11の神々に「担当」あり 雷が怖い子には観音、賢すぎるボーダーコリーには文殊