【寄稿】外国人材を「安い労働力」とみなす経営からの脱却 国籍を問わず選ばれる企業へ
人手不足が企業の存続を揺るがす
人手不足は、もはや一部の業界だけの問題ではない。東京商工リサーチによると、2026年度上半期の「人手不足」倒産は240件に上り、年度上半期として過去最多となった。働き手を確保できないことが、企業の存続を揺るがしている。
少子高齢化が進む日本で、外国人材は多くの企業にとって欠かせない存在になりつつある。一方、特定技能「外食業分野」では、受け入れ見込数に近づいたことを受け、在留資格認定証明書の交付が一時停止された。政府が次に停止する分野を予告しているわけではないが、今後、介護や飲食料品製造業などでも同様の措置が取られる可能性はある。外国人材の採用を前提に事業を続ける企業は、制度の運用が変わる事態も考えておかなければならない。
人手不足の負担は暮らしにも広がる
人手不足の影響は、現場だけでなく暮らしにかかる費用にも及びうる。飲食料品製造業で人材の確保が難しくなれば、食品の生産や価格にも影響する可能性がある。介護の担い手が不足すれば、必要なサービスを受けにくくなったり、介護にかかる費用や保険料をどう支えるかが問われたりする。
最低賃金の引き上げも続くなか、企業は人件費や原材料費の上昇をどう吸収するのか、難しい判断を迫られている。
外国人材の受け入れは、人手不足を補い、企業の事業やサービスを支えてきた。しかし、採用を人件費を抑える手段として捉え、低い賃金に依存する経営が続けば、賃上げや生産性向上への転換を遅らせることにもなりかねない。問題は外国人労働者そのものではなく、低コストの労働力に依存し続ける企業のあり方にある。
企業の退出を「新陳代謝」で済ませてよいのか
人手不足やコスト上昇で事業を続けられなくなった企業の退出を、「社会の新陳代謝」と呼ぶことはできる。だが、それだけで済ませてよいのだろうか。中小企業への支援に加え、事業の縮小や廃止に直面する従業員の再就職や生活をどう支えるのかも考える必要がある。
国籍を問わず、人材に選ばれる職場づくりへ
私はかつて、外国人労働者として日本のサービス業の現場で働いていた。現在は社会保険労務士・行政書士として、企業側から外国人雇用に関わっている。働く側と受け入れる側、両方に接してきたからこそ、制度や数字だけでは見えない職場の実情を、この目で見てきた。
日本人の採用が思うように進まず、外国人材の採用に踏み切る企業は少なくない。しかし、日本人の採用がうまくいかなかった理由を振り返らず、賃金や労働時間、教育体制、職場の人間関係を見直さなければ、外国人材を迎えても同じ問題が繰り返される。国籍が変われば、人が定着するわけではない。働く人が辞めていく職場には、その職場なりの理由がある。
企業に必要なのは、採用枠の動向を追うだけでなく、人材が定着する職場づくりと、生産性を高める業務の見直しを進めることだ。外国人採用を職場全体を変えるきっかけにできるか。安い人材に頼る発想から離れ、国籍を問わず人材に選ばれる企業へ変われるか。簡単な正解はないが、企業と社会の双方に問われている。
*筆者の丸山翔氏は、日本の社会保険労務士、行政書士。
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