フランス内務省によると、24日、生活費の高騰や教育予算をめぐる問題に抗議するデモに全国で約41万人が参加した。労働総同盟(CGT)は約80万人が参加したとしている。内務省が25日に発表した最終集計では1314人が拘束された。高校の教員不足などをきっかけに始まった生徒たちの怒りは、1カ月以上にわたって社会の各層に広がり、任期終盤を迎えたマクロン大統領に重い試練を突きつけている。
再び数十万人が街頭に AP通信が仏内務省の集計として伝えたところによると、24日(土)のデモ参加者は全国で約41万人と、前週の55万人を下回った。このうちパリだけで11万人に上った。一方、労働総同盟(CGT)は全国で約80万人、パリで25万人が参加したとしている。
内務省によると、同日の抗議行動は計289件に上った。ヌニェス内相は24日夕方の時点で拘束者が1000人近くに達し、さらに増えるとの見通しを示していた。その後、内務省が25日に発表した集計では、全国の拘束者は1314人となった。
2026年10月24日、フランス東部ストラスブールで、生活費の高騰に抗議するデモに参加する人々。(AP通信) 政府は当日、警察官や憲兵など約7万人の治安要員を配置し、ヘリコプターや装甲車も投入した。仏紙ルモンドによると、この規模は前週より約1万人多い。政府はパリのデモ行進ルートを市南東部の周縁に限定し、ルーブル美術館など大型美術館は臨時休館、アートフェア「アート・バーゼル・パリ」も週末のイベントを中止した。
仏週刊誌レクスプレスがルモンドの報道として伝えたところでは、パリのデモ行進は午後2時にポルト・ディタリー(Porte d'Italie)を出発し、ポルト・ド・ヴァンセンヌ(Porte de Vincennes)に向かった。このルートは労組連合(アンテルサンディカル)との意見の相違を受けてパリ警視庁が変更したもので、労組側は当初、バスティーユ広場からナシオン広場までのルートを求めていた。
AP通信によると、リヨン、ニース、モンペリエなどの都市では当日、集会が禁止され、労組はこうした禁止措置が憲法で保障された表現の自由に反すると批判した。左派「不服従のフランス(LFI)」のジャンリュック・メランション氏はパリのデモの先頭に立ち、マクロン大統領に「譲歩」を求めた。「その後、彼に残されているのは退場という道だけだ」と述べた。
パリは比較的平穏も、終点付近で衝突 AP通信によると、パリのデモは当初、平穏に進んだが、パリ東部の終点付近で覆面姿の一部参加者が警察に物や花火を投げつけ、警察は大量の催涙ガス、音響弾、放水で応じた。
レクスプレス誌によると、衝突は午後5時45分ごろ、パリ20区のエレーヌ・ブシェ高校(lycée Hélène Boucher)前で最初に起き、警察は催涙ガスと放水を使用した。パリ警視庁は、午後7時ごろに500人以上の破壊行為を行う集団がクール・ド・ヴァンセンヌ(Cours de Vincennes)で警察を襲撃したとしている。
仏テレビ局BFMTVは、平和的にポルト・ド・ヴァンセンヌに到着した多くの人が、警察と一部の暴力的な集団との衝突に巻き込まれたと伝えた。
ヌニェス内相は午後7時半、「現時点で拘束者は1000人近くに上り、この数はさらに増える」と述べた。警察の介入により今回は公共施設への攻撃はなく、デモ隊は予定されたルートを最後まで行進し、警察が危険と判断したグループは市中心部から締め出された。
仏メディアは、約7万人の治安要員の配置が、前週のような大規模な略奪や破壊の再発を防ぐ一因になったと指摘している。
2026年10月24日、フランス南東部リヨンで、生活費の高騰に抗議するデモでフランス国旗を掲げる参加者。(AP通信)
マルセイユからニースまで、各地で衝突 南部マルセイユでは、警察の推計で1万7000人、CGTの推計で10万人がデモに参加した。レクスプレス誌によると、マルセイユ当局は当初デモの禁止を発表していたが、のちに例外的に許可した。
ルモンド紙は午後3時半、数万人が街頭に出たと報じ、その後、警察とデモ隊がにらみ合い、警察が催涙ガスを使用した。BFMTVによると、マルセイユ5区では宝飾店2店が略奪された。
トゥールーズ当局によると参加者は2万6500人で、1人が手に重傷を負った。当局は負傷の原因について「現時点では不明」としている。
リヨンでは市中心部の広い範囲で集会が禁止された。レクスプレス誌によると、前週の10月17日に150以上の商店や観光案内所が破壊されたためだという。
市南部のジャン・マセ広場(place Jean-Macé)には約1000人が集まったが、午後に警察の催涙ガスで解散させられ、午後7時ごろにはガラス回収箱に火がつけられた。ボルドーのブルス広場では、数百個の敷石がはがされ、警察に向けて投げつけられた。
BFMTVによると、南部ニースでは極右系とみられる約50人が平和的なデモ参加者を襲撃し、AP通信は地元当局の話として11人が拘束されたと伝えた。
AP通信が仏メディアの報道として伝えたところでは、警察はリヨン、クレルモンフェラン、ストラスブール、ボルドーで催涙ガスを、ニースとナントで放水を使用した。レクスプレス誌は、リール、リモージュ、レンヌでも警察が催涙ガスを使ったとしている。
極右と位置づけられる「国民連合(RN)」はこの日、中部オルレアンで2日間の党大会を開幕した。仏週刊誌ヌーヴェル・オプスによると、同地では1万3000~2万6000人が反極右のデモ行進を行い、平穏に終わった。
抗議はなぜ止まらないのか 抗議が収まらない理由はいくつかある。生徒たちの要求に今なお具体的な回答がないこと、生活費の高騰と予算削減が労働者や労組、「黄色いベスト運動」の支持者をも巻き込んだこと、そして政府が強硬な手段で秩序維持を図っていることが、新たな論争を呼んでいることだ。
同様の抗議は欧州の他国でも起きている。ロイター通信によると、10月17日にはベルギー、ポルトガル、イタリアでも規模の小さい抗議があり、イタリア・ミラノのデモは暴動に発展した。
生徒たちの要求には、いまだ答えがない 米誌タイムや仏メディアのフランス・アンフォによると、抗議の発端は9月17日だった。パリ近郊クレテイユ(Créteil)のサン=テグジュペリ高校の生徒たちが同日、校門を封鎖し、資源や人手の不足、過密学級に抗議した。机さえ足りない教室もあったという。
タイム誌によると、仏教育省の統計では、2024~25年度、公立中等学校の授業時間のほぼ1割が実施されなかった。
同誌がAFP通信の報道として伝えたところでは、生徒たちは「1クラス35人で、夏は教室が35度まで暑くなる。トイレは足りず、雨漏りもする」と訴えた。
わずか2週間で抗議はパリ郊外から全国に広がり、9月末までに影響を受けた学校は500校を超えた。
AP通信によると、抗議はその後、学校の枠を超え、生徒たちは教育予算の増額を、労働者は生活費負担の軽減を求めるようになった。
生徒たちは10項目の要求を掲げており、高等教育の定員を25万人分増やすこと、大学入学選抜システム「パルクールシュップ(Parcoursup)」による選抜の廃止、奨学金の月200ユーロ上乗せ、公的学生寮の家賃凍結などが含まれる。
2026年10月24日、フランス東部ストラスブールで、生活費の高騰に抗議するデモでフランス国旗を掲げる参加者。(AP通信)
AP通信によると、マクロン氏は23日に高校生の代表と面会した。生徒代表によると、マクロン氏は大学入試制度の改革を約束したが、生徒代表は政府が具体策を発表するまで抗議を続けるよう呼びかけた。
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは、生徒たちの最も直接的な要求は学級規模の縮小、教員の補充、校舎の改善、授業負担の軽減であり、国が教育と機会を提供できるのかという若者の疑念も映し出していると報じた。
16歳の娘と一緒にパリのデモに参加した46歳の教師ベネディクト・ピティオンさんはAP通信に「街頭に出たこの若者たちの声は届いていない。親として、教師として、私は彼らの側に立つ」と語った。
米エール大学の研究者ニコラス・ベクラン氏はタイム誌への寄稿で、フランスのエリート主義的な能力主義の神話が、資源の乏しい学校の生徒たちを極めて不利な立場に置いていると指摘した。
生活費と国家財政 フランスの労働者が街頭に出る背景には、家計の苦しさがある。
AP通信が仏国立統計経済研究所(INSEE)のデータとして伝えたところでは、9月のエネルギー価格は前年同月比21.3%上昇し、全体のインフレ率は3.1%だった。
別の参加者、ルイ・ルドゥー=クサタール(Louis Ledoux-Xatard)さんは「30歳になる前に、こんなにたびたび街頭に出ることになるとは思わなかった」と語った。
アルジャジーラによると、フランスの政府債務の対国内総生産(GDP)比は115.6%に上る。米経済誌フォーチュンはこの比率を約119%とし、第2次世界大戦直後以来の高水準で、国債利回りも24年ぶりの高水準に上昇したと指摘している。
アルジャジーラによると、仏政府が提出した2027年予算案には、540億ユーロ(約608億ドル)の歳出削減と増税策が盛り込まれ、政府は赤字削減に不可欠だと説明している。
公務員の基本給算定の基準となる指数の凍結も含まれ、労組はこれで4年連続の凍結だとしている。
一方、AFP通信は、約430億ユーロの歳出削減などの措置で、赤字を今年の見込みの5.4%から5%に引き下げる内容だと伝えている。
月額1260ユーロを超える年金はインフレに完全には連動しなくなり、医療費も51億ユーロ削減される。学校での抗議は、予算案に反対する全国の公共部門ストとも重なり、教職員の給与や公共サービスの資源をめぐる問題が生徒たちの要求と一体化した。
フォーチュン誌は、国際政治リスク調査会社ユーラシア・グループのラーマン氏の話として、フランスの教育支出はEU平均を上回るものの、その4分の1以上が退職教員の年金に充てられていると伝えた。
学生・労組・「黄色いベスト」が合流 政府にとって「最悪の結果」 アルジャジーラによると、前週土曜(10月17日)のデモでは、生徒、労組、そして2018年に生活費や経済的不平等への不満から起きた「黄色いベスト運動」の支持者が合流した。
英エディンバラ大学で現代史を教えるエミール・シャバル教授はアルジャジーラに対し、今回のデモは黄色いベスト運動から続く「一連の抗議の必然的な帰結」だと指摘した。
黄色いベスト運動の不満は経済的な圧迫に加え、マクロン氏のような中道候補が当選しやすいフランスの大統領制への不満にも根差していたという。
シャバル氏は、公立学校の荒廃に対する生徒たちの怒りが、より広範な社会的要求と結びついたことは「フランス政府にとって最悪の結果」だと述べた。
社会学・政治学者のドナテッラ・デッラ・ポルタ氏はアルジャジーラに対し、生徒たちは不平等、公共投資の削減、民主的権利といったテーマで、より広範な動員を牽引しており、軍事化ではなく社会福祉に予算を使うよう求めていると指摘した。
「彼らは戦争を望んでいない。違う未来を望んでいる」と述べ、この運動をガザをめぐる若者の動員とも結びつけた。欧州各国のデモ現場ではパレスチナの旗も掲げられている。
強硬な取り締まりが新たな争点に 生徒、労組、黄色いベスト運動の支持者による抗議に対し、仏政府がまず打ち出したのは治安対策だった。
セバスチャン・ルコルニュ首相は、同日1200人が拘束され、警官150人が負傷したと明らかにした。
ロイター通信によると、ルコルニュ氏は暴力の責任を極左勢力と犯罪者に帰し、政府は左派「不服従のフランス」を名指ししたが、同党は否定した。
ただ、アルジャジーラは、暴力に関わったのは大規模な動員のごく一部にすぎないと指摘している。
メランション氏は政府が高校生を弾圧して衝突を激化させたと非難しており、政府が抗議を治安問題として扱うのか、それとも背後にある不満に正面から向き合うべきなのかという論争にもつながっている。
フランスでは10月17日に大規模なデモが行われ、労組側の推計で約80万人が参加した。一部地域では放火や略奪、警察との衝突も発生した。(AP通信) 10月17日にフランス全土で行われたデモでは、一部で激しい衝突や破壊行為が発生した。パリのヴォルテール大通りでは複数の店舗が破壊され、商品が略奪された。(中央社・曽依璇記者撮影、パリ) ロイター通信とアルジャジーラによると、学生運動が始まって以降、負傷した警官は900人を超えた。タイム誌は10月16日、学生運動ではこれまでに6000人以上が拘束され、その多くは未成年で、のちに釈放され起訴されなかったと報じている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、一連の抗議で15歳の少年が警察のスタングレネード(音響弾)で片手を失い、14歳の少年が至近距離から発射された催涙弾を受けて顎を骨折したとして、子どもに対する警察の過剰な武力行使を非難した。デモは全体としては平和的だったとも指摘している。
社会運動を研究するリスボン大学研究所のグヤ・アッコルネロ氏はアルジャジーラに対し、これまでの対立が抗議者と警察の間に長期的な緊張関係を残しており、「非破壊的な手段をとっても、若者たちは暴力的に鎮圧されている」と語った。
一方、ヌニェス内相は、大規模な治安要員の配置によって大規模略奪の再発を防いだとの立場だ。
ドイツの公共放送ドイチェ・ヴェレによると、10月17日の暴動後、マクロン氏は「正当性のない団体」によるデモを禁止すると表明した。労組は次の行動日を11月5日に設定した。
政治の空転、行き場のない怒り エディンバラ大学のシャバル教授によると、2024年の国民議会選挙後、どの陣営も絶対多数を得られず、その後の政治の膠着が「社会の不満をくみ取れる政党や運動が存在しない環境」を生んだ。
この分断は、政府が歳出、税制、公共サービスをめぐって安定した合意を築くことを難しくし、抗議者の間には政権が代わっても政策が本当に変わるのかという疑問も広がっている。
ベクラン氏はタイム誌で、マクロン氏が2年間で5人の首相を交代させ、議会も分裂状態に陥っていると指摘した。
シャバル氏はまた、今回の抗議はマクロン氏にとって「大きな打撃」だと述べた。
若々しい活力と改革されたフランスを約束したマクロン氏だが、「自らの政治的構想を明確に示せず、共感に著しく欠けるというイメージ」によって傷ついたという。
最大の受益者はルペン氏か この混乱によって誰が政治的に利益を得るのかについて、アルジャジーラが取材した専門家の見方は分かれている。
英ノッティンガム大学でフランス史・政治を研究するポール・スミス准教授は、極右政治家と位置づけられるマリーヌ・ルペン氏が恩恵を受けるとの見方を示し、「受益者は1人しか見当たらない。それはルペン氏だ」と述べた。混乱はメランション氏の大統領選にも打撃を与えかねないと指摘した。
一方、シャバル氏は、極右勢力が必ず利益を得ると決めつけるべきではないとくぎを刺しつつも、フランスでは混乱への恐れが歴史的に保守派や中道派に有利に働いてきたとし、1968年の「五月危機」の後も同様だったと述べた。
ルペン氏は前週土曜、X(旧ツイッター)で、これらの要求を「正当な社会的要求」と表現する一方、抗議者は「極左に乗っ取られている」と投稿した。
AP通信によると、国民連合は政府が国民を守れていないと非難し、怒りをルペン氏への票に変えるよう呼びかけた。
アルジャジーラが伝えた専門家の見方によると、極右勢力は、メランション氏のように新自由主義や資本主義の構造に原因を求めるのではなく、この怒りを移民問題へと向ける可能性があるという。
フランス政府が公表している日程によると、2027年大統領選は第1回投票が4月18日、決選投票が5月2日に予定されている。候補者には、社会秩序を回復できることと、抗議運動の背景にある生活条件をめぐる問題に応えられることの双方が問われることになる。
マクロン氏は23日、パリ近郊トラップ(Trappes)で起きた銃撃事件を「人種差別的なテロ」と呼び、被害者は「肌の色や、そうみなされた宗教」を理由に狙われたと述べた。
AP通信によると、銃撃犯は車内から3カ所で発砲し、1人が死亡、12歳の少女を含む少なくとも5人が負傷した。死亡したのは26歳のアマチュア総合格闘家だった。容疑者は逮捕され、国家反テロ検察庁(PNAT)が捜査を引き継いだ。