長崎県の佐世保港。商船三井クルーズが運航する「MITSUI OCEAN FUJI(以下、三井オーシャンフジ)」がその優美な船体を接岸させると、海上自衛隊や米海軍の艦船が並ぶ、日本屈指の軍港ならではの力強い光景が広がる。
乗客たちが降り立ったこの地で待っていたのは、商船三井クルーズが企画した地域密着型の寄港地観光ツアー「佐世保の逸品~三川内焼と梅ヶ枝酒造~」である(寄港地観光ツアーは複数用意されており、本ツアーはそのうちの一つ)。

このツアーの真髄は、寄港前後に船内で開催されるイベントと密接に連動している点にある。寄港前の船内レクチャーで講師の西巻顯子氏と小松早苗氏が説いた「器は料理がまとうドレスである」という美学、そして三川内焼の歴史が、実際の現場でどのように息づいているのかを五感で確かめる旅が幕を開けた。

三川内焼の歴史を学ぶ「うつわ歴史館」 将軍家への献上品「七人唐子」の美意識
一行がまず訪れた佐世保市の「うつわ歴史館」では、約1万6000年前にさかのぼるとされる世界最古級の土器から、いかにして精緻な磁器へと進化を遂げたのか、その壮大な変遷をたどった。
特に注目を集めたのは、かつて一般庶民には使用が許されなかった「唐子絵(からこえ)」の物語だ。描かれる唐子の数によって献上先や用途が厳格に区別され、最高峰の「七人唐子」は朝廷や将軍家への献上品として焼かれたという。

磁器の街として知られる台湾の「鶯歌(イングー)」を知る台湾人乗客にとっても、この独自の等級制度と徹底した美意識の高さは驚くべきものだった。
また、隣接する「三川内焼美術館」に展示された、400人もの唐子が描かれた巨大な絵皿は、職人たちの執念と誇りの結晶であり、近年、体験型観光を求める多くの外国人観光客も、その圧倒的なスケールと本物の歴史に感嘆の声を漏らしていた。

400年以上続く三川内焼の伝統 平戸松山窯で触れる職人技と白磁の美
続いて訪れたのは、代々「平戸染付」の技術を継承する名門窯元「平戸松山窯」である。
工房では、真っ白な「天草陶石」を砕いて作った陶土を使い、へらで押し広げながら、驚くほど薄く繊細な器を形作っていく職人技が披露された。

1300度の高温で17時間かけて焼成することで、薄さと強度を両立させる工程や釉薬へのこだわりなど、船上で学んだ知識が、職人の息遣いや窯の熱気を通じて鮮やかな実感へと変わっていく。
軍港として近代化を歩んできた佐世保のもう一つの顔として、こうした繊細な手仕事が400年以上にわたり脈々と受け継がれている事実は、訪れる人々に深い感銘を与えた。
創業239年の「梅ヶ枝酒造」へ 国登録有形文化財の酒蔵で伝統の酒造りを体験
旅の締めくくりは、天明7年(1787年)創業、239年の歴史を誇る「梅ヶ枝酒造」である。 (関連記事: 商船三井クルーズの新客船「MITSUI OCEAN SAKURA」が就航 2隻体制で新たな船旅を提供へ | 関連記事をもっと読む )
国の登録有形文化財となっている重厚な酒蔵に一歩足を踏み入れると、江戸時代から続く厳かな空気が流れている。新酒の完成を告げる「杉玉」が軒先に下がり、麹菌や酵母といった微生物の力を借りた伝統的な酒造りの工程を見学した。














































