日本記者クラブで7月30日、放送大学名誉教授の高橋和夫氏による記者会見が開催された。2月28日にイスラエルとアメリカがイランに対する奇襲攻撃を開始してから5ヶ月が経過し、6月17日には戦争終結に向けた覚書に署名したものの、ホルムズ海峡を巡る対立から戦闘が再開し、停戦は事実上有名無実化している。
10月27日に総選挙を控えるイスラエル、11月3日に中間選挙を控えるアメリカ、そして体制維持を図るイランそれぞれの思惑が交錯する中、中東のパワーバランスの崩壊と再生をテーマに見解が示された。現地時間の28日には、開戦後初めてネタニヤフ首相とトランプ大統領の会談も行われている。
イラン陣営が相次ぎ後退、イラン本体は高い反撃能力を維持
高橋氏はまず、ガザでの戦闘開始以降、イランを中心とする陣営が崩壊しつつあると指摘した。イランの影響力拡大は、自らの積極的な動きというよりも、イラクのフセイン政権崩壊やシリア内戦など、周辺の混乱に伴う周辺情勢の変化による側面が強かったと分析した。
しかし、ガザ紛争によりハマスが打撃を受け、続いてレバノンのヒズボラもイスラエルの大攻勢を受けた。通信機器への細工や最高指導者ナスララ氏ら幹部の殺害、ミサイル網の破壊により、ヒズボラは事実上戦えない状態に陥った。
さらに、ヒズボラの支援を失ったシリアのアサド政権も反政府勢力の蜂起によって崩壊し、イラン陣営は次々と大きな打撃を受けている。
一方で、直接攻撃の対象となったイラン本体については、予想以上の強靭な反撃能力を持っていると評価した。イスラエルとアメリカによる40日戦争において、イランは地下のミサイル施設を維持し、極超音速で軌道を変える最新鋭のミサイルやドローンを駆使して反撃を行っている。
この背景には、革命体制下で国民の教育水準が向上し、多数の女性を含む高い技術力を持つ人材が育成されていることがあると指摘した。また、指導層が暗殺されてもシステムが回る重層的な指導体系や、各州の軍司令部が独自に戦える分散型の防衛体制が機能しており、イラン側の抵抗力が極めて高いことが浮き彫りとなった。
湾岸諸国が安全保障を多角化、パキスタンとトルコが台頭
米国を中心とする安全保障の枠組みにも大きな変化が生じている。2019年のサウジアラビア石油施設への攻撃や今回の事態を通じて、湾岸諸国は巨額の武器を購入してもアメリカが確実には守ってくれないという現実を突きつけられた。
その結果、中国の仲介によるイランとの関係改善や、イスラエルとのアブラハム合意など、安全保障の依存先を多様化させる動きが加速している。
しかし、イスラエルがカタールでハマス幹部の殺害を狙った爆撃を行ったことなどを受け、強硬なイスラエルへの警戒感も高まっており、新たな安全保障のパートナーとしてパキスタンとトルコの存在感が急浮上している。 (関連記事: 米・イラン攻撃激化、ブレント原油が一時90ドル突破 パーム油も約1カ月ぶり高値 | 関連記事をもっと読む )
パキスタンは中東周辺で唯一のイスラム教徒が多数派の核保有国であり、アメリカや中国とも良好な関係を保ちながら、今回の米伊交渉でも仲介役を果たした。人口の2割を占めるシーア派の存在もあり、イランとの関係も深い。













































