「脱原発」から約40年、イタリアが原子力回帰へ 電気代高騰と景観問題が後押し

2026-08-03 12:11
イタリア・ローマのコロッセオ遺跡。(写真/AP通信)
イタリア・ローマのコロッセオ遺跡。(写真/AP通信)

国内のすべての原子炉を閉鎖してから約40年、イタリアは欧州連合(EU)でも最大級となるエネルギー政策の転換に踏み出そうとしている。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』と『AP通信』によると、電気料金の高騰やロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢を背景としたエネルギー安全保障上の危機に加え、風力発電設備や太陽光パネルが自然景観を変えることへの反発が高まっている。

こうしたなか、ジョルジャ・メローニ首相率いる右派政権は、次世代の小型モジュール炉(SMR)を中心とした原子力発電の再導入に向け、法整備を加速させている。

ドイツの再生可能エネルギー大手RWEは、イタリアに高さ200メートルの大型風力発電設備7基を建設する計画を進めている。これに対し、環境保護団体フレンズ・オブ・ジ・アース・イタリアのモニカ・トンマージ代表は、計画の阻止に向けて活動している。

トンマージ氏の祖母は、建設予定地に近いウンブリア州の歴史都市オルヴィエートに暮らしている。トンマージ氏は地元住民らとともに風力発電事業に反対する一方、イタリアのエネルギー問題を解決する手段は原子力にあると考えている。

トンマージ氏は『フィナンシャル・タイムズ』に対し、かつては再生可能エネルギーによってイタリアが輸入化石燃料への依存から脱却できると信じていたと語った。

しかし現在では、再生可能エネルギーの導入目標を達成するためには、田園地帯を風力発電設備や太陽光パネルで覆うことになると認識するようになったという。

「それは私たちの景観と文化的アイデンティティーをゆがめる。脱炭素化が必要なら、最良の技術を使わなければならず、原子力もその一つだ。今は1970年代や80年代ではなく、原子力技術も変化している」と強調した。

2026年6月18日、ローマから南へ約60キロに位置するラティーナ原子力発電所。同発電所はイタリアで最も早く商業運転を開始した原発の一つであり、1963年に稼働したが、チェルノブイリ原発事故後の1987年に実施された国民投票を受けて停止された。(AP通信)
2026年6月18日、ローマの南約60キロに位置するラティーナ原子力発電所。同発電所はイタリアで最初期に商業運転を開始した原発の一つで、1963年に運転を開始し、チェルノブイリ原発事故後の1987年に行われた国民投票を受けて運転を停止した。(写真/AP通信)

『フィナンシャル・タイムズ』によると、イタリア政府は数十年前、国民の強い反対を受けて国内のすべての原子炉を閉鎖した。しかし現在、トンマージ氏のように原子力発電の復活を求める人は少なくない。

イタリアは輸入天然ガスへの依存度が高く、企業や家庭が負担する電気料金は欧州平均を大きく上回っている。メローニ首相率いる右派連立政権は原子力回帰を政策の柱に据え、エネルギー問題の抜本的な緩和を目指している。

環境団体関係者からも原子力支持の声

​環境保護団体イタリア・ノストラのトスカーナ支部代表、フランチェスコ・プラテージ氏は、原子力発電は限られた敷地で、広大な土地を必要とする風力発電や太陽光発電と同等の電力を生み出せると指摘する。農業や景観に及ぼす影響も、再生可能エネルギーより小さいとの見方を示している。

プラテージ氏の妻、アレッサンドラ・フェニッツィ氏は、かつて原子力発電に反対票を投じたが、現在では「私たちは当時、間違っていた」と認めている。
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現地に住む英国人アーティストのジェームズ・P・グラハム氏はフィナンシャル・タイムズに対し、イタリアが長年にわたりフランスから原子力由来の電力を輸入する一方、国内では原子力発電に反対してきたことについて、「完全なダブルスタンダードだ」と批判した。さらに原子力発電は「現時点で唯一安定したベースロード電源だ」との考えを示した。

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