中国AI経由で機微情報が米AI企業へ 台湾の防空12拠点、Claudeで攻撃シミュレーション

2026-09-16 15:21
中国空軍の空中給油機「運油20」が戦闘機「殲16」に空中給油を行う。(中国軍網)
中国空軍の空中給油機「運油20」が戦闘機「殲16」に空中給油を行う。(中国軍網)

米人工知能大手Anthropicはこのほど、154ページに及ぶ脅威インテリジェンス報告書を公表し、中国のAI事業者を経由して人民解放軍関連を含む機微情報が流出していた実態を明らかにした。中国の複数のAI事業者が裏側で、大量の中国人ユーザーからの質問をリアルタイムで米国のClaudeモデルへ振り分けて処理させており、その結果、人民解放軍関連の重要情報や成都市内の監視カメラ映像、さらにはロシア国防省に関連する政府機関のデータベースで使用可能なログイン情報までもが、意図せず米企業のサーバーへ送り込まれていた。

この報告書はまた、中国軍および国防科学研究機関に関係する利用者が、米国の先端AIを軍事目的に利用している実態も明らかにした。人民解放軍軍事科学院(AMS)との関連が示された中国国内のユーザーがClaudeを利用して電子戦ソフトウェアを開発し、台湾のパトリオットミサイルや天弓ミサイル陣地などを対象とした防空制圧作戦をシミュレーションしていたケースや、中国の国防産業メーカーに関係するユーザーが同システムを使って対魚雷火器管制システムの仕様や技術案を作成し、米海軍の関連技術と比較していたケースも含まれる。

Kimiの迂回処理が国家安全保障上の穴に

『ロイター』と『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると、一連の情報流出は、中国のAIスタートアップが利用者に知らせないまま行っていた迂回的な運用に端を発している。Anthropicは報告書の中で、対話型モデル「Kimi」を開発する月之暗面(Moonshot AI)を名指しし、同社がユーザーに知らせないまま、約5000の偽アカウントからなるプロキシネットワークを構築。大量のユーザーの質問をAnthropicの上位モデルであるClaude Opusへ転送して処理させ、米側が生成した回答を中国のユーザーへ送り返していたと指摘した。

この報告書は、中国の軍事関連ユーザーにとっての情報管理上の盲点も浮き彫りにした。Anthropicが人民解放軍と関係している可能性が高いと評価した中国のユーザーは、監視カメラ(CCTV)の映像をアップロードし、映像に映る特定人物の「挙動に異常がないか」の分析をAIに求めていた。

このユーザーは中国製AIに質問していると認識していたが、実際には機微な映像がAnthropicの米国サーバーへ転送されていた。Anthropicの脅威インテリジェンス責任者ジェイコブ・クライン(Jacob Klein)氏は、Anthropicや同業他社が同様のことを行えば、大きなスキャンダルになるとの認識を示している。

さらに、成都市内の数百台の監視カメラから得られた人物の行動データや、複数の中国人エンジニアがシステム開発時に入力した企業内部のログイン認証情報も、同じ経路を通じて流出していた。 (関連記事: AI開発に異例の「減速論」 制御不能リスクに警鐘、アモデイ・アルトマン・マスク氏が足並み OpenAIは26年IPO見送り 関連記事をもっと読む

同様に振り分け処理を行っていた中国のスタートアップ「深度求索」(DeepSeek)では、ロシア軍に関わる情報まで流出していた。報告書によると、ロシア国防省の関連機関に関する複数の問い合わせがDeepSeekから米側のシステムへ転送され、その中にはロシア政府内部のデータベースで使用可能な「有効なログインIDとパスワード」も含まれていた。これにより、ロシア軍に関わる機密情報が米企業側のサーバーに流れ込む形となった。

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