トランプ氏の融和策に習近平氏はなぜ「食いつかない」? 中国が時間稼ぎを選ぶ4つの戦略計算

2025年10月30日、韓国・釜山で会談した習近平中国国家主席(左)とトランプ米大統領。(写真/ホワイトハウス公式サイトより)
2025年10月30日、韓国・釜山で会談した習近平中国国家主席(左)とトランプ米大統領。(写真/ホワイトハウス公式サイトより)

今年2度目となる米中首脳会談が9月下旬に控えている。トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰した第2期政権で、ワシントンの対北京姿勢は大きく方向転換した。人権や体制間競争を前面に出さず、台湾問題では台北側が「緊張を高めている」と非難し、さらには米中が対等に並び立つ「G2」構想まで持ち出した。しかし、ホワイトハウスが融和姿勢を示しても、北京は一貫して慎重な姿勢を崩していない。

かつてホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の中国部門ディレクターを務め、現在はブルッキングス研究所ジョン・L・ソーントン中国センター所長を務めるライアン・ハス(Ryan Hass)氏は、習近平氏のこうした慎重姿勢は、冷静な戦略計算に基づくものだと指摘する。北京から見れば、トランプ氏の融和姿勢は自己矛盾をはらみ、その予測しにくい政策運営も米国の長期的な国策を代表するものではない。習近平氏が今求めているのは歴史的な雪解けをもたらす合意ではなく、避けがたい長期対決に備えて「時間を稼ぐ」ことだ。ワシントンのシンクタンクによるこの分析は、大国が拮抗する段階にある米中双方の思惑を読み解いている。

ハス氏は9日に発表した論考で、トランプ氏が第2期政権で習近平中国国家主席に対し、極めて異例の譲歩と融和姿勢を示し、台湾や人権問題でも従来より抑制的な姿勢を取っていると指摘した。しかし北京は「餌に食いつく」(taking the bait)どころか、強い警戒を維持している。

ハス氏によれば、北京はトランプ氏の政策にみられる自己矛盾や予測の難しさを見抜いており、二国間関係が抜本的に改善するとは期待していない。むしろ現在の「不安定な平穏」を利用し、将来の米国からの長期的な圧力に耐えられる戦略的な力を蓄えるため、時間を稼ごうとしている。

米国の従来路線を覆すトランプ氏 融和姿勢の一方で残る矛盾

ハス氏の分析によると、1949年の中華人民共和国成立以来、歴代の米大統領の多くはイデオロギー的な色彩を伴いながら、中国をより開放的で自由、民主的な方向へ変化させようとしてきた。歴代の中国共産党指導者は、こうした姿勢に強く反発してきた。

しかし「トランプ2.0」は、米国が数十年にわたり取ってきた姿勢を大きく覆した。体制改革について北京にあれこれ注文をつけず、人権や信教の自由を前面に掲げることもなく、中国を独自の慣習を持つ「文明」としての相手と位置づけ、さらに米中が対等に並び立つ「G2」構想まで持ち出した。

トランプ氏はさらに、中国に対する軍事・技術面での封じ込めを実質的に緩和した。米企業による中国への高性能半導体チップ販売に関する規制を緩和し、その条件として米政府が売上の一部を受け取る仕組みを導入したほか、空母打撃群やミサイル防衛システムを東アジアから中東へ移し、中国周辺の軍事的圧力を大きく軽減した。 (関連記事: 【コラム】台湾を米中の「戦利品」にしてはならない トランプ・習近平会談を前に問う「中国は何を求めるのか」 関連記事をもっと読む

国防総省の姿勢にも変化がみられる。ヘグセス国防長官(Pete Hegseth)は今年のシャングリラ会合で台湾に一切言及せず、コルビー国防次官(Elbridge Colby)は8月、マニラで地域戦略について説明した際、中国への言及を避けた。国防副次官補のアルバロ・スミス(Alvaro Smith)氏に至っては、中国人民解放軍建軍99周年の演説で、米中の軍事関係が改善していると公然と評価した。

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