米中首脳会談、月末にワシントンで開催か 「東南アジアのサイバー詐欺対策で協力を」米専門家が提言 中国公安部はこれまでに、プリンス・グループ会長の陳志氏をカンボジアから移送する様子を収めた映像を公開している。(画像/環球時報のX公式アカウントより)
中国の習近平国家主席は9月末、米国の首都ワシントンを訪問し、トランプ米大統領と再び首脳会談を行う可能性があり、次回会談で何が議題となるのかをめぐり、さまざまな臆測が広がっている。軍事や中台関係、人工知能(AI)などの主要議題に加え、米シンクタンクからは、米中両国が東南アジアの詐欺問題への対応でより幅広く協力すべきだとの提言も出ている。詐欺対策は米中双方にとって共通の利益でもあるという。
米中は詐欺取り締まりで協力できるか 米シンクタンク「アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)」は8月、同研究所の元広報・プログラム担当官ブライアナ・エントウィスル(Bryanna Entwistle)氏による 調査研究 を発表した。
報告書は、東南アジアで規模約1000億ドルに上るサイバー詐欺産業を分析し、米中両国にとって数少ない協力の機会を提供していると指摘した。しかし、これまで戦略的な相互不信と利害の衝突により、両国間の実質的な協力は妨げられてきた。
報告書はいくつかの過去の事例を挙げ、並行して圧力をかけ、共同で行動した場合に米中がどのような成果を上げられるかを説明している。
エントウィスル氏は、プリンス・グループ創業者兼会長の陳志氏に対する制裁と逮捕、2026年4月に行われたドバイの詐欺拠点に対する合同摘発、さらに米連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル(Kash Patel)長官と中国当局者との間で最近設けられた直接の連絡ルートなどを詳しく分析している。
ただ、エントウィスル氏は、こうした国際的な協調行動はこれまであくまで「例外」であり、「常態」ではないと指摘する。それでも今後、北京とワシントンにはサイバー詐欺産業への共同対処を進める戦略的利益があるとみている。
エントウィスル氏は、現在のミャンマー、カンボジア、ラオスなどにおける大規模な詐欺活動の起源をたどり、当初は主に中国国民を標的としていたものが、現在では欧米人へと標的を広げている経緯を分析した。
さらに、北京とワシントンの法執行の手法を比較し、「法執行がそれぞれ別々に行われ続ければ、犯罪集団は詐欺対策が最も手薄な地域の被害者へと標的を移すだけだ」と指摘。両国がサイバー詐欺産業に効果的かつ戦略的に対処するための提言も示している。
2026年5月14日、北京の天壇で記念撮影するトランプ米大統領と中国の習近平国家主席。(写真/AP通信)
米中双方の「詐欺取り締まり」にも弱点 エントウィスル氏は香港生まれで、インドのムンバイとシンガポールで育った。米アイビーリーグの名門ダートマス大学(Dartmouth College)で歴史学の優等学士号を取得し、政治学とアジアの社会・文化・言語を副専攻とした。アジア財団とカナダ・アジア太平洋財団から、外交政策分野の新進気鋭のリーダーとして評価されたこともある。
「中国と米国の国民はいずれも、主にミャンマー、カンボジア、ラオスなどを拠点とする複雑なサイバー詐欺の主要な標的となっている」という。
北京がミャンマー国内の詐欺拠点に対する摘発を進めるにつれ、この産業は標的を西側へと移し始めた。2024年には、中国と関連する犯罪集団による米国の被害額は年間100億ドルに達した。
ワシントンは、制裁、起訴、資産の押収、詐欺に使われるオンラインインフラの遮断などを含む省庁横断的な対策を進めている。
しかし、米国が東南アジアで行動できる範囲には限界がある上、この産業そのものが「モグラたたき」のように根絶しにくい性質を持つため、米国の対応は依然として難航している。
プリンス・グループ会長の陳志氏が以前所持していたカンボジアのパスポート。(画像/OCCRP公式サイトより)
米中は今後どう協力すべきか エントウィスル氏の分析によると、習近平氏とトランプ氏の間では今年中に少なくともあと2回、首脳会談が行われる可能性があるという。
米国がこれまでフェンタニル問題を二国間協議の議題に組み込み、一定の成果を上げてきたことを踏まえ、エントウィスル氏はサイバー詐欺産業をめぐる議論を首脳レベルに引き上げることを「優先事項とすべきだ」と主張する。
ただ、報告書は、北京とワシントンの間には制度的な枠組みと外交上の信頼が不足しており、他国との協力が極めて重要になると指摘している。
エントウィスル氏は、第三国を仲介役として活用するとともに、米国が保有する情報を中国との交渉に活用すべきだと提言し、「米国は貴重な情報資源を保有している」と述べた。
エントウィスル氏は、サイバー詐欺産業が中国当局の法執行能力が及びにくい国々へと拡大する中、米国はこうした情報資源を活用して優位に立てるとみている。
報告書はまた、米国が既存の金融情報共有ルートを十分に活用すべきだと指摘している。現在、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)や中国の反マネーロンダリング監視分析センターなどを通じた反マネーロンダリング・金融情報共有の枠組みは、十分に活用されていないという。
さらにエントウィスル氏は、米国が制裁や起訴を通じて経済的影響力を行使し、北京が行動を取らないことに伴う政治的・評判上のコストを引き上げることで、中国に対し陳志氏のような詐欺組織の幹部を米国に引き渡し、裁判にかけるよう促すことができると提言している。
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