中国で15日、「国務院関於出境入境管理的規定」(国務院の出入国管理に関する規定)が正式に施行され、出国時の安全審査および技術輸出規制が大幅に強化された。台湾の対中政策を統括する大陸委員会(陸委会)の沈有忠副主任委員は14日、「中国に進出する台湾企業(台商)」、「台湾企業の幹部」、「半導体などに関わるハイテク人材」、「一般公務員」、「特定の宗教関係者」の5タイプの人物の場合、中国への渡航は高いリスクを伴うと指摘した。ただ沈氏は、中国に対する渡航警戒レベルは現段階で「オレンジ(不要不急の渡航を避ける)」を維持し、引き上げる考えはないと語った。 (関連記事: 中国の新出入国規則、台湾人にも適用の恐れ 半導体人材ら「5つの高リスク層」に警戒 | 関連記事をもっと読む )
陸委会が発表する「(中国)大陸地区および香港・マカオへの渡航の関する警戒メカニズム」の説明によると、中国・香港・マカオへの渡航警戒レベルは、灰色(注意喚起)、黄色(渡航の安全に特別注意し、渡航の是非を検討)、オレンジ、赤(渡航中止勧告)の4段階が設定されている。
陸委会による過去の中国渡航警戒レベル引き上げ履歴一覧
| 引き上げ時期 | 警戒レベル | 引き上げ理由 | 背景と影響 |
|---|---|---|---|
| 2003年 3月~4月 | 赤 / オレンジ | SARSの感染爆発 | 重症急性呼吸器症候群(SARS)中国の広東省や北京市などで感染が急速に拡大し、情報開示も不透明だったため、台湾政府はリスクの高い省・直轄市に対して初めて「極めて高いリスク」の警戒を発令し、渡航の自粛を呼びかけた。 |
| 2020年 1月21日 | オレンジ | 武漢における新型コロナウイルスの感染爆発 | 新型コロナウイルス初期の地域封じ込め武漢市で原因不明の肺炎が発生し、ヒトからヒトへの感染が確認されたため、陸委会は他国に先駆けて武漢市の渡航警戒レベルを「オレンジ」(不要不急の渡航を避ける)に引き上げた。 |
| 2020年 1月25日 | 赤 | 湖北省全域の封鎖 | 湖北省の感染制御不能と都市封鎖(ロックダウン)中央流行疫情指揮センターの方針に合わせ、湖北省(武漢市を含む)を最高レベルの「赤」(渡航中止、速やかな退避を勧告)に引き上げ、中国のその他の省・市を「オレンジ」に引き上げた。 |
| 2020年 2月 6日 | 赤 | COVID-19の中国全土での大流行 | 中国全土を最高レベル「赤」に引き上げ中国全土での感染爆発および市中感染のリスクに対応するため、陸委会は中国全土(香港・マカオを含む)の警戒レベルを最高の「赤」に全面引き上げした。 |
| 2023年 7月 | 黄色 | 改正『反スパイ法』の施行 | コロナ収束後の引き下げも、イエロー警戒を維持感染状況の落ち着きに伴い警戒レベルの引き下げが検討されたが、中国が新版『反スパイ法』および『対外関係法』を施行し、台湾人が拘束・尋問される事案が増加したため、陸委会は「イエロー」の維持を決定した。 |
| 2024年 6月27日 | オレンジ | 中国共産党による「台湾独立処罰22か条」の発表 | 国家安全法規の権限拡大と身の安全に関するリスク中国共産党が台湾独立派を処罰する意見書を発表し、さらに「国家秘密保護法」などが大幅に改正された。台湾人が入国時に不当に拘束・留置される事案が多発したため、陸委会は中国・香港・マカオの警戒レベルを「オレンジ」(不要不急の渡航を避ける)へ引き上げることを発表した。 |
| 2026年 9月14日 | オレンジ(維持) | 『出入国管理規定』の施行 | 出入国新規則による電子データ検査の権限付与中国は2026年9月15日に国務院令第841号に基づく出入国新規則を施行し、国境検問所に対しスマートフォンやパソコンの抜き打ち検査、および秘密裏の出国制限(辺控)を授権した。陸委会はリスクを評価した上で、オレンジ警戒および中国への団体旅行禁止措置を維持した。 |
中国への渡航警戒レベル、24年にオレンジ点灯
陸委会は2024年6月27日、中国・香港・マカオへの渡航警戒レベルを「オレンジ」に引き上げ、不要不急の渡航を控えるよう勧告した。
陸委会は当時、中国・香港・マカオにおいて近年、国家安全関連の法令が継続的に新設・改正されており、中国へ渡航した台湾人が不当に拘束、留置、尋問などを受ける事案が多発していると指摘。さらに中国共産党が「法に基づき、『頑迷な台湾独立分子』による国家分裂、国家分裂扇動の犯罪への処罰に関する意見」(以下、「意見」)を発表し、台湾人の中国・香港・マカオへの渡航における身の安全が深刻な脅威にさらされていることから、台湾政府は総合的な評価に基づき、渡航警戒レベルを引き上げる必要があると判断したと説明した。
中国の「国務院における出入国管理に関する規定」
| 出国制限の対象/状況 | 適用事由と根拠(条文) | 規制手段と期限 | 重要な留意事項 |
|---|---|---|---|
| 違法な出入国者 行政拘留者 | 出入国証明書の不正取得、または不法な出入国により行政拘留処分を受けた者(第4条) | 処分の執行完了日から 6か月から3年以内の出国禁止 | 違法行為・犯罪予防の観点から、移民管理機関が直接決定する。 |
| 域外での事件関与者 国家の安全を脅かす者 | 域外で違法行為や犯罪活動に従事し、国家の安全および利益を脅かした者(第4条) | 帰国日から 6か月から3年以内の出国禁止 | 在外公館による事実確認後、居住地の省級人民政府が決定する。 |
| 技術および産業 輸出規制違反者 | 輸出規制や技術の輸出入管理に違反し、国家の産業または技術の安全を脅かす可能性がある者(第4条) | 行政決定による出国禁止 (商務省などの所管官庁が裁定) | ハイテク産業、半導体産業、および重要技術の研究開発人材に対するリスクが極めて高い。 |
| 申請の虚偽申告者 虚偽申告を行った個人・団体 | 証明書申請時に虚偽の資料提供または虚偽の陳述を行った者。虚偽の招聘状(インビテーション)を発行した団体・個人(第3条、第11条) | 証明書の発給拒否/出国禁止 さらに最高5万人民元(約115万円)の罰金 | 招へい団体および責任者は、法的責任と罰金を負わなければならない。 |
| 特別な国境管理対象 秘密裏の国境管理対象者 | 出国制限の対象として決定されており、かつ「国家の安全」または「刑事捜査」に影響を与える可能性がある者(第6条) | 事前警告なしの出国制限 (法に基づき当事者への告知を行わないことが可能) | 当事者は事前に知る術がなく、多くの場合、空港での出国審査時に初めて足止めされる。 |
| リスクの側面 | 中国側の法執行の論理とメカニズム | 陸委会が指摘する高リスク群 | 実務面の影響と自己防衛の推奨事項 |
|---|---|---|---|
| 身分認定と法律の適用 | 台湾人が「台湾居民来往大陸通行証(台胞証)」で入国した場合、中国側は「中国公民」の枠組み内と見なし、第4条の出国制限条項を適用する。 | 中国へ渡航する全台湾市民 | 台湾政府が領事保護を提供することは困難であり、出国制限を受けた際の救済手段は極めて限られている。 |
| 産業・技術安全規制 | 「国家の産業安全および技術安全」の保護を理由に、重要技術に携わる者に対して出国審査を実施する。 | 半導体・ハイテク人材 中国進出の台湾企業および幹部 | 商業トラブルや特許権の紛争、技術移転に関与している場合、輸出規制を口実に留置されるリスクが極めて高い。 |
| 電子データの抜き打ち検査 | 第3条に基づき、税関と公安はスマートフォン、パソコン、通信アプリ、クラウドバックアップの検査を要求できる。 | 過去に政治的発言を公開した者 メディア・報道関係者 | スマートフォン内に中国の政策を批判する内容や政治的に敏感な投稿、スクリーンショットが残っている場合、国家の安全を脅かすと認定される可能性がある。 |
| 政治的・敏感な身分の審査 | 特定の背景を持つ者や敏感な社会活動の記録がある者に対し、重点的な尋問や国境監視を行う。 | 現職・退職した公務員 宗教関係者およびNGO職員 | 中国渡航の必要性を慎重に評価すべきで、滞在中は中国の非公認団体との交流活動への参加を避けるべき。 |
1. 出発前の登録:陸委会の「台湾人の中国・香港・マカオ渡航動態登録システム」での旅行日程の登録を推奨。
2. 電子機器のデータ消去:スマートフォンやSNS内の政治的に敏感な投稿や写真を削除すること。初期化された予備の端末を持参することも疑いを招く可能性があるため、個人データを適切かつ無難な状態に保つこと。
3. 高リスク者の渡航評価:ハイテク産業の従事者、公務員、および過去に政治的な発言を公開した者は、中国への渡航の必要性を慎重に評価すべき。
陸委会の沈・副主任委員は14日、中国の出入国新規定をテーマとする座談会に出席し、台湾が2024年に中国への渡航警戒レベルを「オレンジ」に引き上げた主な理由は、中国共産党が「台湾独立処罰22か条」を発表したことへの対応であったと述べた。政府は、これらの規定が比較的あいまいで、台湾人の身の安全に一定のリスクをもたらすと判断したと説明した。
また沈氏は、中国では最近このような「比較的あいまい」な内容の法律が増加していると指摘し、政府として引き続き中国への渡航リスクに注意を呼びかけるものの、現段階で警戒レベルをさらに引き上げる必要はないとの認識を示した。
さらに、中国への団体旅行「禁止令」見直しの可能性について問われると、沈氏は、陸委会として交通部観光署と団体旅行に関する規範と管理について協議を続けるとした上で、現段階で解禁の予定はないと述べた。中国への渡航リスクに関する不確実性が低下しない限り、政府は関連措置について現状を維持することになると語った。
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編集:平松靖史











































