対外データ通信の99%近くを光海底ケーブルに依存する台湾で、相次ぐケーブル切断事案を受け、国家安全保障上の最重要課題として防護対策の強化が急務となっている。世界の半導体サプライチェーンの中枢を担う台湾にとって、海底ケーブルは経済と防衛を支える文字通りの「デジタル生命線」だ。
2023年に馬祖列島周辺で発生した海底ケーブルの相次ぐ切断による通信障害を契機に、台湾政府は非静止軌道衛星(低軌道・中軌道衛星)を活用した通信網の整備やマイクロ波回線の拡充、重要インフラの破壊行為に対する厳罰化、海上巡視の強化を組み合わせた多重的な通信強靱化(デジタル・レジリエンス)体制の構築を本格化させている。
国際海底ケーブルが支える台湾経済 半導体産業と国際通信の生命線
台湾は東アジアの第一列島線の要衝に位置し、日本、北米、東南アジアを結ぶアジア太平洋地域の重要な通信拠点となっている。
台湾本島には宜蘭県頭城、新北市淡水・八里、屏東県枋山、台東県大武などに海底ケーブルの陸揚げ地点があり、デジタル発展部が公表する海底ケーブルの一覧には、国際海底ケーブル16本と国内海底ケーブル11本が掲載されている。国内海底ケーブルは、澎湖、金門、馬祖などの離島と台湾本島を結んでいる。
これらのインフラは、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとするハイテク産業のデータ送受信や国際金融取引、米巨大IT企業が台湾に設置するデータセンターの通信を支えている。
仮にこれらのケーブル網が物理的、あるいは組織的に遮断された場合、台湾国内の通信がまひするだけでなく、国際的なサプライチェーンや経済活動にも深刻な機能不全を引き起こすおそれがある。
2023年の馬祖海底ケーブル連続切断 約1万4000人の通信に50日間影響
こうした脆弱性が浮き彫りになったのが、2023年2月に発生した馬祖列島周辺での海底ケーブル連続切断事案だ。
台湾本島と馬祖を結ぶ「台馬2号」は2月2日、中国漁船によって損傷した疑いがあり、わずか6日後の2月8日には、残る「台馬3号」も中国籍とみられる貨物船によって損傷した疑いがあるとされた。
2本の基幹ケーブルが相次いで切断されたことで、馬祖の住民約1万4000人の通信環境は深刻な打撃を受け、メッセージの送受信や行政手続き、医療機関との連携などに約50日間にわたって大きな支障が生じた。
台湾最大手の通信事業者である中華電信は修理船の手配を進めたものの、世界的な海底ケーブル修理船の不足などから復旧作業は難航した。3月31日に「台馬3号」の修理が完了し、馬祖と台湾本島との通信サービスは正常化したが、残る「台馬2号」の修理にはさらに時間を要した。
台湾の通信主管当局の記録によると、台湾周辺では過去数年間に数十件に及ぶ海底ケーブルの切断や損傷が発生しており、その多くは周辺海域で活動する船舶の投錨や漁業活動などによるものとされている。 (関連記事: 【海底のデジタル動脈①】国際通信の99%を支える海底ケーブル 復旧に2〜3週間、作業船の建造費は4倍超に | 関連記事をもっと読む )
意図的なグレーゾーン作戦によるものか、過失によるものかを問わず、平時であっても海底ケーブルの物理的な切断が起こり得る現実を突きつけた。













































