公益財団法人旭硝子財団は、2026年で35回目を迎える地球環境国際賞「ブループラネット賞」の受賞者記者会見を10月27日に帝国ホテルで開催した。
本年の受賞者である、環境化学物質のリスク評価と科学に基づく政策形成に貢献したリンダ・S・バーンバウム博士と、自然資本を指標化し国際的なグリーン経済の実装を牽引してきたエドワード・バービエイ教授が登壇し、受賞への思いや自身の研究成果、次世代への期待について語った。
環境化学物質のリスク評価と予防の重要性を強調
リンダ・S・バーンバウム博士(米国・1946年12月21日生まれ)は、元国立環境健康科学研究所(NIEHS)所長および元国家毒性プログラム(NTP)ディレクターを務め、環境中に残留しやすい化学物質の毒性研究を主導して国際的なリスク評価を大きく進展させた。
特に胎児期や妊娠期といった「感受性の高い時期」における内分泌かく乱物質への曝露が長期的な健康影響を及ぼし得ることを示し、脆弱な集団を保護する科学的根拠を強化した実績を持つ。
会見でバーンバウム博士は、ダイオキシンやPFASなどの残留性化学物質について、汚染発生後の除去は困難であり未然防止こそが重要であると強調した上で、科学者は論文発表にとどまらず科学的根拠を市民や政策決定者に届け、社会の仕組みを変える対話を促す責任があると指摘した。さらに、本賞を通じて環境化学物質のリスクと予防の重要性に再び国際的な関心が集まったことに謝意を示した。
エドワード・バービエイ教授は、米国・コロラド州立大学経済学部卓越教授であり、自然資本や生態系サービスの価値付けに関する取り組みを主導して政策や投資の具体的指針を示してきた。
国連環境計画(UNEP)の報告書『A Global Green New Deal (2009)』において経済復興、貧困削減、脱炭素化、生態系保護を統合した回復戦略を提示し、自然保護を経済的繁栄のための戦略的投資と位置づけたほか、貧困と環境の相互関係の分析を通じて地球環境問題への対応と社会的公正の両立に向けた道筋を開いた。
バービエイ教授は会見で受賞の栄誉を語り、「自然は私たちの経済的富と福祉の基盤である」という命題のもとで探求してきた研究成果を、学術的信頼性を保ちながら政策に直結させ、一般にもわかりやすく伝えることを重視していると説明した。
次世代への期待と国際協調の重要性を訴える
環境問題について学ぶ日本の学生や研究者に向けて、両氏は次世代の国際協調を促すメッセージを発信した。
バーンバウム博士は、21世紀の複合的な環境危機は国境を越えた多角的な協調が不可欠であるとし、科学的イノベーションを牽引してきた日本の強みを活かして先人のリーダーシップを継承・発展させ、多様なセクターとの協創を通じて解決策を提示してほしいと呼びかけた。
バービエイ教授は、経済が自然の中に包摂されている本質を理解し持続可能な道筋を示すことが次世代の責務であると指摘した。自然との共生の知恵と高度な環境・省エネ技術を併せ持つ日本が、分断の進む国際社会で環境分野の多国間協調を牽引し、持続可能性と経済発展が調和するモデルを世界へ提示することに期待を寄せた。
ブループラネット賞は、地球温暖化や酸性雨、海洋汚染など人類の経済活動に伴う地球環境悪化の修復を願い、1992年の地球サミット開催時に旭硝子財団が創設した国際賞で、名称は宇宙飛行士ガガーリン氏の言葉「地球は青かった」に由来する。
今後の日程として、表彰式典が10月28日に東京會舘で執り行われ、受賞者による記念講演会が10月29日に東京証券会館、10月31日に京都市国際交流会館でそれぞれ開催される予定である。
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