微風評》「統一支持=武統宣伝」? 台湾で揺らぐ言論の自由の境界線

大陸委員会は20日の記者会見で、「亜亜」の去年5月の動画を公開し、彼女が武力統一を煽動したかどうかは「議論の余地がない」と強調した。(台湾ネットのフェイスブック動画からのスクリーンショット)

台湾在住の中国出身の配偶者である「亜亜」(劉振亜)氏が、個人の抖音にて統一を支持する動画を投稿したことが問題視されました。台湾の人気ネットインフルエンサーによる通報を受け、台湾当局は「武力統一を宣伝した」と認定し、移民署がにより在留許可が取り消され、台湾からの退去を命じられました。20日、大陸委員会(陸委会)は記者会見を開き、亜亜氏が昨年5月に行われた中国人民解放軍の「聯合利剣─2024A」軍事演習について語った映像を公開しました。同委員会は、彼女が「武力統一を煽っているかどうかについて議論の余地はない」と強調しました。

大陸委員会は記者会見にてタブレットで問題の動画を再生し、さらに梁文傑報道官が「議論の余地なし」と明言しました。そのため、多くのメディア「亜亜氏への痛烈な反論」という見出しで報道しました。しかし、ニュースの伝え方という視点から見れば、実際にこの映像を視聴したことがある人はどれほどいるのでしょうか? 多くの人は、メディアを通じて陸委会の発表内容を知るだけであり、それによって「心証が固まり」、亜亜が「武力統一を宣揚した」ことは「議論の余地なし」と同調したものと思われます。

問題は、実際にこの動画を視聴した人が果たしてどれほどいるのかという点です。亜亜氏の発言は公に議論されるべきものなのか、それとも「議論の余地なし」と決めつけられるものなのか?この動画は、彼女の抖音アカウントに投稿されたものであり、その後、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)傘下の「台湾網」によって転載されたReels形式の短編映像です。彼女は中国の視聴者に向けて発信しており、人民解放軍の「台湾包囲軍事演習」について自身の考えを述べたものでした。特に議論を呼んでいるのは、彼女が最後に語った次の一言です。
「もしかすると、明日の朝目を覚ましたら、宝島(台湾)に五星紅旗がはためいているかもしれない。想像するだけでワクワクする。」

しかし、この一言は「武統を宣伝した」と同等なのでしょうか?2018年、民進党政権下において、ある市民が公共政策ネット参加プラットフォームにて、中国の五星紅旗を台湾で公開掲揚、展示、陳列することを禁止する刑法条文の追加を提案した。これに対し、当時の法務部は司法院釈字第509号を基に回答を行いました。「五星紅旗を掲げること自体が国家分裂を意図した行為と見なされ、それに対して刑罰を科すことは、単に言論によって国家分裂を主張しただけで最も厳しい刑罰を科すのと同じであり、中華民国憲法第23条が定める必要範囲を超えており、憲法が保障する言論の自由の趣旨に反する」と説明しました。 (関連記事: 中国人配偶者YouTuberが「中国人の夫」を台湾へ呼び寄せる?SNSで話題の「家族ぐるみ人口操作」の真相 関連記事をもっと読む

実際、アメリカの著名な学者ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)とエドワード・ハーマン(Edward Herman)は、その著書『Manufacturing Consent(合意の形成)』の中で、「報道の自由を標榜する国家においても、国家権力はメディアを通じて『政治的プロパガンダモデル』を形成している」と指摘しました。このプロパガンダの仕組みの中で、特に「反共」という意識形態と信念は、強力な「統制メカニズム」として機能し、情報を選別する「フィルター」となっていると分析しています。しかし、この「反共」のプロパガンダは、多くの国民にとって完全に正当な報道のあり方として受け入れられてしまうことが問題視されています