中国の強い反発を招いた高市早苗首相の「台湾有事」発言を受け、中国政府が日本への渡航警戒を発出した影響で、中国からの団体旅行が相次いでキャンセルされ、一部の観光地では急に静けさが戻っている。
ただ、インド太平洋戦略の専門家でジャーナリストの矢板明夫氏は、この空白は想像されるほど深刻ではなく、むしろ「おなじみの旅行客」である台湾からの訪日客が、日本の観光業にとって「頼みの綱」になりつつあると指摘している。
円安と外交的嵐が支援 台湾からの訪日需要が急増
矢板明夫氏は、台湾の人々にとって日本旅行はすでに日常の一部であり、円安が続く今は「行かない理由が見つからないほどの好機」だと指摘する。中国人観光客が急減するなかで、台湾からの旅行客の存在感はいっそう際立っているという。
同氏は旅行業界の知人の話として、日中関係が緊迫して以降、台湾からの訪日需要が「一気に跳ね上がった」と紹介。現在、日本行きの航空券は入手が難しく、多くの人気路線はすでに満席。こうした状況は少なくとも来年4月までは続くとの見方が出ている。
思わぬ外交摩擦が、逆に台湾と日本の距離をさらに縮める結果になったとの声もある。多くの日本の店舗は「台湾のお客さんが変わらず来てくれることに本当に励まされる」と語っている。
台湾人は「良質な客」 より安定し、心地よいビジネスをもたらす
日本の観光業者が台湾からの旅行客に特別な感謝を示す理由は明確だ。台湾の旅行者は「良質な客層」として知られ、安定した落ち着いたビジネスをもたらしてくれるからである。大量の団体客を失ったばかりの店舗にとって、その存在はとりわけ大きい。
消費行動の安定性
台湾からの旅行客は、大声で騒がない、きちんと列に並ぶ、消費行動が安定しているといった特徴があり、日本の店側に過度な負担をかけない客層とみなされている。
ビジネスモデルとしての優位性
中国の団体観光客のように、一度に巨大な売り上げを生むタイプではないものの、台湾の旅行者は個人旅行が中心で、落ち着いた「質の高い客」として継続的な売り上げをもたらす。そのため、むしろこちらの方を好む業者も少なくない。
日本がシフト 地方政府が積極的に「台湾限定」サービスを推進
台湾市場の重要性が高まるにつれ、日本政府や地方の事業者も台湾からの旅行客を強く意識した取り組みを進めている。
各地の自治体は繁体字による案内や台湾限定の企画を打ち出すなど、より積極的に台湾人旅行客を呼び込む姿勢を強化。観光事業者の中には、直接台湾に赴いてプロモーションを行うケースもあり、その熱意がうかがえる。
矢板明夫氏は、日本が台湾市場をますます重視するようになったことは「台湾の人々にとって間違いなく良い兆しだ」とまとめる。今後は、台湾人向けのサービスや企画がさらに増え、買い物や観光がより便利になるだけでなく、より細やかなサービスが期待できるという。
編集:柄澤南 (関連記事: 高市早苗氏の「台湾有事」で中国が激怒 台湾・林佳龍外交部長が台灣人の日本観光を支持 | 関連記事をもっと読む )
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