人物》台北市長選出馬、民進党へ批判集中 吳怡農氏の本心とは?

壯闊台灣創設者の吳怡農氏(写真)台北市長選出馬を正式表明、民進党からの反発が強まる中で矛先を内向け。(写真/吳怡農フェイスブックページ提供)
壯闊台灣創設者の吳怡農氏(写真)台北市長選出馬を正式表明、民進党からの反発が強まる中で矛先を内向け。(写真/吳怡農フェイスブックページ提供)
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壯闊台灣聯盟の創設者、吳怡農氏は11月下旬、2026年台北市長選で民進党の公認を目指すと正式に表明した。しかし、その後「もし党内の選挙戦略担当者や評論家が本当に有能なら、大規模リコールがあのような結果になるはずがない」と発言したことを受け、党内世論は一気に逆風へ転じた。民進党系の立法委員やコメンテーター、関係者の一部からは、「自分だけが高みにいるつもりか」「団結を乱している」「政治を分かっていない」と批判が相次いだ。

猛烈な批判が押し寄せる中、吳氏は退く姿勢を見せず、むしろ2006年に民進党で起きた「十三寇事件」を引き合いに出し、自身に内紛の意図はなく、政党が誤りと向き合う必要性を指摘しただけだと強調。これが再び深緑支持層の反発を呼んだ。敏感な空気が漂う民進党内にあって、吳氏は出馬表明の瞬間から、単なる台北市長選の潜在候補ではなく、党の路線、文化、そして世代間の亀裂を象徴する存在となっている。

20251126-壯闊台灣創辦人吳怡農26日召開民調公布記者会,呼びかけ党总部に最も競争力のある要選作出を促した。(颜麟宇撮影)
台北市長選への出馬を表明した吳怡農氏(写真)が、その後も党内の逆風を恐れず発言を続けている。民進党内からの強い批判が相次ぐなかでも、いまだ歩みを止める気配はない。(写真/顏麟宇撮影)

高収入を捨てて帰国 政治は興味でなく人生の基礎

吳怡農氏は1980年に台北市で生まれ、民生コミュニティで育った。母親はごく普通の会社員、父親の吳乃德氏は中央研究院の政治学者で、家計は決して豊かではなく収入も明朗だった。さらに、親族が事業で負債を抱え返済できなかったことで、母親は蓄えの大半を失い、家庭は一時的に逼迫した。吳氏が渡米しイェール大学へ進学した際も、両親から学費の一部支援はあったものの、生活費はアルバイトで賄う必要があった。

彼の政治的な原点は、父の吳乃德氏と、台湾民進党内最大派閥「新潮流」の重鎮である伯父・吳乃仁氏の存在にある。父は台湾の政治や民主化運動を長年研究し、家庭では時事が日常的な話題だった。しかし本人は政党活動に関わらず、政治家にもならなかった。威権体制下では、党外運動への参加や民主雑誌の発行を理由に、帰国後も中央研究院での採用が長く認められず、家は静かな不安に包まれた。それでも父は一切不満を口にせず、研究と執筆を続け、毎日子どもに寄り添って過ごした。

父が失業状態でも信念を貫いたこの時期の経験が、吳氏に「民主には代償がある」ことを幼い頃から理解させた。また、公共のために関わることは職業ではなく、生涯の責任だという確信を与えた。イェール大学を卒業後、外資系投資銀行ゴールドマン・サックスに入り、香港とニューヨークを拠点にキャリアを積んだ彼は、安定した収入と将来性を手にしていた。しかし10年後、最終的に台湾へ戻る道を選んだ。政治は趣味ではなく、人生の根底を形づくる価値そのものだと考えていたからだ。 (関連記事: 舞台裏》台湾・柯文哲前台北市長の2か月の沈黙 AIと何を探り、何を構想していたのか 関連記事をもっと読む

吳乃仁、新潮流、民進黨。(新新闻資料写真)
吳怡農氏の伯父は、民進党最大派閥「新潮流」を代表する重鎮、吳乃仁氏である。(写真/新新聞提供)

政治体制に挑戦 票を集める魅力に欠ける国防問題に取り組む

2013年に台湾へ戻った吳怡農氏は、すぐに政治の世界へ入ったわけではない。まずメディアで国防・国家安全保障に関する論考を執筆し、武器調達や防衛産業の協力体制、国家安全保障法制といったテーマを継続的に掘り下げた。その専門性は徐々に安全保障関係者の目に留まり、海外の安保機関と意見交換する中で、台湾が国防の自立を進めるには、まず機密保護制度の整備が欠かせないとの指摘も受けた。

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