【掲仲コラム】張又侠氏「粛清」の深層と衝撃 習近平氏が恐れた「2つのレッドライン」とは

2026-01-30 09:48
中国共産党は24日、中央軍事委員会副主席の張又俠氏に対する調査を発表したが、その原因について外部では様々な憶測が飛び交っている。(資料写真、AP通信)
中国共産党は24日、中央軍事委員会副主席の張又俠氏に対する調査を発表したが、その原因について外部では様々な憶測が飛び交っている。(資料写真、AP通信)

2026年1月24日午後、中国国防部が突如として発表したニュースは、各界に激震を走らせた。中国共産党中央軍事委員会の張又侠副主席(上将)および、同委員・軍委連合参謀部参謀長の劉振立(上将)に対し、「重大な規律違反・法律違反」の疑いで立件・審査調査を行うというのだ。

張又侠氏と、それに先立ち失脚した苗華氏への厳罰は、単なる汚職問題ではなく、独裁者の「越えてはならない一線(レッドライン)」に触れた結果であると見るべきだ。これほど多くの高級将校が粛清された事実は、今後3〜4年にわたり、人民解放軍の意思決定の質、および計画外の大規模行動を遂行する能力に深刻な悪影響を及ぼすだろう。もしこの期間中に台湾海峡で危機が勃発した場合、その対処の難易度は飛躍的に跳ね上がることになる。

習近平氏は張又俠氏の排除を早期から計画か

​張又侠氏の失脚後、その原因については諸説飛び交っているが、一つ確実なことがある。それは、習近平氏がこの動きに出るかなり前から布石を打っていたということだ。少なくとも、第4回中央委員会全体会議(四中全会)が閉幕して間もない時期から、すでに行動は開始されていた。

その最も顕著な証拠が、2025年12月22日に行われた韓勝延、楊志斌両氏の上将昇進式である。この人事において、苗華氏失脚後も要職に留まっていた張又侠氏の旧部下3名、元陸軍副司令の趙宇、元武装警察代理司令の曹均章、元海軍代理政治委員の冷少杰が、一斉に更迭され、他の人物に取って代わられたのだ。筆者が1月15日に政治大学国際関係センター主催のシンポジウムで「張又侠氏はすでに猜疑の対象となっている」と推測した主たる根拠も、まさにこの人事異動にあった。

習氏は、張氏の旧部下を排除するだけでなく、首都・北京の防衛体制(京畿)を掌握し、陸軍における張又侠氏の影響力を相殺するための人事配置も着々と進めていた。

北京防衛と陸軍中枢における「張・苗」包囲網

具体的には、中部戦区司令員の韓勝延上将と、北京衛戍区(首都防衛部隊)の実質的な責任者である政治委員の朱軍少将の人事だ。両名とも空軍出身であり、苗華氏や張又侠氏とは深い縁故関係を持たない。

対照的に、北京衛戍区の前任司令員であった付文化氏は、張又侠氏がかつて率いた瀋陽軍区の旧部下である。2024年11月に苗華氏が職務停止となった後、付文化氏は翌2025年3月に異動させられ、それ以降、衛戍区司令のポストは異例の「空席」状態が続いていた。この不可解な配置こそが、後の張又侠氏への粛清を見越した伏線であった可能性が高い。 (関連記事: 張又侠氏失脚は台湾侵攻を遠ざけるのか、近づけるのか?専門家が指摘する「独裁者の暴走」と「判断ミス」の恐怖 関連記事をもっと読む

また、いわゆる「東南閥(苗華氏の影響下にあった派閥)」が崩壊した後、張又侠氏の影響力が増すと見られていた陸軍においても、巧妙な牽制が図られている。現在、司令部の日常業務を取り仕切る参謀長の蔡志軍中将は、2025年7月に現職に就いたばかりだ。そのため、実質的な掌握権は代理政治委員を務める紀律検査委員会書記、張曙光中将の手にあると言える。

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