台湾元総統・陳水扁一家の「3億ドル着服」疑惑、渦中の人物・余金宝氏の正体 国民党マネーを動かす「政商」の闇

2026-01-28 06:12
国民党の元「大番頭」劉泰英氏は新著の中で、ある「余姓の華僑」が陳水扁元総統(写真)の3億米ドルを横領したと言及した。これにより、余金宝氏の経歴や背景に改めて国民の関心が集まっている。(資料写真、顔麟宇撮影)
国民党の元「大番頭」劉泰英氏は新著の中で、ある「余姓の華僑」が陳水扁元総統(写真)の3億米ドルを横領したと言及した。これにより、余金宝氏の経歴や背景に改めて国民の関心が集まっている。(資料写真、顔麟宇撮影)

台湾・国民党の元「大番頭」として知られる劉泰英(リュウ・タイエイ)氏が昨年末に出版した新著の中で、陳水扁(チェン・シュイビエン)政権時代の中華開発金控(CDC)の経営権争いに言及したことが波紋を広げている。劉氏は、ある財閥が陳水扁一家に3億米ドル(約430億円)を提供し、その資金が余(ユー)姓の華僑の口座に預けられた後、着服されたと示唆したのだ。

疑惑の渦中にある陳水扁氏はその後、台港貿易公司の董事長(会長)である余金宝(ユー・ジンバオ)氏との対話記録を公開し、余氏自身が「全く事実無根だ」と反論していることを示した。しかし、不可解な点は残る。余金宝氏は2023年末の総統選挙においても、野党統合(藍白合)を巡る「2億ドル提供説」の金主(スポンサー)として噂された人物だからだ。今また陳水扁一家の海外資金流出疑惑に関与が取り沙汰されたことで、その正体と背景に改めて注目が集まっている。

メディア関係者の戴忠仁氏によれば、余金宝氏は劉泰英氏の「かつての部下」であったとされる。この証言は、余氏がかつて国民党の党営企業に在籍していたことを示唆しているように見える。しかし、2023年末に民衆党の柯文哲(コ・ウェンジェ)氏が「国民党候補・侯友宜氏の副手になれば2億米ドルを提供するという申し出があった」と暴露した際、国民党の投資部門である中央投資公司は即座に、余氏が同社に在籍した事実はないと否定している。

一方、陽明交通大学の林健正・元教授は2023年末、メディア『鋭伝媒』への寄稿で、「余金宝氏はインドネシアで炭鉱経営をしており、『台港貿易』は国民党が無償で彼に譲渡したものだ」と述べている。この主張は、ある意味で「台港貿易」と国民党資産(党産)をイコールで結ぶものだ。しかし、過去10年にわたり不当党産処理委員会が国民党資産の追及を強力に進めてきた経緯を鑑みれば、当時の政治的状況下で余氏が本当に「藍白合」の資金提供者として振る舞えたのか、疑問視する声もある。

ただ一つ確実なことは、劉泰英氏が国民党投資管理委員会(投管会)の主任委員を務めていた時代、余金宝氏が国民党の党営事業と極めて密接な関係にあったという事実だ。

劉泰英氏と密接な協力関係、9年前には風力発電にも進出

​2017年、台湾の洋上風力発電開発政策がまだ本格化していなかった時期に、早くも彰化県沖で海外資本による参入の動きが報じられた。『中国時報』によると、華人社会で知られる有力スポンサーである余金宝氏が動き、台湾電力(台電)の元幹部らを集めてチームを結成したという。このチームには劉泰英氏や、潤泰グループの尹衍樑(サミュエル・イン)氏も名を連ね、700億台湾ドル(約3200億円)規模の投資を計画していたとされる。
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彼らが目を付けたのは、彰化県の王功漁港に隣接する30ヘクタールの土地だった。台港貿易董事長の余金宝氏は2017年初頭から調査を進め、最終的にここに「永興変電所」を設置することを決定。当時就任したばかりの頼清徳行政院長(首相に相当、現総統)への表敬訪問も計画していたという。

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