韓国大統領が警告する半導体価格「倍増」のシナリオ 「100%関税」の脅しは米AI産業への自爆テロか

2025年3月13日、ワシントンのホワイトハウスで記者団と話すハワード・ラトニック米商務長官。(写真/AP通信提供)
2025年3月13日、ワシントンのホワイトハウスで記者団と話すハワード・ラトニック米商務長官。(写真/AP通信提供)

ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)米商務長官は先日、サムスン電子やSKハイニックスといった外国のメモリー半導体メーカーに対し、米国国内での生産施設建設を確約し、実際に現地生産を行わない限り、将来的に100%の追加関税を課す可能性を示唆し、公然と脅しをかけた。

しかし、韓国の産業界はこの脅威に対して強い拒否感を示している。彼らにとって、米国でメモリー半導体を生産することは、経済合理性を欠いた「非現実的なアプローチ」に他ならないからだ。

「ファウンドリ」とは違う、「メモリー」の残酷なコスト構造

​韓国紙『中央日報』は、ファウンドリ(受託生産)と比較して、米国が大規模な標準型メモリー半導体の生産に不向きである理由を詳報している。その主な要因は、現地の高額な労働コスト、熟練技術者の不足、そして製造エコシステムの未成熟さにある。

ファウンドリは顧客と価格を合意した後に生産を開始するため、高い製造コストを契約価格にある程度転嫁する余地がある。対してメモリー半導体は標準化された商品(コモディティ)であり、通常は事前に量産して公開市場で販売されるため、コスト転嫁の余地は極めて限定的だ。

AIブームの生命線「HBM」を握る韓国勢

​現在、世界的なAIブームの下で、先進的なメモリーは不可欠な基幹部品となっている。AIモデルのトレーニングや推論には、プロセッサとメモリー間で膨大なデータを高速で転送する必要があり、このプロセスがシステム全体の性能を決定するボトルネックになりがちだからだ。現在、頻繁に議論の対象となる広帯域幅メモリー(HBM)市場において、前述の韓国大手2社は世界シェアの80%以上を掌握している。

慶州APECの夕食会に出席したトランプ氏(左)と李在明氏。(AP通信)
慶州APECの夕食会に出席したトランプ氏(左)と李在明氏。(写真/AP通信提供)

韓国メディアは、産業間の構造的な違いを直言する。ブランドによる性能差が極めて小さいメモリー製造において、利益の源泉は「性能」ではなく「価格」にある。したがって、いかにコストを下げるかがメーカーにとって最大の生存要件となる。これこそが、世界の大半のメモリー生産能力がいまだに韓国本土に集中し、コスト競争力と成熟したサプライチェーンを持つ中国以外に、海外生産拠点が定着しない理由である。

李在明大統領の警告「関税は米国の首を絞める」

ラトニック長官の発言に対し、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は意に介さない様子だ。彼は逆にワシントンに対し、もしそのような関税を強行すれば、米国の半導体価格に壊滅的な打撃を与えると警告した。「台湾と韓国の2カ国で、米国半導体市場のシェアの80〜90%を握っている。もし我々に100%の関税をかければ、米国の半導体価格は一気に倍増するだろう」と指摘する。

企業の苦渋と「二兎を追う」戦略

​政府や業界が米国の強硬姿勢に反発する一方で、当事者であるサムスン電子とSKハイニックスは、長期的な経済安全保障を考慮し、米国への投資計画を進めている。 (関連記事: トランプ政権、メモリに「100%関税」示唆 サムスン・台湾勢に激震 米国が狙う次なる戦略物資とは 関連記事をもっと読む

米国テキサス州の工場でイベントを開催するサムスン電子の従業員たち。(サムスン公式Facebookより)
米国テキサス州の工場でイベントを開催するサムスン電子の従業員たち。(写真/サムスン公式Facebook提供)

海外メディアの報道を総合すると、サムスン電子はテキサス州に370億ドル(約5.6兆円)を投じてファウンドリ・クラスターを建設し、最初の工場は2026年に稼働する予定だ。一方、SKハイニックスはインディアナ州ウェストラファイエットに38億7000万ドル(約6000億円)を投資し、先進的な半導体パッケージング施設を建設する。

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