日本のBL漫画家、台湾サイン会が中止に 台湾版に「中国国旗」表示し批判殺到

日本のBL漫画家が台湾版作品に五星紅旗を表示し、配信で台湾を「ある国」と表現したことへの批判を受け、出版社がサイン会の中止と全額返金を発表した。(写真/青文出版より)
日本のBL漫画家が台湾版作品に五星紅旗を表示し、配信で台湾を「ある国」と表現したことへの批判を受け、出版社がサイン会の中止と全額返金を発表した。(写真/青文出版より)

台湾の出版社・青文出版(Chingwin Publishing)は2025年12月29日、2026年2月7日の台北国際動漫節などで予定されていた日本のBL漫画家・ニクヤ乾氏のサイン会を全面的に中止すると発表した。ニクヤ乾氏が自身のSNSで、台湾で販売される中国語版作品に中国の国旗(五星紅旗)を表示したことや、その後の配信での発言が台湾国内で強い反発を招いたことを受け、慎重に検討した結果としている。

日本のBL漫画家が台湾版作品に五星紅旗を表示し、配信で台湾を「ある国」と表現したことへの批判を受け、出版社がサイン会の中止と全額返金を発表した。青文出版
日本のBL漫画家が台湾版作品に五星紅旗を表示し、配信で台湾を「ある国」と表現したことへの批判を受け、出版社がサイン会の中止と全額返金を発表した。(写真/青文出版より)

騒動の発端は、ニクヤ乾氏がX(旧Twitter)上で行った投稿だった。ニクヤ乾氏は日本の出版社「コアマガジン(Core Magazine)」との出版契約終了を報告し、作品の権利移行について説明する際、併せて各国の翻訳版を紹介したが、その中で台湾で販売される「中国語版」に対し、中国の象徴である「五星紅旗」の絵文字を使用した。これに対し、ファンから「台湾での出版であり、表記が異なる」と指摘が入ったが、ニクヤ乾氏は当初「販売国が具体的にどこまで及ぶか把握しておらず、『中国語版』として聞いている」と回答。「フランス語版がフランスで売られているか詳細を知らないのと同様」とし、曖昧な反応を示していた。

さらに火に油を注いだのが、その後行われたライブ配信での発言だった。現地報道によると、ニクヤ乾氏は配信内で「中国語版は中国では販売できないが、『ある国』では購入できるそうだ」と笑いながら発言したとされる。中国ではBL作品の出版が厳しく規制されている一方、台湾は創作の自由度が高く市場が確立されているが、この台湾を「ある国」と表現し、国旗表記を即座に訂正しなかった姿勢が、台湾の読者の感情を逆なでする形となった。一部の出版関係者からは「通常、海外ライセンス契約時には対象地域や印税条件が明記され、見本誌(献本)も著者に送られるため、販売国を知らないというのは不自然だ」との指摘も上がっている。

批判の高まりを受け、ニクヤ乾氏は27日までに投稿を削除し、表記を台湾の国旗に修正した上で謝罪声明を発表した。ニクヤ乾氏は「コアマガジン社からは『中国語版』、一迅社からは『台湾版』と伝えられていたため、両者に差異があると思い込み、十分な理解なしに発信してしまった」と釈明し、認識不足と配慮の欠如により読者を傷つけたことを詫びた。

しかし、SNS上での議論は収束せず、青文出版は事態の重さを鑑みてイベントの中止を決断した。同社の発表によると、中止となるのは2026年2月7日に予定されていた台北国際動漫節会場および金石堂汀州店での計2回のサイン会で、既に参加資格を購入済みの読者に対しては、2025年12月31日までに元の支払い方法を通じて全額返金の手続きが行われる。

編集:梅木奈実

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