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舞台裏》中国軍なぜ今、台湾包囲演習なのか?米軍「ハイマース」を意識した標的訓練 台湾当局が分析する「4つの真の狙い」 台湾の国防部は29日、臨時記者会見を開き、中国人民解放軍による実弾軍事演習に対する国軍の対応措置について説明した。写真は台湾国防部の孫立方報道官。(写真/劉偉宏撮影)
中国人民解放軍東部戦区は本日(12月29日)、「正義使命-2025」と称し、台湾周辺で標的を絞った軍事演習を実施した。これに対し、台湾の国家安全保障(国安)関係者は「台湾側が奇襲を受けたり、事態に気づかず呆然としていたわけではない」と反論。実際には先週の時点で、中国が本日に演習を発動することを把握しており、それゆえに台湾国防部(国防省)が即座に応変センター(対策本部)を立ち上げ、対応できたのだと明かした。
関係者によると、台湾当局は先週から、多数の中国軍艦艇や海警局船艇が宮古海峡を通過し、台湾東部沖へ南下している動きを察知していた。その中には元々尖閣諸島(台湾名:釣魚台)周辺に配備されていた海警船も含まれていたという。さらに中国側は台湾東部沖の航路において、いわゆる「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」および海上法執行訓練(海警船による臨検・拿捕訓練など)を実施していた。国安当局の高官は「これらの動きは過去に中国が軍事演習を発動する前の予兆と一致している。我々はこれらの兆候と同盟国との情報交換、独自の諜報活動に基づき、先週の時点で『12月29日に演習が行われる』と判断していた」と述べた。
同関係者はまた、11月14日以降、中国が地域内で一連の行動を起こしていると指摘する。日本やフィリピンへの挑発に続き、この2日間は台湾海峡で事を構えている。解放軍は12月13日以降、黄海、東シナ海、台湾海峡から南シナ海にかけて、常時平均50〜60隻の艦艇を展開させており、一時はその数が「3桁」に達したという。つまり、第一列島線における中国艦船の配備数は一時100隻を超えていたことになる。
当局の分析によると、中国側は火器管制レーダーで自衛隊機をロックオンしたり、南シナ海でフィリピン軍機にフレア(熱源囮弾)を発射するなど、周辺国へのハラスメントや威圧、挑発行為を繰り返しており、「全体的に見れば、今回の演習もその一連の流れにある」としている。
では、なぜ解放軍はこのタイミングで軍事演習を行ったのか?国安当局の高官は、その理由を以下の4点に分析している。
1. 日本への圧力と台湾への責任転嫁 第一に、台湾を利用して焦点をごまかす狙いがある。高市早苗首相が「台湾有事は日本の存立危機事態である」との認識を示したことで日中関係が緊張。中国側は12月13日の「南京事件」の追悼日に合わせて緊張を高めるか、別の形で矛先を逸らすか模索していた。日本が一歩も引かない姿勢を見せたため、中国は振り上げた拳の落としどころとして、台湾行政院顧問を務める岩崎茂・元統合幕僚長(元空将)への制裁を発表するなど、責任を台湾に結びつけ、軍事演習によって焦点を台湾へ移そうとしている。
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中国人民解放軍は2025年12月29日から「正義使命-2025」と名付けた軍事演習を実施すると発表した。(画像/中国東部戦区の公式WeChatより)
2. 米国への探り・戦略的間隙の模索 第二に、2026年4月に予想される「トランプ・習近平会談」を見据えた動きだ。中国は2025年11月中旬以降、第一列島線への戦力投射を強め、脅威を与えている。同時に、東欧や中東情勢が不安定な中、ロシアに日本を牽制させつつ、中国が台湾海峡や南シナ海で動くことで、中露連携による「戦略的間隙(ギャップ)」が見出せるか試みている。今後、北朝鮮がどう関与してくるかも注視が必要だ。
3. 米国の決意をテスト 第三に、米国へのテストである。米国が先ごろ発表した「国家安全保障戦略」や中国の軍事力に関する報告書、そして最近の台湾への重要な武器売却発表に対し、中国はこの時期に対台湾演習を行うことで挑発し、インド太平洋の安全を守る米国の決意を試している。当局者は「今回の演習項目に『対陸機動目標打撃訓練』が含まれている点に注目すべきだ」と指摘。これは明らかに台湾が米国から購入した高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」を標的としたものであり、中国がこの武器売却を強く警戒している証左である。
4. 解放軍内部の大粛清とガス抜き 第四の理由は、解放軍高層部で現在進行中の「大粛清」だ。12月28日に終了した全人代常務委員会を見ても、解放軍内部でさらなる変動が起きていることがわかる。海軍、空軍、陸軍、ロケット軍にわたり、司令官クラスや政治委員クラスがほぼ例外なく調査対象となっている。
国安関係者によれば、現在解放軍高層部で調査を受けていないのは、張又侠・中央軍事委員会副主席、董軍・国防部長(国防相)、張昇民・規律検査委員会書記、劉振立・統合参謀部参謀長、そして先週就任したばかりの楊志斌・東部戦区司令員と韓勝延・中部戦区司令員のわずか6人程度だという。
各戦区の司令員や政治委員、陸海空軍の司令官らが調査または免職されており、その多くは元中央軍事委員会副主席の何衛東氏や、元政治工作部主任の苗華氏の派閥である「何・苗グループ」への関与が疑われている。何衛東氏、苗華氏、あるいは東部戦区司令員の林向陽氏らは、かつて習近平氏と近しいとされた「福建閥」や第31集団軍の出身である。これらの一派が一掃され、後任には習氏と親しいわけではない人物が就いている状況について、当局高官は「なぜこのような状況が起きているのか注視が必要だ」と述べる。
中国軍内部の激震こそが、11月中旬以降、軍にあらゆる「仕事」を与えている理由でもある。外部での活動に忙殺させることで、内部の不安定さを抑え込もうとしている可能性があるのだ。
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