中国軍、10時間の軍事演習 航空便941便・10万人に影響 台湾民航局「粗暴な挑発」と厳しく非難

中国は「正義使命-2025」と称する台湾周辺での軍事演習を実施し、台湾の交通部は演習海域に関する航行警報および影響範囲を公表した。(写真/台湾交通部提供)
中国は「正義使命-2025」と称する台湾周辺での軍事演習を実施し、台湾の交通部は演習海域に関する航行警報および影響範囲を公表した。(写真/台湾交通部提供)

中国人民解放軍は本日(12月29日)、台湾に対する軍事演習を発動し、明日(12月30日)午前8時から午後6時(18時)にかけて台湾周辺に7カ所の「臨時危険区域」を設定すると宣言した。これにより航空交通に甚大な影響が出ており、金門・馬祖への離島便も運航停止となる。交通部民用航空局(以下、民航局)の統計によると、国際線・国内線合わせて計941便、約10万人の利用客に影響が及ぶ見込みだ。民航局は、地域の航空安全と人々の権益を無視した中国側の行為を「粗暴かつ挑発的」であるとして厳しく非難した。

民航局によると、中国の民間航空当局は本日午前7時30分、ノータム(NOTAM/航空情報)を発出し、明日(12月30日)8時から18時まで台湾周辺の7区域でロケット発射演習を行うため、航空機の進入を禁止すると通知した。

民航局は、台北飛行情報区(台北FIR)には国際航空路14本と国内航空路4本が存在するが、今回の危険区域はその大半をカバーしていると指摘。国際線では北東方面の日本発着ルート(R595、R583、M750)以外、演習期間中は使用不能となる。国内線については、台湾本島および澎湖、七美、望安、緑島、蘭嶼などの離島路線は影響を受けないものの、金門・馬祖へのルートは完全に遮断され、指定時間帯の全便が飛行不可となる。

民航局は「国際民間航空機関(ICAO)の規定では、航空路の使用に影響する演習活動は遅くとも7日前までに航空情報を発布し、かつ影響を受ける飛行情報区と事前に調整を行う必要がある」と強調。中国側がわずか1日前に一方的に通知したことは国際規範と慣例に著しく違反しており、国際航空路および地域空域への大規模な干擾(かんしょう)は、航空安全と広範な民衆の権益を顧みないものであるとして、交通部はこれに対し「粗暴かつ挑発的な行為」であると強く非難した。

中国発動「正義使命-2025」包囲台湾軍演、交通部公表する中共が台湾周辺海域で軍事演習を行う航行警報情報 軍演影響範囲。(交通部提供)
中国人民解放軍による軍事演習の影響範囲。(写真/交通部提供)

陳世凱・交通部長(交通相)は民航局に対し、国軍および関係機関と緊密に連携し、空域の動向を即座に把握するよう指示した。統計によると、明日(12月30日)8時から18時の間に予定されていた国際線の出発約296便、到着約265便、通過(オーバーフライト)約296便の計857便に加え、国内線も含めると影響を受ける旅客数は10万人を超える。

国内線については、金門および馬祖(南竿・北竿)空港の発着便において、金門65便、馬祖14便が影響を受ける。さらに航空各社は、早朝便が出発しても演習の影響で折り返し便が運航できないリスクを考慮し、計84便(金門68便、馬祖16便)の欠航を決定した。これにより約6,000人の足に影響が出る。

民航局は航空交通の安全確保のため、国際線の発着および通過便については、航空管制による誘導で危険区域を回避、または代替ルートを設定して対応する。状況に応じて「流量管理(フローコントロール)」も実施する構えだ。全便運休となる金門・馬祖路線については、演習終了後に臨時増便を行うよう航空各社と調整済みである。

民航局は各航空会社に対し、欠航や遅延が発生した場合はSMS、公式サイト、アプリ等を通じて乗客へ能動的に通知するよう求めた。また、明日(12月30日)搭乗予定の利用客に対しては、出発前に航空会社の公式サイトやアプリで最新の運航状況を確認するか、空港の電光掲示板や放送に注意し、行程を適切に調整するよう呼びかけている。
交通部および民航局は、引き続き情勢を厳密に監視し、国防部(国防省)と全面的に協力した上で、「安全第一」を最優先原則とし、地域の交通輸送の維持と国民の生命財産の保護に全力を尽くすと表明した。

編集:梅木奈実

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