2024年の米国大統領選は、まるで政治スリラーのような展開を見せた。候補者の交代劇、裏取引、暗殺未遂といった出来事が続き、最終的には有罪判決を受けたドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに返り咲いた。
英誌『エコノミスト』によれば、この波乱の背景には、ミレニアル世代とZ世代(1981年~2006年生まれ)の存在が大きく関係している。彼らはかつて民主党を支持していたが、今回はトランプ氏を再びホワイトハウスに送り込んだ。しかし、就任後の政策に対する不満から、若者たちは早くも彼に背を向け始めている。
民主党が若者の票田を失った理由
長年、ミレニアル世代やZ世代は民主党の強固な支持基盤とされてきた。高い教育を受け、人種的にも多様性があり、リベラルな価値観を共有していると見られていたからだ。
だが『エコノミスト』は、若い有権者たちは変化しやすく、政党への忠誠心は流動的だと指摘する。実際、左派のデータ分析会社Catalistの報告によると、2024年の大統領選では民主党候補カマラ・ハリス氏の若年層支持が、2020年のジョー・バイデン氏の時より12ポイント低下した。これは他の世代に比べても大きな下げ幅だ。一方、トランプ氏の支持は6ポイント上昇し、その多くが若者によるものだった。

特に民主党にとって深刻なのは、黒人やラテン系の若者の離反だ。2024年選挙では、白人有権者(18~44歳)のうちトランプ氏支持は4.6ポイント上昇、黒人有権者では14.6ポイント、ラテン系では22.6ポイントと大きな伸びを見せた。ミレニアルとZ世代の約3分の1が非白人であり、これは年長世代と比べて大きな違いとなっている。

経済的プレッシャーが主要因
『エコノミスト』によれば、若者は文化的・価値観的な問題よりも、経済的な問題に敏感だという。表面上はアメリカ経済が堅調だったにもかかわらず、若者たちの生活は依然として苦しいままだ。
収入は年長世代より低く、住宅や貯蓄を持てる可能性も低い。2024年11月時点での失業率は全体で4.2%だったが、20~24歳ではその約2倍、18~19歳では約3倍だった。これらの若い有権者の中で、より多くの人々が経済の問題が最も重要なテーマであると考えており、移民問題はそれほど関心を引いていない。

さらに、彼らはインフレの影響を強く受けている。FRB(米連邦準備制度)の調査によれば、中古車や燃料などの出費が若者の生活費に占める割合は高く、とくにラテン系でその傾向が強い。2021~2022年にそれらの価格が急上昇し、生活を直撃した。
YouGovと『エコノミスト』による世論調査では、18〜29歳におけるバイデン氏のインフレ対策への評価は-23ポイントとなっている。若者の消費スタイルは、彼らが物価の上昇に敏感であることを裏付けている。

情報源の変化とSNSの影響
若者の政治的態度に影響を与えているのは、経済だけではない。情報の入手手段も変化している。YouGovの選挙前調査によれば、18〜29歳の60%がトランプ氏についての情報をSNSから得ており、4人に1人はポッドキャストを利用している。選挙終盤には、いわゆる「兄弟ポッドキャスト(bro podcasts)」が若年男性に影響を与え、トランプ氏の支持を拡大させた。
一方、SNSはバイデン政権やカマラ・ハリス氏によるガザ情勢対応への左派からの批判が集まる場にもなった。民主党系の研究機関Blue Rose Researchの分析では、TikTokなどのSNSを主な情報源とする有権者は、他のメディア利用者と比べて共和党への転向率が高い傾向にあるという。 (関連記事: 日本・パラグアイ・台湾が「3カ国友好レセプション」開催 ペニャ大統領「台湾支持は自国支持と同じ」 | 関連記事をもっと読む )

トランプ支持からの離脱も
とはいえ、民主党にとって希望がないわけではない。同じくYouGovと『エコノミスト』の調査では、トランプ政権初期の混乱を受け、30歳未満の若者のトランプ氏支持は+4ポイントから-21ポイントへと急落している。