台湾積体電路製造(TSMC)が米国への追加投資として1,000億ドルを発表した際、台湾では「トランプの関税の大鉈は自国には振り下ろされない」との期待があった。少なくとも、小刀か木刀に変わるのではとの思いがあった。しかし、「解放日」が訪れた時、台湾が受け入れたのは最大32%の高関税であり、日本や韓国、欧州をも上回り、米国の最大の戦略的対立国である中国(34%)とほぼ同等であった。呉釗燮外交部長が緊急で渡米して協議に臨んだものの、英BBCは台湾にまだ交渉の切り札があるのか、米国の交渉のテーブルに着けるのかを特集した。
米国は台湾にとって第二の輸出市場であり、昨年の輸出総額は1,163億ドル、前年比46.1%増だった。しかし、台湾は対米貿易で739億ドルの黒字を記録し、米国にとって第六の貿易赤字相手国となっている。これが「ダーティー15」と「対等関税」の由来でもある。ブルームバーグの試算によれば、関税が実施されれば台湾の対米輸出は63%減少し、GDPも約3.8%縮小すると予測されており、トランプの対等関税は台湾にとって深刻な打撃である。清明節の連休明け、台湾株式市場は2,000ポイント急落し、進行中のTSMCの投資も、台湾人にトランプの善意を感じさせることはなかった。テキサス州サム・ヒューストン州立大学の翁履中教授は「これは台湾経済にとってここ数十年で最大の危機であり、輸出貿易に依存する台湾の状況は『非常に深刻』」と指摘した。
経済部のデータによれば、2024年における対米輸出で最も多かったのは「自動データ処理機」およびその部品(パソコン、サーバーなど)であり、全体の46%以上、514.94億ドルに上る。次いで多いのが集積回路で、全体の6.65%を占め、総額74.03億ドルであった。トランプが対等関税を発表した当日、彰化県議員の呉韋達氏と施佩妤氏は記者会見を緊急開催し、企業から関税の影響を懸念する声を受け取ったことを明かした。彰化県の伝統産業には、自転車部品、機械設備、金属加工、鉄鋼製ネジが含まれ、米国が主な輸出市場である。かつて政府の南進政策に呼応した企業がカンボジアやベトナムに進出していた場合、今回これらの国に課された46%以上の超高関税による打撃は、台湾国内よりもさらに深刻だ。
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台米関係の再考
翁履中氏は、台湾政府がたびたび「台米関係は史上最良」と強調してきたが、予想を超える重税は台湾国民の心に打撃を与えたと分析する。翁氏は「台湾は米国に対して楽観的すぎる期待を抱いている」とし、トランプが関心を持っているのは米国の利益であり、たとえTSMCの董事長を「いい人」、TSMCを「素晴らしい会社」と称賛しても、トランプの狙いは「あなたが米国に投資すること」だと述べた。民間に広がる「対米懐疑論」について、翁氏は「すべての国が米国との関係を見直している今こそ、台湾も台米関係を再考する好機だ」と語る。