複数の中国出身の配偶者が頼清徳政権によって強制退去させられたことを受け、中国・北京当局は即座に反応を示しました。しかし、劉振亜氏が福建省福州市の空港に到着した際に出迎えたのは、中国の台湾事務弁公室の関係者および国家安全当局の職員でした。
また、福州空港でこの件を利用してライブ配信しようとした複数のインフルエンサーのアカウントが配信停止処分を受け、一部のネット配信者は空港から退去させられました。数日間にわたり、劉振亜氏は自身のTikTokアカウントを通じて台湾の入国管理局と大陸委員会への不満を表明したものの、それ以外の詳細な説明はありませんでした。
この出来事をきっかけに、一部の中国人はある問題に気付きました。劉氏が一人で福州に帰国し、子供たちは台湾に残っているという事実に、多くの両岸関係に関心のある市民から「なぜ子どもを一緒に連れて帰らなかったのか?」との疑問の声が上がりました。

「一つの中国原則」が政治的なレッドラインから新たな「郷愁」へ
湖南省出身の劉振亜氏(湖南省は毛沢東の故郷でもあります)は、中国へ帰国する前に「台湾国際家庭互助協会」を通じて「私は潔白な形で台湾を去る。正々堂々と台湾へ戻ることを期待している」との声明を発表しました。また、頼政権が彼女を「見せしめ」として選んだと非難し、内政部長の劉世芳氏を名指しで「迫害した」と批判しました。
なお、劉世芳氏は中国の台湾事務弁公室によって「台湾独立派の手先」として名指しされています。しかし、この事件は中国本土のSNS上では大きな話題にはならず、多くの市民は全国人民代表大会(全人代)終了後の経済回復や消費市場の改善に関心を寄せており、今回のような民族主義的な事件は注目されていません。
天津出身の台湾進出企業の妻である張氏は取材に対して、「大きな政治は一般人にとっては浮雲のようなもの。本当に関心があるのは、どうやってこの経済苦境の中で生活を維持するかです」と語っています。
劉振亜氏の他にも、最近になって「一つの中国原則」への賛同や五星紅旗の掲示を理由に、台湾から中国へ強制送還された中国人配偶者が2名います。これらの言動は中高年層だけでなく、台湾に在学中の中国出身の若者たちの関心も集めています。特に台湾で学ぶ大陸からの留学生たちは、政治大学に在学中の李さんは「以前は中国本土出身の学生が標的にされていたが、今度は中国人配偶者が対象。両岸関係は本当に後退するのか?」とコメントしています。
近年、北京当局は国際社会および国内のさまざまな場面において、頼政権に対して強硬な対抗措置を取ってきました。これは「統一」の早期実現を目指す戦略の一環と見られています。一方、頼政権は欧米諸国との情報・軍事部門との連携を強化し、北京による「威嚇」を抑制しようとしています。 (関連記事: 台湾を追放された中国出身配偶者、『潔白な身で出国し、正々堂々と戻る』と涙の訴え──“言論の自由”をめぐり波紋広がる | 関連記事をもっと読む )
頼政権としては、中国が国際社会においてさまざまな包囲・妨害に直面している現実を理解すべきだと考えており、スパイ事件などが頻発していることを挙げています。一方で、北京は国家の利益が関わる問題においては、「手を下す」能力があることを示唆して警告を発しています。
