最近の台湾海峡における「法律戦」(反浸透法と反分裂法)および「軍事的対峙」(即時戦備演習と合同戦備パトロール)の新たな局面を経て、外部からは、台湾海峡の安定を保つための最後の手段として、トランプ(Donald Trump)大統領と習近平主席による直接会談しか残されていないとの見方が出ています。現時点では6月に開催される可能性が高いとされています。
これについて、台湾の国家安全会議の元秘書長である蘇起氏は、台湾が米中間における最も核心的で複雑な問題であることに変わりはないとしつつも、日本、韓国、さらには南シナ海といった要素も考慮する必要があると述べております。特に重要なのは、台湾が中国にとっては非常に高い価値を持つ一方で、アメリカにとってはそれほどの価値はないという点です。
蘇起氏は、インターネット番組『正經龍鳳配』にて、「中国が攻めてくる可能性があるが、アメリカが必ずしも救援に来るとは限らない」と長年主張してきたことを強調しました。しかしながら、民進党政権と台湾の大多数の人々は「中国は攻めてこない」「アメリカは必ず救援に来る」と信じており、蘇氏の主張とは正反対の立場を取っていると述べました。多くの人がアメリカを信頼する理由は、「中国国内が混乱しているため戦争を仕掛けてこない」ことや、「台湾が第一列島線上に位置しているため、アメリカが守るだろう」と考えており、「中国はアメリカに敗れることを恐れている」という前提があるとされています。しかし、蘇起氏は、現実はそうした単純なものではないと警告しています。
米中首脳会談はすでに準備段階?「台湾とウクライナが議題に上がる」
米中首脳会談に関する予測について、蘇起氏は「すでに積極的な準備が進められている」と推測。議題については、台湾問題が必ず取り上げられるものの、それだけではないと語っています。台湾は引き続き米中間で最も核心的かつ複雑な議題であるとはいえ、他にも日本、韓国、南シナ海などの地域的要因が絡むため、包括的な交渉が必要になるとしています。さらに重要なのは、台湾は中国にとっては極めて価値が高い一方、アメリカにとっては相対的に価値が低いため、アメリカは「台湾を非常に良い価格で売却するだろう」との見方を示しました。ただし、現時点ではトランプ氏が何を対価に得るかをまだ明確にしていないため、交渉は台湾に限定されるものではなく、他の多くの要素も含まれる「大取引」になるだろうと予測しています。
蘇起氏は、中国が現在、冷静に準備の姿勢を見せながら、アメリカにウクライナ問題の処理を任せ、自らのタイミングで交渉に臨もうとしていると分析しました。つまり、アメリカが中国との直接交渉に応じない限り、中国は独自のやり方で状況を打開できると踏んでいるのです。 (関連記事: 論評》2025年、新ヤルタ協定──トランプ氏・プーチン氏・習近平氏が世界秩序を再構築するのか? | 関連記事をもっと読む )
また、台湾をめぐる「取引」は三つのレベルに分けて考えられるとし、第一に台湾そのものに関する交渉、第二に地域的な安全保障の枠組みに関する交渉、第三に世界的なパワーバランスに関わる交渉があると述べました。特に、中国はすでに単なる地域大国ではなく、世界経済にも大きな影響力を持つグローバルパワーであり、特に貿易面でその存在感は際立っています。そのため、台湾を含む今回の交渉は「大取引(Big Deal)」となる可能性が高く、台湾はその中心的な位置を占めると強調しました。「台湾なくして、他の取引も成り立たない」との見解を示しています。