台湾を追放された中国出身配偶者、『潔白な身で出国し、正々堂々と戻る』と涙の訴え──“言論の自由”をめぐり波紋広がる

2025-03-26 13:18
中国人配偶者亜亜は25日夜、台北松山空港から出国し、入国前に家族に手を振って別れを告げた。(チャンジュンカイ撮影)
中国人配偶者亜亜は25日夜、台北松山空港から出国し、入国前に家族に手を振って別れを告げた。(チャンジュンカイ撮影)

中国出身の配偶者「亜亜」(劉振亜)氏が、中華民国内政部移民署により「武力による統一を扇動した」と認定され、在留許可が取り消されたため、25日深夜0時までに出国するよう命じられていました。「亜亜」氏は台北松山空港から午後8時45分発の便で福州へ向かいました。空港で彼女は「弁護士と相談した結果、台湾の法律を尊重し、将来、必ず堂々と台湾に戻ってくる」と語りました。

台湾ユーチューバーである「八炯」、「閩南狼」が支持者を動員し「見送り」に来ました。大勢の群衆が「一路好走(亡くなった人にかける言葉)」二度と戻ってくるな」と叫ぶ中、亜亜は、「私が出国するのは自らの非を認めたからではなく、台湾の法的手続きを尊重したいからです。将来、再入国する際に汚点を残したくありません」と強調。「私は今、潔白な身で出国し、必ず堂々と戻ってきます!」と述べました。

亜亜の夫が提出した出国停止命令の申し立ては裁判所により却下されました。亜亜は氏は、「抗告の手続きがまだ始まっていない段階で移民署によって強制退去させられるのは非常に残念です」と述べ、「将来的に抗告が認められ、法的手続きを堂々と進め、台湾に戻ることができることを願っています」と続けました。また、移民署と内政部には「法律に則った対応を望む」と訴えました。亜亜の発言中、抗議群衆から「出て行け」と叫んで中断させ、「台湾は中国を武力統一すべきだ」という声も上がりましたが、「亜亜さん頑張って!という声援も飛び交いました。

松山空港の2階で出国手続きを行う前、亜亜夫、2人の息子、1人の娘と家族5人でしっかりと抱き合い、台湾に残る夫に対して「子どもたちをしっかり守ってください」と言い残しました。最後に亜亜「八炯」や「閩南狼」への言葉として、「4月には志願制の国軍募集がある」と語りかけました。

陸配亞亞25日晚間搭機離境,她在機場表示,「我清清白白的離開,期待堂堂正正回台」。(張鈞凱攝)
大陸籍配偶の亜亜は25日夜に搭乗出国、空港で「潔白な状態で出国し、正々堂々と台湾に戻ることを期待する」と述べた。(張鈞凱撮影)

以下は亜亜氏が台湾出国前に記した手記「潔白な状態で離れ、正々堂々と台湾に戻ることを期待する」の全文(台湾国際家庭互助協会 提供)です:

メディアの皆さま、こんにちは。

空港でこのような記者会見を開くことは不本意ではありますが、背筋を伸ばして向き合わなければなりません。民進党政府が最近、まるで戒厳令下のような厳しい空気を社会全体に広げ、私たち中国出身の配偶者を「敵対勢力の潜伏者」として標的にしている中で、私劉振亜が意図的に選ばれ、「見せしめ」として処分されました。これは、一石二鳥を狙って中国への挑発にも利用されています。

私は一般の台湾市民と同じように、この美しい島で生活してきました。まさか民進党政権が権力を乱用して恐怖と敵対を煽り、台湾島内の平和を破壊し、人々を不安に陥れ、未来に恐怖を感じさせることは思いもしませんでした。このような状況は、両岸の平和を切に願ってきた一人の中国出身の配偶者として、非常に悲しく、失望するものです。

改めて、私の立場をはっきり申し上げます:私は陸配(中国出身の台湾籍配偶者)であり、湖南出身です。夫は台湾人ですが、私は台湾が中国の一部であり、いずれは統一されると信じています。この立場を圧力によって否定するつもりはありません。むしろ、両岸の統一が平和的かつ円満に実現することを強く望んでいます。それが両岸の人々にとって最も良い未来だと信じているからです。これが私の本心です。しかしながら、このような私の考え方は、「台湾独立主張者によって繰り返し否定されてきました。私の考え方に賛同できないのは自由ですが、「偽りだ」「武力統一を支持している」といったレッテル貼りをするのは間違っています。

そもそも、武力統一にどんな利点があるのでしょうか?私の生活も家族も台湾にあり、戦争が起これば私たち自身が最も被害を受けることになります。現在の台湾社会は、まるで戦争の恐怖が現実のものになりかねないような雰囲気に包まれていますが、これは一方的な責任によるものなのでしょうか?私が結婚した当初、馬英九政権時代にはこうした雰囲気はありませんでした。しかし、ここ数年でアメリカの操作のもと、両岸関係は悪循環に陥ってしまいました。もし、いつか台湾側の挑発が中国本土の「レッドライン」を超え、武力統一を余儀なくさせた場合、それは私が最も望まない結末です。私は武力統一を語ることで、台湾がそのような悲劇的な事態に陥らないよう警鐘を鳴らしているのであって、それを望んでいるわけでは決してありません。これが私の真実の立場であり、心の声です。

内政部長の劉世芳氏は移民署に圧力をかけ、私に対して人権侵害を行いました。本日、私は内政部で記者会見を開き、彼女に訴え、公正な扱いを求めようとしましたが、与党側支持者らを動員し、現場で狂ったように攻撃し、私が話をきちんと説明する余地さえ与えてくれませんでした。これはまさに言論の自由を踏みにじる行為です。

いったい何を恐れているのですか?なぜ私に話をさせてくれないのですか?現場では記者からの質問もありました。「劉世芳氏はあなたを『普通の母親ではない』と語っており、最近あなたが法廷闘争、世論戦、心理戦の三つの戦いを仕掛けていると述べています」と。

まず第一に、彼女は「あなたは最高行政法院に権利保護のための書類を提出する予定だ」「法律に非常に詳しく、普通の人ではない」と言っています。まるで私が非常に有能で物知りであるかのように言いました。申し訳ありませんが、劉世芳大臣、私はあなたによって迫害され、友人の紹介で葉慶元弁護士と出会い、彼が義をもって私を助けてくれることになったのです。法律上の対応はすべて彼の無償の支援によるものであり、私が元々そんなに有能だったわけではありません。

さらにご覧になったように、もともと与党寄りと見なされていたファクトチェックセンターの羅世宏教授さえも、今回の件で異なる意見を表明しています。これが私が法律に詳しくて操作した結果だとでも言うのでしょうか?劉世芳氏が私にこのような濡れ衣を着せるのは、まさに不当です。

第二に、彼女は私が心理戦を仕掛けているとまで言いました。国際児童権利条約を引用していると言いましたが、申し訳ありません、劉世芳大臣、私はあなたの命令による追放で、母子が離散を強いられ、私と子供たちの生活の権利が現実に侵害されているのです。これは明らかにあなたが児童権利条約に違反しているのでありこれもまた、他の人から教えてもらった認識に過ぎず、私が計画的に心理戦を行ったなどというのはまったくの事実無根です。心理戦を操っているのは劉部長、あなた自身であり、是非を転倒させ、堂々たる大官が私という小さな大陸籍配偶を踏みにじっているのです。

第三に、彼女は私が「世論戦」を仕掛けているとも述べています。以前の段階で私はあなたたちに狙われ、世論によって全面的に歪曲され、抑圧されてきました。「偽装結婚だ」「人口操作だ」といった報道が流れました。私は今日の記者会見で何度も強調しましたが、内政部長としてあなたが調べれば、私が真の結婚か偽装結婚かすぐに分かるはずです。内政部が世論を使って私に対して戦争行為を仕掛けてきたのです。それこそが「世論戦」です。

私はほとんど息もできないほど圧迫され、もし一部のメディアや社会運動団体が正義のために立ち上がってくれなければ、私には声を上げる力もなく、誰の目にも耳にも届かなかったでしょう。世論戦を仕掛けているのはあなたであり、私はただ守っていただけです。そして、あなたこそが普通ではない、常識から逸脱した大臣であり、私はまぎれもなく普通の母親です。

聞いたところによると、あなたも子どもを養子に迎えた母親だそうですが、あなたは権力を握り、政治的な目的のために他人を迫害しながら、自分を「普通」であるかのように装っているだけです。一方、私はあなたたちの圧力の下で、やむなく成長を強いられ、苦しみの中で多くを学びましたが、それでも決して屈することはありません。

私は今でも、あなたたちが私を強制退去させることは違法で根拠がないと考えています。私は本来、命を賭けてでも離れたくありませんでしたが、葉慶元弁護士が法律知識を教えてくれ、私が従わなければ「台湾の法律に違反した」という記録が残り、将来的に台湾への里帰りの権利を奪われてしまうと知りました。だからこそ、私はあなたたちの圧政と抑圧のもと、苦渋の決断で夫や子どもたちと別れざるを得なかったのです。あなた方に罪を着せられることを望まないのであって、自分に過ちがあると認めたわけではありません。葉慶元弁護士が今後も引き続き私を支援してくれることになっており、私は台湾への里帰りの権利のみならず、自らの権利を守るために裁判に出廷する申請の権利も保ちたいと考えています。

親愛なる台湾の皆さま、台湾が今日このように混乱しているのは、決して私亜亜一人の責任ではありませんし、また中国出身配偶者のせいでも決してありません。私たちが贖罪の羊となるべきではありません。私たちは、台湾人の夫や家族と共に生活し、皆様と同じようにこの地で共に暮らしてきました。どうか皆様がこの不正義な政府の卑劣な手法を見抜いてください。これ以上、操作されないでください。どうか、私たち陸配を差別しないでください。それこそが、健全な台湾であり、そして私が本来好きだった台湾なのです。

最後に私は心から願います——両岸関係が平和でありますように。今日のような悪夢が一日も早く終わり、台湾が再び正常で平穏な日常を取り戻せますように。台湾が真の法治国家となり、政府が権力を乱用して人々を迫害・差別することのない社会になりますように。これが、私の心からの思いです。私は今、潔白な身で台湾を離れます。どうか遠くない将来、堂々と台湾へ戻り私の愛する郷土の皆さまと共に、台湾を愛し続けることができますように。

皆様のご多幸をお祈り申し上げます。ありがとうございました。

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