楊佩蓉コラム》日本春闘33年ぶりの大幅賃上げ 人材獲得競争で「台湾の若者」が企業の第一ターゲットに?

日本全国労働組合総連合会が記者会見を開催。(日本経済新聞より)

日本企業で人材獲得戦争が勃発、史上最大の賃上げへ

2025年の日本の春闘(労使間の賃金交渉)の結果が明らかになり、各大手企業が優秀な人材を確保するため、過去最高水準の初任給を提示しています。日本労働組合総連合会の統計によれば、今年の日本企業の平均賃上げ率は5.46%に達し、過去33年間で最高記録となり、市場予想を大きく上回る結果となりました。

多くの著名企業が大幅な賃上げを発表しています。大和証券グループは4月から新卒大学生の初任給を29万円から33万円に引き上げると発表しました。世界的アパレルブランドUNIQLO(ファーストリテイリング)もまた、3月入社の新卒者の初任給を3万円増額し、33万円とする方針を示しました。年収ベースでは約10%の引き上げとなり、500万円を突破する見込みです。UNIQLOの柳井正会長兼社長は「国際基準に合った、熱意と能力を備えた優秀な人材を登用したい」と述べています。

金融保険業界では、東京海上日動火災保険がさらに一歩踏み込み、2026年4月から初任給を引き上げ、転勤を伴う新卒者には最高41万円の初任給を提供すると発表しました。これは業界の新たな基準となるものです。

中国の大学生の就職困難が深刻化、日本が高給で逆に人材獲得へ

一方で、中国ではかつてない若者の失業問題に直面しています。2024年以降、国の新卒就職市場は低迷を続けており、若者の失業率は高止まりしています。中国と日本の労働市場は明確な対照を成しており、日本では少子高齢化による深刻な労働力不足に直面し、企業は人材確保のために賃金を引き上げ、福利厚生を強化して、国内外の人材を獲得し、人材不足を補おうとしています。

台湾人材が日本企業の注目の的に!日本語能力が最大の武器

注目すべきは、この人材獲得戦争が台湾にも波及している点です。近年、日本企業にとって台湾人材は最も魅力的な採用ターゲットとなっています。その理由は、台湾の若者が日本語でコミュニケーション能力を備え、中国語と英語も柔軟に使いこなせることです。これは日本企業にとってアジア市場を開拓する上で大きな強みとなります。さらに、台湾の若者は適応力が高く、国際的な移動にも柔軟で、日本文化に対する受容度が高いことから、日本の職場で高く評価されています。

筆者は大学の応用日本語学科の主任として、この傾向を直接目の当たりにしています。近年、日本企業は積極的に台湾に人材を求めに来るだけでなく、大学に直接出向いて採用説明会や現場面接を行っています。多くの学生が在学中に内定を獲得し、卒業後は日本企業が手配する就業ビザを通じて、スムーズに日本で働き始めています。日本企業が台湾で採用活動を行う業種は、航空、観光・宿泊、飲食産業にとどまらず、IT業界にも拡大しています。 (関連記事: 華人の日本移住がブームに!2026年には100万人突破へ 日本各地に広がる「日本語不要」の街 関連記事をもっと読む

台灣的大學生赴日本企業實習。(作者提供)
台湾の大学生が日本企業でインターンシップを行う。(筆者提供)

IT業界:日本企業が台湾人材を無償で育成、卒業後すぐに就職

特に日本のIT業界では人材不足が深刻であり、経済産業省の推計によれば、2030年までにIT人材の不足数は79万人に達する見込みです。この巨大なギャップを埋めるため、近年では日本の複数のテック企業が台湾で無償のプログラミング研修クラスを開設しています。日本語能力の条件さえ満たせば、授業料は企業が全額負担し、生活費の補助まで提供されます。