李忠謙コラム》トランプ政権復帰2ヶ月 哲学者と政治学者が警鐘「米国はもはや信頼できない」

2025年3月、アメリカ大統領トランプ。(AP通信)

トランプ氏(Donald Trump)がホワイトハウスに復帰してからすでに2カ月が経過しました。この数十日は彼の新たな政権期間全体のわずか24分の1に過ぎませんが、アメリカの憲政と国際秩序はすでに天地がひっくり返るような変化が起きており、今なおその行方は見通せません。ドイツの95歳の大哲学者ユルゲン・ハーバーマス(Jürgen Habermas)は、『南ドイツ新聞』に寄稿し、欧州はアメリカが北大西洋条約機構(NATO)を見捨てるという新たな局面に対し、ヨーロッパは対応すべきだと訴えました。そうでなければ、没落する超大国の渦に巻き込まれてしまうと警鐘を鳴らしています。一方、『歴史の終わりと最後の人間(The End of History and the Last Man)』を旧ソ連崩壊直後の1992年に著したフランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)も再び警告を発し、「台湾が次なるウクライナとなる恐れがある」とし、トランプ氏は習近平の東アジア支配の野望を止めることはないと断言しました。

ハーバーマスの警告と理性主義への回帰

コミュニケーション的理性による思索で知られるハーバーマス氏は、カント(Immanuel Kant)やマックス・ヴェーバー(Max Weber)と並ぶ偉大な哲学者・社会学者と称されていますが、晩年における彼の政治的コメントはしばしば異論や批判を招いてきました。例えば、ロシアが2022年にウクライナへ全面侵攻した際、ハーバーマスは世論に反してショルツ(Olaf Scholz)政権を支持し、ドイツの若い世代が侵略行為に簡単に怒りを覚えて核戦争のリスクに理性的に対応できなくなることを警告しました。その結果、政治専門誌『Politico』から「汚れた12人」(Dirty Dozen)として名指しされました。

今回『南ドイツ新聞』が掲載したハーバーマス氏の『For Europeでは、彼の解放思想や権力批判の観点、また生活の経済化に対する批判や、討論と合意形成を真の自由の前提とする主張が、反対派から理想主義的と嘲笑されることも紹介されています。しかし、専制的ポピュリズムが勢いを増す今日、彼が説く「理性」はまさに時代に求められる処方箋であると、同紙は論じています。 (関連記事: 李忠謙コラム》トランプ大統領の本心を誰が見抜けるのか? 関連記事をもっと読む

ハーバーマスの視点:トランプ体制とヨーロッパの誤算

もちろん、記事のタイトルが『For Europe』であるように、ハーバーマス氏のトランプ批判と警告は台湾と直接関係がありませんが、台湾にとっても自省の鏡として捉えることができる内容です。2004年に「人文社会科学のノーベル賞」とも言われる京都賞を受賞したハーバーマス氏は、記事の中で問いかけます。なぜヨーロッパの指導者たちは、アメリカ民主主義制度の動揺を無視し、米欧の同盟関係が破綻していないと誤認したのか。なぜウクライナ戦争への無条件支援を約束しながら、自らの目標や方向性を持たないのか。